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渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

声帯ポリープの概要

声帯ポリープは、声帯に発生するポリープ(小さい隆起)で、主に声帯の過剰な使用や慢性的な炎症によって形成されます。

声帯は声を出そうとするときに閉じて、吐く息によって振動して声を表出しますが、過度の使用や不適切な発声方法が続くと声帯の粘膜にストレスがかかってポリープが発生します。
声帯ポリープは片側の声帯に形成されることが多いですが、両側にできるケースもあります。

声帯ポリープでよく見られる症状は嗄声(させい)で、声がかすれたり、通常の声が出にくくなって、会話や歌唱がしにくくなります。
声が低くなったり、発声時に違和感を感じるのも、声帯ポリープで見られやすい症状です。

声帯ポリープが進行すると声が出なくなる可能性があり、特に長時間話す場面がある職業の人にとっては深刻な問題となります。
早期に発見し適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。

声に異常を感じた場合は声帯ポリープの可能性を考慮し、声帯の使用を控えるか、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

声帯ポリープ

声帯ポリープの原因

声帯ポリープの主な原因は風邪や声の出しすぎ、喫煙などです。
声を頻繁に出す職業の人や、イベントなどで大きな声を出す機会が多い人などは声帯に過剰な負担がかかります。
また、たばこの煙に含まれる有害物質は声帯の健康に悪影響を及ぼすため、日常的に喫煙している人は常に声帯に刺激を与えている状態になります。

これらの原因が声帯の炎症を引き起こし、粘膜が充血することで血腫(血でできたこぶ)ができます。
血腫ができた状態で声帯にストレスをかけ続けると、声帯のふちが突出して最終的にポリープになります。
ポリープができると声帯の動きがさまたげられ、発声に支障をきたす場面が多くなります。

声帯ポリープの前兆や初期症状について

声帯ポリープの前兆はイガイガとした喉の違和感で、声帯に何らかの異常が生じていることを示唆しています。

初期症状では声を出しにくかったり、声がかすれる症状が挙げられます。
症状は徐々に進行し、長時間話すのが難しくなったり、発声時に違和感を感じて日常生活や仕事に影響を及ぼします。

声帯ポリープの検査・診断

声帯ポリープの検査では内視鏡検査で声帯の状態を評価した後、必要に応じて生検検査も用いられます。

内視鏡検査

ファイバースコープという内視鏡を鼻から入れて、声帯の観察をおこないます。
ファイバースコープは直径3mmほどの管の先端にカメラが取り付けられているため、声帯の状態を短時間で確認でき、患者が大きな負担を感じることもありません。
声帯ポリープの有無のほかにも、声帯の腫れや色、動きなども確認します。
ポリープや粘膜にがんが疑われる組織があった場合は、採取して生検検査に利用します。

生検検査

生検検査は内視鏡検査でがんが疑われた場合、声帯ポリープの診断を確定するためにおこないます。
ファイバースコープで採取された組織は顕微鏡で詳しく調べられ、良性や悪性の判断とほかの病変の存在について確かめます。
生検検査は治療方針を決定するのにも重要で、特に悪性のがんの可能性がある場合は早急な対応が求められます。

声帯ポリープの治療

声帯ポリープの治療ではポリープの状態や症状にあわせて、声帯の安静や発声方法の改善、生活習慣の指導、薬物療法、手術などが選択されます。
声帯ポリープは再発しやすいため、再発防止を目的として発声方法の改善や生活習慣の指導もすすめられます。

大きなポリープがある場合や、薬物療法で改善が見られない場合は手術が検討されます。
一般的にファイバースコープや喉頭顕微鏡を使用した手術が行われ、ポリープの大きさや職業などによって最適な手段を選択します。

声帯の安静・発声方法の改善

声帯ポリープの治療において重要なのは声帯の安静です。
日常生活で発声をできるだけ控えることで声帯にかかる負担を軽減し、ポリープの悪化を防ぎます。
症状が落ち着いた後は、言語聴覚士によって正しい発声方法を学ぶのも効果的です。
日々の発声による声帯へのストレスが減ることで状態を良好にし、ポリープの再発を防げます。

生活習慣の指導

声帯ポリープの治療や再発防止には生活習慣の指導がおこなわれます。
喫煙は声帯に悪影響を及ぼし、声帯ポリープだけでなく喉頭がんのリスクも高めるため、禁煙が推奨されます。
十分な水分補給や部屋の加湿などで声帯の乾燥を防ぐのも大切です。

薬物療法

声帯の炎症をおさえるために、消炎鎮痛剤や吸入のステロイド薬を投与します。
声帯の安静や発声方法の改善と同時に薬物療法をおこなうことで、声帯の腫れを抑える効果があります。
痰がからむ場合は去痰薬(きょたんやく)を投与することもあります。

ファイバースコープによる手術

声帯表面を局所麻酔した後、ファイバースコープと鉗子を挿入しながらポリープを摘出する手術です。
手術は発声したときの声帯の状態や、実際の声の変化を確認しながら進められます。
手術後はできるだけ発声を控える必要はありますが、日帰りでおこなえるケースが多い手術です。

喉頭顕微鏡による手術

喉頭顕微鏡を使用し、声帯病変を拡大して確認しながらポリープを切除する手術です。喉頭顕微鏡による手術は全身麻酔下でおこなわれるため、通常2~7日程度の入院が必要です。
手術後は傷の安静のために、5日ほど完全に発声を控える必要があります。
ファイバースコープによる手術で取り切れないと予想される場合や、発声の場があまりない職業の方などに適応される手術です。

声帯ポリープになりやすい人・予防の方法

声帯ポリープになりやすい人は政治家や教師、歌手など声を出す場面が多い職業の人や、日常的に喫煙している人です。

予防のためには、日常生活から正しい発声方法や禁煙を心がけることが大切です。
たくさん発声した後は安静にしたり、こまめに水分補給をして乾燥を防ぐなど、声帯にやさしい生活を送るのも重要になります。


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