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勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

急性硬膜下血腫の概要

急性硬膜下血腫とは、頭蓋骨内の硬膜と脳表(くも膜)の間に出血が起こり、急速に血液が溜まることで脳に圧力が加わる病気です。
転倒や交通事故で頭部に外傷を負った場合に頭蓋骨と脳の間で出血していることがあります。脳の損傷を免れても、膜同士のスペースである脳と頭蓋骨の間に大きな出血をすることがあります。
脳は、軟膜で保護され軟膜の外側に髄膜の3つの層の中の一つである硬膜があります。くも膜の間の硬膜下腔に血液が溜まり血腫ができる病気が硬膜下血腫です。
脳表には動脈や架橋静脈が走行しており頭部に強い衝撃を受けたことで出血する場合や、単独で皮質動脈が破裂して起こる場合などがあります。なお、急性硬膜下血腫は脳挫傷(脳自体が傷つく)が伴うことも少なくありません。
頭蓋骨に骨折がなく頭皮に損傷がない場合も、脳が揺さぶられたことで頭蓋骨内に出血が起こっていることもあります。
頭部外傷で起こる血種には、直撃損傷と反衛損傷がありますが反衛損傷とは、外傷を受けた側とは反対側に血種ができることをいいます。血腫による脳の圧迫が激しい場合は、血腫を取り除く緊急手術が必要になりますが、手術後に重い後遺症が残る可能性が大半です。
急性硬膜下血腫は発症直後に意識障害を誘発することが少なくありません。意識障害などの症状は血腫ができたことで脳を圧迫して起こる場合があります。症状があるにも関わらず放置すると死亡するリスクが高まります。
急性硬膜下血腫の症状は、意識障害・激しい頭痛・嘔吐など多数ありますが、症状が軽度だから硬膜下血腫を発症していないとはいえません。頭部外傷は放置せず検査と治療を行うことが重要です。
急性硬膜下血腫は外的損傷が要因のため、罹患する年齢を特定はできませんが加齢による転倒などで高齢者が発症するリスクは高くなります。

急性硬膜下血腫の原因

急性硬膜下血腫は、外傷性頭部損傷によるものが一般的で、外傷によって生じた出血が急速に硬膜下に溜まって硬膜下血腫ができます。また、脳がダメージを受けていなくても脳の表面だけが傷つき出血すると急性硬膜下血腫になることもあります。

頭部外傷以外で急性硬膜下血腫になる原因は皮質動脈の破裂や血液凝固異常です。出血性疾患の症状がある人は血液が固まりにくいので血管が破れやすくなっています。

急性硬膜下血腫の症状が軽度で手術せず退院したのち、血液が少量ずつ溜まっていることに気付かず数週間以上経過して慢性硬膜下血腫に移行する場合もあります。

急性硬膜下血腫の前兆や初期症状について

急性硬膜下血腫は突然起こる病気なので前兆はありません。

初期症状では意識障害が起こることもありますが、意識障害の度合いは軽度の場合や昏睡状態など人によって違います。

脳に損傷がないと受傷直後は意識障害がなく会話もできる状態の場合ありますが、時間が経ってから意識障害がでることもあるので注意が必要です。

急性硬膜下血腫の主な症状は以下のものがあります。

  • 意識障害
  • 激しい頭痛
  • 嘔吐
  • けいれん発作
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 片麻痺
  • 言語障害
  • 感覚障害
  • 運動障害

頭部外傷があり、上記の症状が頻繁にみられる場合は急性硬膜下血腫の可能性が高いです。

急性硬膜下血腫は、早期発見・早期治療で重篤な後遺症や死亡のリスクを軽減できます。

症状があった場合には、脳神経外科を受診しましょう。

急性硬膜下血腫の検査・診断

急性硬膜下血腫の検査ではCTスキャンによる診断が一般的です。CTスキャンは脳の断面を画像にして視覚化できるため血液が貯まっている層が硬膜下と判断できれば、急性硬膜下血腫と診断できます。

