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渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

鼻茸の概要

鼻茸は鼻ポリープとも呼ばれる病変であり、鼻腔や副鼻腔の粘膜から発生する柔らかい良性の増殖性疾患です。一般的には炎症やアレルギーによって引き起こされます。長期間の炎症などの慢性的な刺激を伴うことで、粘膜やその下の組織が過剰に増殖し、鼻腔内にポリープが形成されます。これにより、鼻が詰まったり、呼吸がしにくくなったり、嗅覚障害などの症状が現れます。近年、好酸球性副鼻腔炎との関連が言われており、詳しい検査が必要になることもあります。

鼻茸の原因

鼻茸の主な原因には以下のようなものがあります。

慢性副鼻腔炎
長期間続く副鼻腔の炎症は、鼻茸の最も一般的な原因です。慢性炎症は粘膜の肥厚とポリープ形成を引き起こします。

アレルギー性鼻炎
免役の異常によるアレルギー反応により、鼻の粘膜が炎症を起こし、鼻茸の形成を促進します。

喘息
喘息と鼻茸は関連性が高く、喘息患者さんの多くは鼻茸を持っていることが多い傾向です。

好酸球性副鼻腔炎
両側の多発性鼻茸と粘調な鼻汁により、高度の鼻閉と嗅覚障害を示す、成人発症の難治性副鼻腔炎です。

環境要因(汚染物質と刺激物
環境中の汚染物質や刺激物(例えば、大気汚染、タバコの煙、化学薬品など)は、鼻腔および副鼻腔の粘膜に刺激を与え、炎症を引き起こすことがあります。これが慢性的に続くと、鼻茸の形成を促進することになります。

鼻茸の前兆や初期症状について

鼻茸の前兆や初期症状は、ほかの鼻炎や副鼻腔炎の症状と似ており、鼻茸の特別な症状はほとんどありません。代表的なものとして以下のような症状が現れることがあります。

鼻詰まり
鼻茸の最も一般的な症状で、片方または両方の鼻が詰まる感じがします。

口呼吸
鼻詰まりのために口で呼吸するようになることがあります。

鼻水
原因にもよりますが、症状として現れる際は特に透明で水っぽい鼻水が出ることが多いようです。

嗅覚の低下
鼻茸が空気の流れを妨げたり、嗅覚神経を圧迫したりするため、匂いを感じにくくなります。

頭痛や顔面痛
鼻茸が副鼻腔の排泄口を塞ぐと、副鼻腔内に鼻水が溜まって圧力がかかります。副鼻腔が圧迫されることで副交感神経を慢性的に刺激し、頭痛や顔面の痛み・違和感が生じることがあります。

いびき
鼻詰まりがひどくなると口呼吸をするようになり、その結果、いびきをかくことが多くなります。また、睡眠時無呼吸症候群のリスクも増加します。

後鼻漏による咳
鼻水が喉の方に流れ込む(後鼻漏)ことで、喉に違和感を認めることや慢性的な咳を引き起こすことがあります。

慢性的な疲労
慢性的な鼻詰まりや睡眠障害により十分な休息が取れないため、日中の疲労感が増すことがあります。これにより、集中力の低下や全身的な倦怠感が起こることがあります。
鼻茸の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、耳鼻咽喉科です。鼻茸は鼻の内部にできるポリープであり、耳鼻咽喉科で診断と治療が行われています。

