

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
目次 -INDEX-
心肥大の概要
心肥大とは、心臓の筋肉が通常より厚くなったり、大きくなったりする状態を指します。これは主に、心臓に長期的な負荷がかかることで起こります。心肥大には求心性肥大と遠心性肥大の二つがあります。求心性肥大は心室壁が厚くなり、内腔が小さくなります。反対に、遠心性肥大は心室壁が薄くなり内腔が大きくなる症状が表れます。
心肥大の原因
心肥大は、心臓に長期的な負荷がかかることで発生します。この章で、それぞれの原因と症状を解説します。
高血圧
最も一般的な原因です。血圧が高くなると、心臓は血液を送り出すためにより強く働く必要があります。結果的に、心筋が肥大して発症します。
弁膜症
心臓の弁に原因があると、心臓は正常な血液の流れを維持するため、より強く働きます。結果として心肥大になります。
遺伝的要因
先天的な肥大型心筋症など遺伝性疾患が原因で発症することもあります。
激しい運動
長期的な激しい運動が原因で、心肥大が起こることもあります。
肥満
過剰な体重の増加は、心臓に負担をかけてしまうため、心肥大を引き起こす原因となります。
貧血
血液中の酸素が不足すると、心臓はより多くの血液を心臓へ送り出そうとして過剰に働きます。それが慢性的に続くことで発症することもあります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺が必要以上に活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気です。バセドウ病やグレーブス病とも言われます。原因は、健常な人には認められない甲状腺を刺激する異常物質が、血中および組織の中に存在するためと考えられています。
心筋梗塞後
梗塞を起こしていない部分の心筋が代償性に肥大することがあります。
アルコールの過剰摂取
長期的な大量飲酒は心筋に悪影響を与えます。
薬物の使用
特定の薬物やステロイドの長期使用が心肥大を引き起こすことがあります。
心肥大の前兆や初期症状
心肥大は初期段階では無症状が多く、定期的な健康診断で偶然発見されることもあります。この章では、心肥大の前兆と初期症状をそれぞれ解説します。
息切れ
運動時や階段を上る際に感じる、軽度の息切れなどが初期症状として現れます。
疲労感
日常的な活動で、普段感じないような疲れや疲労感を感じる場合、心肥大の初期症状の可能性があります。
動悸
心臓が激しく鼓動しているように感じたり、不整脈を自覚したりすることがあります。
胸部の不快感
胸が締め付けられるような感覚や、軽度の胸痛を感じる場合などです。
めまい
軽度のめまいや立ちくらみを経験することがあります。
失神
心肥大の初期症状として重度の場合、一時的に意識を失います。
乾いた咳
初期症状や前兆として、夜間に渇いた咳の症状を起こします。
運動耐容能の低下
一時期よりも、運動や身体活動が困難になった場合などです。このような場合も、心肥大の前兆と考えていいでしょう。
睡眠時の呼吸困難
睡眠時に横になると、息苦しさを感じる初期症状です。枕を高くして寝るなどの対策を行います。
以上の症状は、心肥大以外の疾患でも起こるため、必ず心肥大であると断定はできません。そのため、これらの症状が持続したり、徐々に悪化する場合は、循環器内科を受診しましょう。
心肥大の検査・診断
心肥大の主な検査方法には、以下のような方法があります。1つずつ解説します。
心エコー検査
超音波を用いて心臓の構造や機能を視覚化する非侵襲的な検査です。心臓の壁の厚さや心室の大きさを測定し、心肥大の有無や程度を評価します。また、心臓の動きや血流の状態も観察します。
心電図検査
体表面に電極を貼り付け、心臓の電気的活動を記録します。心肥大があると、特徴的な波形の変化が現れるため、左室肥大や右室肥大の診断に役立ちます。
胸部X線検査
心臓の大きさや形状の変化を確認します。心肥大があると、心臓の陰影が拡大して見えます。
MRI検査
強力な磁場を用いて、心臓の詳細な画像を得ることができます。心筋の厚さや心室の容積を正確に測定でき、心肥大の評価に効果的です。また、心筋の性状や線維化の程度も確認できます。
CT検査
X線を用いて心臓の断層画像を撮影します。心臓の構造を詳細に観察でき、冠動脈の状態も同時に評価できます。
血液検査
心臓に負担がかかると上昇するBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)などのバイオマーカーを測定し、心肥大の間接的な指標として判断します。