血腫がある場合、CT画像では硬膜下腔に三日月形の白い影として写しだされます。血腫が短時間で形成されるのが急性硬膜下血腫の特徴です。また、必要に応じてMRI検査を追加しますが、CTスキャンは短時間で検査結果の確認が可能なため優先して実施されます。画像診断に加え神経学的評価や血液検査なども行います。

神経学的評価とは、意識レベル・運動機能・神経系などの確認です。血液検査では、血液中の凝固因子や炎症などを調べます。血腫が脳を強く圧迫していることがみられる場合は、緊急に血腫を除去する必要があります。

急性硬膜下血腫は、早期に診断を行い治療を開始して合併症のリスクを減らすことが重要です。

急性硬膜下血腫の治療

急性硬膜下血腫は、血腫の大きさや意識状態で治療方法が異なります。

出血量が少なく意識レベルも高い場合は、軽症でも入院して止血剤や血圧コントロールを行いながら経過観察を行います。硬膜下血腫は受傷から時間が経過したのちに出血量が増加したり意識レベルが低下したりと状態が変わることがあるからです。

急性硬膜下血腫は血腫が急速に拡大して脳を圧迫する場合が少なくないため、出血量が多い・意識レベルが低いなどの場合は緊急手術で血腫を除去します。

開頭血腫除去術

開頭血腫除去術は、全身麻酔で頭蓋骨を大きく外して血腫を除去する手術です。手術では、出血箇所の止血や脳の圧迫を取り除くことができ、脳のむくみも軽減できます。患者さんの容態により頭蓋骨の穴を小さく開ける小開頭手術もあります。ただし、頭部外傷の緊急手術では血腫の箇所を正確に把握する必要があるため、可能な限り頭蓋骨を開く開頭手術が必要です。そのため、急性硬膜下血腫の手術は開頭血腫除去術を行う医療機関がほとんどです。

外減圧術

頭蓋骨は、脳を衝撃から守るために硬く厚い骨で形成されています。そのため、頭蓋内に出血や脳腫瘍ができると脳が圧迫されます。開頭血種除去手術を行っても脳の圧力やむくみが治まらない場合に、圧力や腫れが引くまで、皮膚だけを縫合し頭蓋骨は外したままにするのが外減圧術です。外す期間は2週間から1ヵ月程かかることもありますが、外した頭蓋骨は冷凍庫に保管され脳の腫れが治まったのち形成手術でもとに戻されます。

ICPセンサー留置術

頭部外傷を負って意識状態が悪い場合は、脳の血流や圧力を一定に保つ必要があります。そのため、脳の圧力を直接測定できるICPセンサー装置を、開頭手術を行った際に一時的に脳に埋め込む手術がICPセンサー留置術です。

急性硬膜下血腫になりやすい人・予防の方法

急性硬膜下血腫は頭部外傷や怪我によるものが少なくありません。交通事故や転倒・転落などが原因で頭部外傷が引き起こされる確率が高くなります。

そのため、急性硬膜下血腫は予防で罹患するリスクは軽減されます。

急性硬膜下血腫になりやすい人

急性硬膜下血腫は予期せぬ外傷で起こるため幅広い年齢層で発症する病気です。子どもは遊びやスポーツで頭部に外傷を追うことがあります。高齢者は反射神経が鈍くなり転倒や転落のリスクが高くなりますが、頭部に外傷を負い急性硬膜下血腫になっていても気付かない場合もあります。若い年齢層では交通事故による頭部外傷が死亡原因になり、救命されても重度の後遺症が残ることも少なくありません。

急性硬膜下血腫の予防方法

急性硬膜下血腫の予防方法は頭部の損傷を予防すれば発症するリスクは軽減されます。自転車やバイクを運転する際は、ヘルメットを着用すれば事故に遭っても頭部の損傷を軽減できます。衝撃や接触が多数のスポーツは、プロテクターやヘルメットを積極的に着用しましょう。なお、高齢者や小さな子どもがいる家庭では、転倒予防策を講じたり生活環境の整備をしたりすれば頭部外傷のリスク要因を軽減できます。急性硬膜下血腫は高血圧や出血性疾患が要因となる場合もあるので、薬物療法や健康チェックでリスク管理を行いましょう。


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