

監修医師:
大坂 貴史(医師)
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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
目次 -INDEX-
味覚障害の概要
味覚障害は、味を感じる能力が低下したり、異常を感じることを指す広範な症状を示す状態です。 味覚は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つに分類されますが、これらの味のいずれか、または複数に対して感覚が鈍くなる、または過敏になることがあります。 また、味覚の変調により、食事が苦痛になることや、食事自体を避けるようになることも少なくありません。 味覚障害は一時的なものから慢性的なものまでさまざまですが、重症の場合は栄養摂取に悪影響を及ぼし、全身の健康状態に影響を与える可能性があります。 特に高齢者に多く見られ、加齢とともに味覚受容体の数が減少するため、年齢が上がるにつれてその発生率が増加します。 また、内科的な疾患、薬剤の使用、放射線治療などが原因となることが多いです。味覚障害の原因
味覚障害の原因は多岐にわたり、主に次の要因が関与しています。1. 全身的要因
全身的な疾患や状態が味覚障害を引き起こすことがあります。- 栄養不足: 亜鉛欠乏症は味覚障害の最も一般的な原因の一つです。亜鉛は味覚を司る味蕾細胞の再生に必要であり、不足することで味覚の感受性が低下します。
- 内分泌異常: 甲状腺機能低下症や糖尿病などの内分泌疾患が味覚障害を引き起こすことがあります。これらの疾患では、代謝の変化が味覚受容体に影響を与えるとされています。
- 加齢: 年齢を重ねるにつれて、味蕾の機能が低下し、味覚障害が発生しやすくなります。高齢者では、食欲不振や栄養不良につながる可能性があります。
2. 薬剤の影響
味覚に影響を及ぼす可能性のある病気や症状には、さまざまな原因が考えられます。- まず、口腔咽頭の感染症としては、歯肉炎や口腔咽頭カンジダ症(カンジダ症)、虫歯が挙げられます。 また、口腔咽頭の炎症には、シェーグレン症候群や放射線の影響(外用薬や放射性ヨウ素の使用)、萎縮性舌炎、そして咽喉逆流症が含まれます。
- さらに、正常な老化も味覚に影響を与える可能性があります。神経損傷に関しては、ベル麻痺、外傷、手術、放射線治療による損傷が該当します。
- ビタミンやミネラルの欠乏も味覚に影響を及ぼす要因であり、特にビタミンB12欠乏症や亜鉛欠乏症が問題となることがあります。 また、代謝および内分泌障害としては、末期腎疾患(ESKD)、甲状腺機能低下症、糖尿病が挙げられます。
- 神経疾患も重要な要因であり、アルツハイマー病、パーキンソン病、ギランバレー症候群、多発性硬化症が味覚に影響を与えることがあります。さらに、環境および化学物質への曝露も関与し、タバコの使用(喫煙および噛みタバコ)、化学物質(有機リン化合物、メチルアクリレート)、金属や半金属(水銀、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、鉛など)が影響を及ぼす可能性があります。
- 最後に、口腔灼熱症候群のような他の要因も、味覚に変化をもたらすことがあります。
味覚障害の前兆や初期症状について
味覚障害の前兆や初期症状は、一般的に次のような形で現れます。 多くの場合、徐々に進行することが多いため、患者が自覚するのは症状が進行した後になることが少なくありません。主な初期症状
- 味の感覚が鈍くなる: 食事中に味が薄く感じられる、または味が感じられないことが初期症状としてよく報告されます。
- 特定の味が異常に感じられる: 味、塩味、苦味、酸味のいずれか、または複数の味が強調され、異常に感じられることがあります。特に苦味を過剰に感じることが多いです。
- 味覚消失: 味を全く感じなくなる完全な味覚消失も見られることがあります。特に放射線治療後に発生することが多いです。