運動負荷検査
トレッドミルやエルゴメーターを用いて運動中の心臓の反応を確認する方法です。心肥大に伴う心機能低下を検出するのに役立ちます。
以上の検査を組み合わせて、心肥大の有無や程度、原因、および随伴する心機能の異常を総合的に検査して判断します。
心肥大の診断方法
心肥大の診断は画像診断と臨床症状を組み合わせて行われます。最も一般的に用いられる診断方法は以下の4つです。
- 心電図
- 心エコー検査
- 胸部レントゲン
- MRI検査
治療は原因に応じて行われ、薬物療法、生活習慣の改善、場合によって手術が必要になることもあります。
心肥大の判断基準
心肥大の判断をする基準は以下です。
・今まで疲れなかった動作でも疲れやすくなった
・不整脈などの症状を感じている ②検査初見 問診などを行った後に、医師が判断して検査を行います。主に行うのは、心エコー検査、心電図、胸部レントゲン、MRI検査です。気になることはしっかりと伝えるようにしましょう。 ③除外されるもの 例えば激しい運動をしたあとに鼓動が速くなるなどは、正常なので除外されます。ただし、脈のリズムが一定でなかったり、普段より息切れしやすい場合は、除外されないため、心肥大の可能性があるでしょう。初期症状が全て心肥大につながるわけではないので、気になる人は一度循環器内科に行くことをおすすめします。
心肥大の治療
心肥大の治療は、原因疾患や症状の程度で対応が変わります。主な治療方法は以下になります。
原因疾患の治療
高血圧の管理のためにACE阻害薬、ARB、βブロッカーなどの降圧薬を使用します。他にも必要に応じて弁置換術や弁形成術も行います。
薬物療法
以下の薬剤が用いられます。
生活習慣の改善
生活習慣の改善も治療の重要な一部です。以下の方法が推奨されます。
手術療法
症状が重度の場合は手術療法が考慮されます。
カテーテル治療
肥大型心筋症の一部の症例では、以下のカテーテル治療が行われます。 経皮的中隔心筋焼灼術 肥大型心筋症の一部の症例で実施します。デバイス療法
デバイスを用いた治療も効果的な場合があります。
心肥大になりやすい人・予防の方法
心肥大になりやすい人には、日常の生活なども含めた特徴があります。この章では心肥大になりやすい人の特徴と、予防方法を解説します。
心肥大になりやすい人
高血圧の人長期間血圧が高い状態が続くと、心臓に過度の負担がかかるため、心肥大のリスクが高まります。
肥満の人
過剰な体重は心臓に負担をかけます。特に内臓脂肪型肥満の人はリスクが高くなるため、食事など生活習慣の管理をして心肥大のリスクを減らすことがおすすめです。
糖尿病患者
血糖値の管理が不十分な場合、心血管系に悪影響を与え、心肥大のリスクが上がります。
運動選手(特に持久系スポーツ)
長期的な激しいトレーニングにより、生理的な心肥大(アスリートハート)が起こることがあります。
遺伝的素因のある人
肥大型心筋症などの遺伝性疾患の家族歴がある人は、心肥大のリスクがあがります。
弁膜症患者
心臓弁の異常により、心臓に過度の負担がかかり、心肥大を引き起こす可能性があります。
高齢者
加齢により心臓の機能が低下し、心肥大のリスクが高まります。
慢性腎臓病患者
腎機能低下は体液量の増加や血圧上昇を引き起こし、心肥大のリスクを高めます。
甲状腺機能亢進症の患者
代謝亢進により心臓の仕事量が増加し、心肥大のリスクが高まります。
他にも、過度な飲酒や喫煙者も危険です。心臓への負担が増える行為は、心肥大の可能性を上げるため予防をおすすめします。
心肥大の予防方法
血圧管理定期的な血圧測定を行い、高血圧の早期発見が大切です。
健康的な食生活
減塩を意識したバランスの良い食事を心がけることで、心肥大のリスクを下げられます。野菜、果物、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚を積極的に摂取することがおすすめです。
適度な運動
ウォーキング、ジョギング、水泳などの心臓に負担の少ない運動を定期的に行うことで、心肥大の予防になります。
体重管理
適正体重を維持し、BMIを18.5〜24.9の範囲に保つことが推奨されています。状況に応じて、カロリー制限と運動を組み合わせた減量が必要です。
禁煙と禁酒
お酒とタバコの過剰な摂取も心肥大にリスクを増やすため、禁煙外来などを利用して摂取量を減らすことをおすすめします。
これらの予防法を状況に合わせて行うことで、心肥大のリスクを減らせます。無理のない範囲で、少しずつ行なってみてください。




