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ケーラー病
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

ケーラー病の概要

ケーラー病とは小児の「骨端症(こったんしょう)」と呼ばれる病気の一種で、足の舟状骨(しゅうじょうこつ)という土踏まず付近にある骨の一部が壊死する病気です。扁平足などをきっかけに、成長過程にある足の骨に大きな負荷が集中し発症すると考えられています。

ケーラー病は、骨端症の中では比較的まれな疾患ではあるものの、5歳前後の男児に発症例が多いことが知られています。また、多くのケースで片足にのみ発症します。

症状は土踏まず付近に感じる痛みで、体重をかけて歩いたり走ったりすると痛みが強くなります。成長とともに症状が寛解することも多い病気ですが、痛みが強い時には安静にして足への負担を減らし回復を促します。

小児の足の病気には第2ケーラー病(フライバーグ病)と呼ばれる病気もあります。骨端症の一種である点は本項のケーラー病と同じですが、舟状骨ではなく中足骨(足の指のつけ根付近の骨)に起こることと、10代の女子に多く見られることなど、その特徴は異なります。

ケーラー病

ケーラー病の原因

ケーラー病は、舟状骨の骨端核(骨が成長している部分)への血液循環が阻害されて起こると考えられています。ただし、発症するメカニズムの詳細は明確ではありません。

ケーラー病では、成長過程にある小児の骨に過度な負荷がかかることで、骨が正常に発達できなくなり、やがて変形や壊死を起こす様子が観察できます。

サイズや形の合わない靴を履き続けたことや、偏平足などが発症のきっかけとなる可能性も報告されています。また遺伝的な要因を指摘する報告もあります。

ケーラー病の前兆や初期症状について

ケーラー病の初期症状は、足の土踏まず付近の痛みです。
舟状骨の変形や壊死が進行すると徐々に痛みが強くなり、足の甲側まで痛みが広がることや、幹部に腫れが見られることがあります。

体重がかかるときに特に痛みが出るため、患者の歩き方に異常が見られるようになります。
重症になると、患者が痛がって歩くのを嫌がるケースもあります。

ケーラー病の検査・診断

ケーラー病の検査・診断では、視診や触診に加え、レントゲン検査をおこないます。

患者の歩き方や立ち方を確認し、痛みの有無や程度を確認します。症状があるのが片足のみで、舟状骨(土踏まずの中央付近)を指で押したときに、痛み(圧痛)があれば、ケーラー病が強く疑われます。

ケーラー病の確定診断のためには、足部のレントゲン検査をおこないます。
舟状骨に変形や壊死が見られる場合、舟状骨が平たくつぶれている様子が確認できます。あるいは舟状骨の輪郭が通常より不明瞭で、複数に分かれているように写る場合もあります。

ケーラー病では片足にだけ症状が出やすいことから、両足の舟状骨を撮影して比較することで、発達の違いなどを明確にすることができます。

ケーラー病の治療

ケーラー病では症状が数年に及ぶような例はほとんど見られず、患部の安静を心がければ特に治療をしなくても、やがて骨はもとの状態に回復し、それにともない症状も自然と軽快していくことが知られています。
特別な処置なく治癒させても、後遺症のように長期的な影響が残ることもほとんどありません。

したがって治療においては、安静と定期的な経過観察が第一となります。
痛みの症状が続き、骨の形状に異常が確認できるうちは、患者の足に過度な負担がかからないように、激しい運動などを避けるよう指導します。

痛みが強い場合は、鎮痛や消炎を目的とした湿布薬や軟膏薬が処方されます。

偏平足が確認できる患者に対しては、足のアーチ構造を助けるインソールを使用するなど、偏平足の治療や改善を並行しておこなうケースもあります。

ケーラー病の治療中も、無理をしない範囲であれば日常的な歩行や軽い運動をすることは問題ないと考えられています。歩行が困難なほどの重症例では、専用に成形したギプス等で患部を保護することもあります。

ケーラー病になりやすい人・予防の方法

ケーラー病は5歳前後、10代になる前の男児に発症しやすいことが知られていますが、女児でも発症が見られないわけではありません。偏平足であったり、運動量が多く活発な児童は発症リスクが高い可能性があります。

歩き方など、子どもの日常的な動作をよく観察しておくことは、ケーラー病の早期発見に役立つでしょう。

ケーラー病の予防方法としては、普段使用する靴への注意や偏平足の予防などが挙げられます。
該当世代の児童に、足の形やサイズに合わない靴を履かせることは、できるかぎり避けましょう。偏平足を防ぐための運動や、装具の工夫もケーラー病の予防につながります。


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