鼻茸の検査・診断

鼻茸の検査と診断には、以下の方法が用いられます。

視診
耳鼻咽喉科医が鼻鏡や鼻腔内視鏡を用いて鼻腔内を直接観察します。これにより、ポリープの有無やその大きさ、位置を確認します。

画像診断
CTやMRIなどの画像診断を用いて、鼻腔や副鼻腔の詳細な構造を確認します。これにより、鼻茸の広がりやほかの合併症の有無を評価します。

アレルギー検査
アレルギーが鼻茸の原因と考えられる場合、皮膚テストや血液検査を行い、アレルゲンを特定します。

嗅覚検査
嗅覚の程度を測定するために、特定の匂いを用いた嗅覚テストを行うことがあります。

治りにくく再発しやすい好酸球性副鼻腔炎では鼻茸が多く発生します。以下が好酸球性副鼻腔炎の診断基準です。
好酸球性副鼻腔炎は国の指定難病で、医療費助成制度の対象となります。
好酸球性副鼻腔炎の診断基準:JESRECスコア 厚生労働省 難治性疾患政策研究班
以下のJESRECスコア合計:11点以上を示し、かつ鼻茸組織中好酸球数(400倍視野:視野数22)が70個以上存在した場合をDefinite(確定診断)とします。
① 病側:両側 3点
② 鼻茸あり   2点
③ CTにて篩骨洞優位の陰影あり  2点
④ 末梢血好酸球(%)
 2< ≦5  4点
 5< ≦10 8点
 10<   10点

鼻茸の治療

鼻茸の治療には、薬物療法、手術療法があります。ただし、原因となる刺激を避けられない場合や、アレルギーや感染を抑えられない場合には、鼻茸が再度増殖する傾向があります。

薬物療法
ステロイド点鼻薬
鼻茸の縮小と炎症の軽減を目的として、ステロイド含有の点鼻薬が処方されます。局所的な炎症を抑制し、鼻詰まりや鼻水を減少させます。毎日一定量を鼻腔にスプレーします。

経口ステロイド
重度の鼻茸に対しては、短期間の経口ステロイドが使用されることがあります。また、好酸球性副鼻腔炎と診断された場合も経口のステロイドが使用されます。

抗ヒスタミン薬
アレルギー症状の緩和のために、抗ヒスタミン薬(セチリジン、ロラタジンなど)が処方されることがあります。

抗生物質
感染症を併発している場合や慢性副鼻腔炎を合併している場合に抗生物質が処方されます。通常マクロライド系の抗生剤を常用の半量で用います。治療期間は2~3か月程です。

なお、指定難病である好酸球性副鼻腔炎を合併している場合は、以下の治療薬も用いられることがあります。
抗ロイコトリエン薬

炎症を増悪させる因子の一つであるロイコトリエンを抑制し、鼻詰まりや鼻水を減少させます。モンテルカストなどを経口薬として毎日服用します。

免疫抑制薬
過剰な免疫反応を抑制し、好酸球の活動を減少させます。シクロスポリンなどが重症例やほかの治療に反応しない場合に使用されます。

生物学的製剤
特定の炎症メディエーターや炎症細胞などを標的にした薬剤を使用することで、炎症を抑制します。注射や点滴で投与します。近年、さまざまな薬が開発されており、抗IL-5抗体(メポリズマブ、レズリズマブ)、抗IL-4/IL-13抗体(デュピルマブ)などを使うことがあります。

手術療法(内視鏡手術)
薬物療法で効果が見られない場合、手術が検討されます。内視鏡を用いた最小侵襲手術(内視鏡下副鼻腔手術)で、鼻腔や副鼻腔の開口部を広げ、鼻茸を取り除き、炎症性組織を除去することで通気性を改善し、排泄を促進します。薬物療法に反応しない場合や、重度の鼻詰まりがある場合が適応となります。

鼻茸になりやすい人・予防の方法

鼻茸になりやすい人には、特定のリスク要因があります。

リスク要因

慢性副鼻腔炎
長期間続く副鼻腔の炎症が鼻茸の発生リスクを高めます。

アレルギー体質
アレルギー性鼻炎や喘息を持つ人は鼻茸のリスクが高くなります。

遺伝的要因

家族に鼻茸の既往歴がある場合、リスクが増加します。

免疫系の異常
免疫機能が十分に保たれていない場合、炎症が慢性化しやすくなります。

予防方法
慢性的な鼻詰まりや副鼻腔炎の症状がある場合、早期に耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。予防法としては以下のものがあります。

アレルギー管理
アレルギーの原因(アレルゲン)を特定し、それを回避することで鼻茸の発生を予防できます。抗アレルギー薬の使用が推奨されます。

鼻腔の衛生管理
空気の汚れたところは避け、適切な湿度管理で、鼻腔内の清潔を保ち、炎症を防ぎます。

生活習慣の改善
禁煙やバランスの取れた食事、適度な運動など、健康的な生活習慣を維持することで、免疫機能を向上させ、炎症を抑えることができます。

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