

監修医師:
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会
合指症の概要
合指症とは、生まれつき隣同士の指がくっついている状態です。手の指、足の指のどちらにも認められます。
手足の先天異常の中でも高い頻度でみられ、1000人〜3000人に1人の確率で発症します。
手に発症する場合には中指と薬指(環指)がくっついているケースが多く、足の場合には人差し指(第二趾)と中指(第三趾)がくっついているケースが多く見られます。
また、合指症単独で発症するほか、「巨指症」や「多指症」「短指症」などを合併しているケースもあります。
はっきりとした原因は分かっていないものの、胎生期の指が作られる過程で何らかの異常が生じることによって発症するといわれています。
赤ちゃんの指は初期には一枚の板のような状態で、次第に分裂して一本一本の指が作られます。しかし、何らかの異常によって指がうまく分裂せず、隣同士がくっついて合指症を発症することがあるといわれています。
指同士の癒合の度合いはさまざまで、皮膚や皮膚の下の組織のみがくっついている「皮膚性合指」と、腱や靭帯までくっついている「線維性合指」、骨までくっついている「骨性合指」に分けられます。
合指症では、指がスムーズに動かせなくなるほか、見た目上の問題も生じます。また、治療せずに放置すると指の成長に悪影響が及ぶ可能性もあります。
そのため、整容面と指の機能改善を目的とし、一般的に手術が考慮されます。赤ちゃんは術後に指の安静を保つことが困難であるため、通常手術は1〜2歳になってからおこなわれます。
多くの場合、手術をおこなえばそれぞれの指が確立しスムーズに動かせるようになります。しかし、指同士が完全にくっついているケースや骨までくっついている場合には、術後に指が変形したりスムーズに動かせなくなったりすることもあります。
合指症の原因
はっきりとした原因は分かっていません。しかし、胎生期に指の発育過程で何らかの異常が起きることで発症すると考えられています。
赤ちゃんの指は胎生期4週〜7週の間に形成され、板のような組織が壊死を起こし、分離することで一本一本の指ができます。この時、何らかの異常が生じることで指がうまく分離せず、指同士がくっついて合指症を発症することがあります。
合指症の前兆や初期症状について
生まれてすぐ指同士がくっついていることが確認されます。手の場合には中指と薬指がくっついている場合が多く、足の場合には第二趾と第三趾がくっついている場合が多い傾向にあります。
指同士の癒合の度合いはさまざまで、皮膚とその下の組織のみがくっついている場合や、腱や靭帯までくっついている場合、骨までくっついている場合があります。
また、指が太く長い巨指症や、指の本数が多い多指症、いずれかの指が短い短指症を合併していることもあります。
合指症の検査・診断
X線検査や超音波検査がおこなわれます。出生後、指同士がくっついていることが確認された場合には、X線検査や超音波検査により皮膚の下の、どの組織まで癒合しているかなどを確認します。
出生後の診断のほか、出生前に妊婦健診時の超音波検査で発見されるケースもあります。
合指症の治療
指の機能と整容面の改善を目的として外科手術が考慮されます。また、術後は一定期間の患部の固定とリハビリが必要です。
外科手術
全身麻酔をかけ、くっついている指を離すための手術がおこなわれます。多くの場合、指同士を離した後は、皮膚が欠損している部分のひきつれを予防するために皮膚移植がおこなわれ、移植する皮膚は足の付け根やくるぶしから採取します。
皮膚の欠損範囲が狭い場合には、皮膚移植をおこなわず自然に皮膚が再生するのを待つケースもあります。
足の場合には、手指と同じ術式で手術をおこなうと術後に傷跡が目立つケースがあります。そのような場合には、切開する範囲を広げ、自然な仕上がりになるよう整える術式が考慮されます。
皮膚のみが癒合している場合には、術後は比較的指の動きが良好になるケースが多い傾向にあります。しかし、骨まで癒合している場合には、術後にスムーズに指が動かせない場合もあります。また、いずれの場合にも成長に伴い指が動かしにくくなることもあり、修正手術が必要となるケースもあります。
術後の固定・リハビリ
術後は患部をギプスにて固定します。ギプス固定は皮膚のみの癒合による合指症では1〜2週間、腱まで癒合している場合には2〜3週間に及ぶこともあります。
また、術後に指のひきつれが起きる可能性が高い場合や、皮膚の欠損範囲が広い場合には、6ヶ月程度の固定が必要になるケースもあります。
ギプス固定をする子どもを自宅で看病できる場合には早期に退院できるケースもありますが、自宅での管理が困難な場合には入院期間が長引くこともあります。
いずれの場合にも、ギプス固定を終えたら患部のリハビリがおこなわれます。
出典:慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS「合指症」
合指症になりやすい人・予防の方法
合指症になりやすい人は分かっていません。しかし、合指症を含む先天異常は遺伝的な要因のほか感染症や栄養不良、有害物質への曝露によって発症リスクが高まることが指摘されています。
先天異常のリスクを減らすためには、妊娠中は十分な栄養を摂取し、アルコールなどの有害物質を避けるよう注意が必要です。妊娠中は放射線や特定の薬剤、カフェインなどが赤ちゃんの成長に悪影響を及ぼすこともあるため、妊娠していることに気が付いたら早めに産婦人科を受診し、日常生活上の注意点を確認するようにしましょう。
関連する病気
- 巨指症
- 短指症
- 多指症
参考文献