- 異味症: 正常な食べ物が不快な味に感じられることがあります。例えば、甘いものが苦く感じられる、あるいは金属の味がするなどの症状が報告されています。
味覚障害の検査・診断
味覚や嗅覚が失われたと感じる場合、まずそれが「味覚」の問題か、それとも「風味」に関する問題かを確認することが大切です。味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味などの基本的な味を感じる力を指しますが、風味は、匂いや食感、温度などが組み合わさった複雑な感覚です。特に嗅覚が影響すると、風味が感じにくくなるため、嗅覚障害を味覚の問題だと感じる人も多いです。味覚や嗅覚の問題を診断するための検査
患者の訴えが本当に味覚や嗅覚の問題なのかを確認するためには、さまざまな検査が行われます。例えば、チョコレートやコーヒーなどの匂いを使った嗅覚検査や、甘味や酸味などの溶液を使って味覚の感度を測る検査です。これらの検査により、嗅覚や味覚の障害の程度を客観的に評価します。味覚検査の例
- 全口味覚検査: 甘味、酸味、塩味、苦味を感じる能力を確認します。さまざまな濃度の味溶液を使い、どのくらい強く味を感じるかを測定します。
- 空間テスト: 舌の異なる部分に特定の味を感じる溶液を塗り、どの部分が正常に機能しているかを調べます。
治療や対策
検査結果に基づいて、味覚や嗅覚の問題に対して適切な治療が行われます。例えば、ビタミンやミネラル不足が原因の場合は、栄養補給が必要です。また、薬の副作用や感染症が原因であれば、それに対応した治療が行われます。 このように味覚の問題はさまざまな要因によって引き起こされるため、正確な診断を受けて適切な治療を進めることが大切です。味覚障害の治療
味覚障害の治療は難しいことが多いですが、原因となる病気を治療することで、症状が改善する場合があります。 例えば、胃食道逆流症が原因の場合、酸を減らす薬(H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬)が効果的です。しかし、病気を適切に治療しても、症状が完全に治らないことも多いです。また、原因が特定できない場合には、適切な治療が難しいことがあります。 原因不明の味覚障害や、治療後も症状が続く場合には、クロナゼパムという薬が有効なことがあります。この薬は、主に不安を和らげる薬ですが、味覚障害にも効果を示すことがあります。 クロナゼパムは脳内で特定の神経の働きを抑制し、味覚障害の症状を改善するとされています。効果が持続し、副作用も少ないため、忍容性が高い薬です。 このように味覚障害の治療には、原因に応じた薬の選択や、症状が長引く場合の対処が重要です。味覚障害になりやすい人・予防の方法
味覚障害になりやすい人
- 高齢者: 加齢に伴う味蕾の機能低下や栄養不足、薬剤使用が原因で、高齢者は味覚障害のリスクが高いです。
- 亜鉛欠乏のある人: 食事中の亜鉛摂取が不足している人や、吸収不良症候群の患者は、味覚障害のリスクが高まります。
- 放射線治療を受けた人: 頭頸部への放射線治療を受けた患者では、味蕾や唾液腺の損傷が起こり、味覚障害が発生しやすくなります。
- 多剤併用している患者: 高血圧、糖尿病、うつ病などの慢性疾患を持ち、多数の薬剤を併用している患者も、味覚障害のリスクが高まります。
予防の方法
味覚障害を予防するためには、生活習慣や食事内容に注意することが重要です。- バランスの取れた食事: 特に亜鉛を豊富に含む食事(牡蠣、牛肉、全粒穀物など)を摂取することで、味覚機能の維持が期待できます。
- 適度な水分補給 口腔内の乾燥を防ぐために、十分な水分補給を心がけることが重要です。特に高齢者や口腔乾燥症のある人は、定期的な水分摂取を行う必要があります。
- 定期的な歯科検診: 歯や歯周病など、口腔内の健康状態が味覚に影響を与えることがあるため、定期的な歯科検診が推奨されます
- 薬剤管理: 味覚障害を引き起こす可能性のある薬剤の使用については、医師と相談しながら慎重に管理することが重要です。




