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真珠腫性中耳炎
渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

真珠腫性中耳炎の概要

真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)は、鼓膜の奥側にある中耳に、鼓膜の皮膚の一部が溜まって耳の機能を低下させる病気で、10万人に約10人の割合で発生します。

真珠腫性中耳炎の原因である鼓膜の皮膚の塊は白く見えることから「真珠腫」と呼ばれています。

真珠腫が大きくなると、中耳の耳小骨や周りの骨を破壊し、顔面神経に影響を及ぼす可能性があります。

さらに進行すると頭部にまで達し、髄膜炎のような重い合併症を引き起こすリスクもあります。

真珠腫性中耳炎は弛緩部型、緊張部型、先天性、二次性、複合型、分類不能型に分類されます。

弛緩部型は鼓膜の上側に真珠腫ができ、緊張部型は鼓膜の下側に真珠腫ができるタイプです。

先天性は胎児期から真珠腫が存在しているタイプで、発生の明確なメカニズムは解明されていません。

二次性には、鼓膜に開いた穴の縁から真珠腫が発生し、増殖するタイプです。

複合型や分類不能型は、弛緩部型と緊張部型が複合していたり、病態が高度に進行して分類が定められなかったりするタイプを指します。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎の原因

真珠腫性中耳炎の原因は不明な点が多いですが、以下の内容が関連深いとされています。

  • 耳管機能不全(じかんきのうふぜん)である
  • 鼻をすする癖がある
  • 乳突蜂巣(にゅうとつほうそう)の発育が未熟
  • 鼓膜に穴が開いている
  • 慢性中耳炎である

耳管とは中耳と鼻をつないで中耳内圧を調整する道で耳管機能不全が起こると中耳内圧の低下に伴って鼓膜が奥側へ引き込まれます。

中耳内圧の低下が続くと鼓膜の一部が凹み、窪みに鼓膜の皮膚の一部が入り込んで真珠腫が作られる可能性があります。

鼻をすする癖がある場合や乳突蜂巣の発育が未熟であることも中耳内圧の調節に影響が及び、真珠腫の形成につながります。

外傷などで鼓膜に穴が開いた場合や、慢性中耳炎で中耳炎を繰り返す場合でも真珠腫性中耳炎につながるといわれています。

真珠腫性中耳炎の前兆や初期症状について

真珠腫性中耳炎の初期症状は、以下のとおりです。

  • 耳漏(じろう)が出る
  • 耳が聞こえにくい
  • 耳鳴りがする
  • 耳が痛い
  • 耳が詰まった感じがする

耳漏は耳だれのことで、真珠腫性中耳炎の場合、膿や悪臭をともなうことがあります。

音を伝える役割を持つ耳小骨のはたらきが悪くなるため、難聴や耳鳴りが起こる場合もあります。

真珠腫がさらに進行すると、身体のバランス感覚に関わる内耳(中耳の奥側)の機能にも障害が発生し、めまいが出現したり、顔面神経に影響を与え、顔の表情がつくりにくくなる症状が出現することもあります。

先天性真珠腫性中耳炎は無症状で経過することもあり、別の診察で耳鼻咽喉科を受診した際や学校の定期検診などで発見されることが多いです。

真珠腫性中耳炎の検査・診断

真珠腫性中耳炎の診断のためには、以下の検査をおこないます。

  • 耳鏡検査
  • 純音聴力検査
  • ティンパノメトリー検査
  • 耳小骨筋反射検査
  • 耳管機能検査
  • 画像検査

耳鏡検査は円錐に似た形の器具を耳に挿入し、鼓膜の状態や周辺組織を観察する検査で、真珠腫ができていると白色の​​塊として確認できます。耳漏や鼓膜穿孔の有無なども観察が可能です。

純音聴力検査は聞こえの程度を調べる検査で、さまざまな高さや大きさの音が出る機械を使用して聴力の低下がないか調べます。

ティンパノメトリー検査は鼓膜にかけた圧を測定することで鼓膜の動きをみる検査で、真珠腫ができていると鼓膜の可動性が低下している所見が示されます。

耳小骨筋反射検査は、段階的に大きな音を加えたときに耳小骨に付いている筋肉が正常に機能するか確かめる検査で、耳管機能検査は、唾液を飲み込んだり鼻をすすったりした際に、耳管が正しく閉じるか確かめる検査です。

CT検査やMRI検査などの画像検査は、骨破壊の程度や頭部への影響の有無など、耳のみでなく広範囲にわたる観察をおこないます。

真珠腫性中耳炎の治療

真珠腫性中耳炎の主な治療法は手術で、真珠腫を除去し聴力を回復させることが目的です。

鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)により、真珠腫の切除とともに損傷を受けた組織の修復をおこないます。

鼓室形成術は、耳の周辺組織である乳突蜂巣を削開する方法と削開しない方法に大別されます。

乳突蜂巣を削開しない術式は、比較的軽い真珠腫性中耳炎に適している場合が多く、痛みが小さかったり術後の回復が早かったりする利点があります。

乳突蜂巣を削開する術式は、病変が広範囲にわたる場合におこないます。

手術は1回で終わることもありますが、再発の可能性を下げるために1年の期間を空けて2回実施するケースもあります。

真珠腫性中耳炎になりやすい人・予防の方法

真珠腫性中耳炎になりやすい人には、以下のような特徴があります。

  • 耳管の機能が不十分である
  • 鼻をすする癖がある
  • 中耳炎を繰り返している
  • 鼓膜が穿孔している

耳管は通常は閉じていますが、機能が不十分であると十分に閉じることが難しくなり、
中耳内が陰圧となって真珠腫の発生につながります。

鼻をすすることでも中耳内は陰圧化するため、同じ現象が起きます。

中耳炎を繰り返したり外傷によって鼓膜が穿孔したりする場合でも真珠腫ができやすくなります。

中耳炎が慢性化している人は継続的に耳鼻咽喉科を受診し、治療することが、真珠腫性中耳炎の予防につながります。

耳漏や耳の違和感、聞こえにくさなどの症状がある場合も、早めに受診するのがおすすめです。

鼻をすする癖がある人は鼻水をティッシュでかむなどして、やめるようにしましょう


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