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足底筋膜炎
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

足底筋膜炎の概要

足底筋膜炎は、足の裏にある厚い組織、足底腱膜が炎症を起こす病状です。足底腱膜は、かかとから足の指の根元にかけて張り巡らされており、歩行や走行の際にかかる衝撃を吸収し、適切な体重分散を助ける役割を果たしています。しかし、過度な使用や外力による過剰なストレスがかかると、腱膜に微小な損傷が生じ、炎症が引き起こされます。
足底筋膜炎の主な症状は、朝起きたときや長時間座った後の最初の数歩で感じるかかとの強い痛みです。痛みは活動を始めると和らぎますが、一日の終わりに再び悪化する可能性があります。
診断は症状と身体診察に基づいて行われ、必要に応じてX線やMRIで足の構造を詳しく調べることがあります。治療方法は、初期段階では安静、アイシング、抗炎症薬が使用されます。さらに、足底筋のストレッチや強化運動、適切な靴や足底装具(医療用インソール)の使用が推奨されます。
進行が激しい場合、保存的治療で改善が見られない場合には、ステロイド注射、体外衝撃波治療、または最終的には手術が検討されることもあります。再発防止のためには、日常生活での適切な足のケアと継続した対策が重要です。

足底筋膜炎の原因

足底筋膜炎の主な原因は、足底腱膜に対する過度なストレスや負荷です。足底腱膜は歩行や走行の際に衝撃を吸収し、足のアーチを支える役割を果たしていますが、一定の限界を超えると損傷が生じ、炎症に至ることがあります。
また、不適切な靴の着用や硬い表面での運動もリスクを高め、足の構造的な問題も足底筋膜炎の発症に関与します。扁平足や高アーチの足、外反母趾などの異常は、足底腱膜に異常なテンションをかけることがあります。
さらに、もともと運動不足の状態での突然の激しい運動や、年齢による足底腱膜の自然な弾力性の低下も、疾患の要因となります。筋肉や腱の柔軟性が低下すると、足底腱膜にかかるストレスが増加し、炎症が引き起こされやすくなります。
足底筋膜炎は再発しやすい疾患であるため、予防策を日常生活に組み込むことが、長期的な改善につながります。

足底筋膜炎の前兆や初期症状について

足底筋膜炎の前兆や初期症状は、朝起きたときや長時間座った後歩き始めた際に、かかとや足の裏に感じる鋭い痛みによって表れます。痛みは、足底腱膜が一晩中静止している間に短縮し、歩行するときに急激に伸ばされるために起こります。歩き続けるうちに痛みはしばしば軽減されますが、活動を続けると再び痛みが強くなる傾向があります。
足底筋膜炎の痛みは、階段を上る、走る、またはつま先立ちをするときにも強く感じられます。
さらに、足の筋肉が硬直している状態から動かすとき、踵の下部から足のアーチにかけて痛みが増すことがあります。
病状が進行するにつれて、軽度の活動でも痛みが生じるようになり、重症化すると、歩行が困難になる程の強い痛みが生じることもあります。痛みが一日中持続するようになると、日常生活に大きな影響を与えるようになります。また、一方の足をかばう歩行が長く続くと、体重配分が不均等になり、反対側の足や腰にも痛みが及ぶことがあります。
足底筋膜炎の早期発見と治療は、症状の悪化を防ぎ、より深刻な合併症を避けるために重要です。症状が表れた場合は、整形外科を受診しましょう。

足底筋膜炎の検査・診断

足底筋膜炎の検査と診断は、臨床的な症状の評価と物理的検査に基づいて行われます。
診断の初期段階で行われるのは問診と触診です。医師は患者さんの足底を触って痛みの位置を特定し、足底腱膜が緊張する姿勢や動作での痛みの反応を確認します。
足底腱膜と踵骨の接合部に圧力を加えたときに痛みが顕著になる場合、足底筋膜炎の可能性が高まります。
画像診断も診断プロセスの一環として用いられることがあります。X線検査は、踵骨の異常な骨化(骨棘)を検出するのに適していますが、骨棘が足底筋膜炎の痛みの直接的原因ではないため、診断を確定するものではありません。
超音波検査やMRIは、足底腱膜の厚みや炎症の程度をより詳細に観察するために行われ、診断を補助する情報を提供します。
診断には、関節リウマチ、痛風、坐骨神経痛などの足の疾患との鑑別が重要です。

足底筋膜炎の治療

足底筋膜炎の治療は、非侵襲的な方法で行われますが、症状が重度の場合は手術療法も考慮されます。治療の目的は痛みの軽減と足底腱膜の回復を促すことにあります。
初期段階では、患者さんは足底腱膜にかかる負荷を減少させるために、運動量の調整や一時的な安静を指示されます。走るなどの衝撃が大きい活動を避け、日常生活での足の使用を控えることが推奨されます。
痛みの管理には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が頻繁に処方されます。外用薬や経口薬の形で提供され、症状に応じて選択されます。
物理療法も重要な役割を果たし、なかでも、足底筋およびふくらはぎのストレッチングは効果が期待できます。また、適切な靴の選択や足底装具(医療用インソール)の使用も、足にかかる圧力を適切に分散させるために役立ちます。
非侵襲的治療に反応しない場合、より積極的な治療法が採用されることがあります。例えば、体外衝撃波治療(ESWT)は、足底筋膜の炎症部位に衝撃波を当てることで痛みを軽減させる方法です。
最終的には、保存的治療が効果を示さない場合や慢性的な症状が続く場合に、手術が検討されることがあります。手術では、足底筋膜の一部を切除し筋膜の緊張を緩和し、痛みの軽減が目的です。ただし、手術はリスクも伴うため、ほかの方法で改善が見られない場合に限定されます。
足底筋膜炎の治療は個々の患者さんの症状やライフスタイルに合わせてカスタマイズされ、一貫したフォローアップと患者さんの積極的な参加が回復には不可欠です。

足底筋膜炎になりやすい人・予防の方法

足底筋膜炎は、年齢を問わずさまざまな方に発症しますが、なかでも活動量の多い方、個人の生活習慣や体型、職業、運動習慣などが大きく影響する病気です。

足底筋膜炎になりやすい方は、以下の特徴を持っています。

運動選手: ランナーやジャンプを多用するスポーツ選手は、繰り返しの衝撃が足底筋膜に大きな負担をかけるため、発症しやすいです。
重労働者: 長時間立ち続ける仕事をしている方々も、足への持続的な圧力が足底筋膜炎を引き起こす可能性があります。
足の構造的問題を持つ方: 扁平足や高アーチの足など、足のアーチの異常がある方は足底筋膜に異常なストレスがかかりやすいとされています。
不適切な靴を履いている方: サポートが不足している靴や古い靴を使用していると、足底筋膜への負担が増えます。
過体重の方: 体重が重いと足にかかる圧力が増え、足底筋膜に対するストレスが大きくなります。

予防方法には、以下のような対策が推奨されています。

適切な靴の選択: 良好なサポートとクッション性を提供する靴を選ぶことは、足底筋膜炎の予防にとても重要です。
適切なトレーニングと休息のバランス: 過度なトレーニングは避け、適切な休息を取り入れることで筋膜への負担を軽減します。
ストレッチと筋力トレーニング: 足の筋肉とアキレス腱を定期的にストレッチし、足底筋膜を強化します。
体重管理: 健康的な体重を維持して足への過剰な負担を防ぎます。

この予防策の適切な実施で、足底筋膜炎のリスクを減少させます。また、初期の症状が見られた場合は、速やかに治療を開始できます。


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