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成長痛
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

成長痛の概要

成長痛とは3歳から小学校低学年の小児に、繰り返し出現する脚の痛みの総称のことです。夕方から夜間にかけて膝周辺の痛みを訴えることが多いのが特徴です。成長痛の原因は成長期に伴う骨や筋肉の急激な変化が影響していると考えられていますが、まだ具体的なことは解明されていません。

成長痛は、夜になると痛みが強くなることが挙げられます。痛みは両方のスネやふくらはぎ、膝周辺に集中して出現することが多い傾向です。
痛みの程度は軽いものから非常に強いものまでさまざまで、痛みの持続時間も短時間で収まる場合もあれば、数時間続くこともあります。

受診の際は、成長痛が数時間以内の一過性のものということを確認します。診察時にもお子さんが脚の痛みを訴えている場合には場合には、成長痛以外の原因を考えなければなりません。
成長痛には特別な治療はなく、痛みが出ている部位をさすったり、外用剤を塗布するなどの対処療法が主体となります。

成長痛の原因

成長痛の原因は未だ解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。
以下よりそれぞれの説について紹介します。

成長期の骨や筋肉の発達によるもの

最も一般的な説は、成長期における骨や筋肉の急激な発達により、痛みが生じているというものです。成長期の子どもの骨の成長速度は速く、それに伴って筋肉や腱も引っ張られます。

遺伝的要因や心理的要因

1950年〜1970年代にかけての研究では遺伝的要因や心理的要因も成長痛との関連があるとの報告もされています。家族で成長痛を罹患したことがあると成長痛になりやすいとのことや、ストレスや不安が痛みを悪化させることがあるといった例が挙げられています。
これらの原因を踏まえると、成長痛は複数の要因が絡み合って発生すると考えられ、一つの明確な原因を特定することは難しいでしょう。したがって、痛みの予防や緩和には総合的なアプローチが必要となります。

成長痛の前兆や初期症状について

成長痛の初期症状や前兆について以下より詳しく解説していきます。

夕方から夜間にかけて痛みが出現する

成長痛の前兆や初期症状で特徴的なのは、夕方から夜間にかけての痛みです。日中は元気に活動している子どもが、夜になると急に足や膝の痛みを感じることが多く、一方の足に限定されることもあれば、両足に感じることもあります。
痛みはさすってあげたり、抱っこしていると治まることがあり、翌朝には痛みが軽減するか完全に消える場合があります。痛みの部位はすねやふくらはぎ、膝周辺に集中することが多いです。

不定期に繰り返す痛み

また、成長痛のもう一つの特徴は痛みが不定期に現れることです。一度痛みが治まっても、数日から数週間後に再び痛みが発生することがあります。
前兆や初期症状を見逃さないためには、子どもの様子をよく観察し、痛みの訴えを聞き逃さないようにしましょう。特に夜間に痛みを訴える場合は、成長痛の可能性があります。しかし、痛みが長期間続いたり、痛み以外の症状が現れたりする場合には他の疾患の可能性がありますので、小児科や整形外科の受診を念頭に置いておきましょう。

成長痛の検査・診断

成長痛の診断は問診と身体検査、レントゲンでの画像診断、血液検査によって行われますが、一般的な診断基準は確立されていません。具体的な診断の手順を以下に紹介していきますので、ご覧ください。

問診

子どもの痛みの部位、痛みの強さ、頻度、および持続時間についての詳細を聞き取ります。痛みが夕方から夜間に集中し、日中にはほとんど感じない場合には成長痛の可能性が考えられます。また、痛みが両脚に現れるのも一つの指標となります。

身体検査

身体検査では、痛みのある部位を触診し、炎症や腫れ、熱感がないか、筋力や関節の動きに以上がないかを確認し、他の疾患との鑑別を行います。成長痛の場合、前述した異常所見は通常見られません。

画像診断や血液検査

成長痛と関節炎や骨折、感染症などの他の疾患を鑑別するために、必要に応じて血液検査やX線検査などの追加検査を行うこともあります。
また、成長痛と間違われやすい疾患として、ペルテス病やオスグッド・シュラッター病、筋肉や関節の炎症や外傷などが挙げられるため、慎重で正確な診断が求められます。

ペルテス病とは3〜8歳の男児に多い大腿骨の病気で、血流障害により大腿骨頭の壊死などが起こる疾患です。病期の初期には股関節や太もも、膝の痛みを訴えることがあります。

また、オスグッド・シュラッター病は成長期の脚に生じるスポーツ障害の一つとして代表的です。
すねの部分に腫れや熱感、痛みが生じますが予後が良好とのことでスポーツ現場などでは、成長痛として見過ごされる場合があります。

上記に挙げた疾患の他にも、成長痛と間違われるものがありますので小児科や整形外科での鑑別は大変重要と言えます。

成長痛の治療

成長痛の特別な治療法はありません。主に痛みへの対処療法や家庭でのケアを中心に行われます。以下に、成長痛の治療方法について詳しく説明していきます。

さする、マッサージをする

痛みを和らげる対処療法として、患部を優しくさすることやマッサージすることが挙げられます。さすることやマッサージをすることで、筋肉の緊張を和らげ血流が促進され、痛みが軽減されます。

外用剤の使用

痛みが強い場合には湿布などの外用剤を、痛みの出ている部位に貼り付けましょう。消炎鎮痛剤の内服や痛み止めの坐薬を使用する必要はありません。

ストレッチを行う

成長痛には1回10分の脚の筋肉のストレッチを1日に2回行うことが有効との報告もあります。一方で、成長痛に対して理学療法や運動療法が適応されたという報告はあまり多くありません。

成長痛になりやすい人・予防の方法

成長痛は成長期の骨や筋肉の急激な変化による仮説が古くから言われてきました。家族歴も成長痛との関連があるとの報告があり、両親などが成長痛を経験している場合、その子どもも成長痛を経験する可能性があるとの報告です。また、心理的要因も成長痛に関連があるとされています。

成長痛の予防方法

成長痛は原因不明の疾患のため、予防方法が確立されていません。成長痛を訴える年齢は2〜14歳で、好発年齢は3〜5歳です。痛みは一過性で、夕方から夜にかけて泣くほどの痛みを訴えていても朝には治っていることが多くあります。
痛みを訴える時には子どもの体調や運動量を観察し、無理をさせずに休息を取らせましょう。

しかし、痛みが長期に及ぶ場合には、他の疾患の可能性が考えられますので注意が必要です。
そのため、お子さんの痛みの部位を確認し痛みの持続時間などの様子を見守ることで、早期の治療に繋げることができます。

成長痛は多くの場合、時間とともに自然に消えていきますが、予防的なケアを行うことで子どもの痛みを軽減し、快適な生活を送ることができるでしょう。


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