目次 -INDEX-

肋間神経痛
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

プロフィールをもっと見る
信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

肋間神経痛の概要

肋間神経痛は、肋骨の周辺に張り巡らされた神経(肋間神経)が何らかの原因によって刺激されることで生じる痛みのことです。胸部やわき腹、背中に鋭く刺すような痛みが走るため、初めの頃は、心臓や肺の病気を疑う人もいます。しかし肋間神経痛は、心臓や肺などに異常が起きているわけではなく、肋骨に沿うように走る神経が圧迫されたり傷ついたりして生じるものです。痛みは片側の胸に現れ、深呼吸や咳、体勢の変化で痛みが増す場合もあります。一時的なものから慢性的なものまで様々で、痛みの程度も人によって異なり、発症すると日常生活に大きな影響を及ぼすことがあるため、適切な診断と治療が求められる病気です。

肋間神経痛の原因

肋間神経痛は、様々な病気がきっかけで発症するといわれていますが、原因は大きく2つに分けられます。

続発性肋間神経痛

ひとつは続発性肋間神経痛と呼ばれるもので、何らかの病気や外傷などによって生じるものです。例えば、肺炎や胸膜炎、心臓の問題など内臓疾患が原因で胸部に痛みが生じ、それを肋間神経痛として感じることがあります。次に、感染症が原因となる場合もあります。特に、帯状疱疹ウイルスが肋間神経に感染すると、激しい痛みを伴います。その際、皮膚に発疹が現れる前から痛みが出始め、発疹が治まった後も痛みが長時間続くことがあり、適切な抗ウイルス薬や鎮痛剤による治療が必要となります。他にも、椎間板ヘルニアや脊椎変形など骨や筋肉の病気、手術の後遺症、がんの転移も、肋間神経痛の原因に挙げられます。

原発性肋間神経痛

もうひとつは、検査を行っても原因が判明しなかった場合の原発性肋間神経痛です。これは肋間神経が異常興奮して起こるものと考えられていますが、原因は不明で非常に稀なケースです。ストレスや、長時間無理な姿勢を続けることにより、骨などが肋間神経を圧迫して発症するのではないかという見方があります。

肋間神経痛の前兆や初期症状について

肋間神経痛の前兆や初期症状は、患者さんによって様々で、針で刺すような激痛であったりピリピリする痛みであったりと、痛みのレベルも異なります。痛みは広範囲ではなく、主に胸やわき腹、次に背中やわきの下と、限られた範囲で痛むことがほとんど。また、左右どちらか、片側のみに痛みが生じるとされています。一般的に、初期には軽い違和感や鈍い痛みが現れ、次第に鋭い痛みや焼けるような感覚に変わっていくことが多いとされ、特に呼吸や体の動き、くしゃみや咳をしたときに悪化する傾向があります。
原発性の場合は肋間神経そのものの痛みより、神経の周りを囲む筋肉に痛みが生じます。不自然な姿勢や同じ姿勢を長時間とっていたり、ストレスにさらされたり、肩や背部の筋肉が凝ったりすると痛みが起きやすくなります。症状は数秒から数十秒と、わずかな時間だけ続くのが通常です。
一方、続発性の場合は、上半身を動かしたり前かがみになったりした時、非常に強い痛みを感じます。また原発性とは異なり、痛みは原因となっている病気や異常が取り除かれるまで、継続的に、極めて長く続くことが特徴です。
肋骨周囲の過敏感やしびれ感などの症状は、肋間神経が刺激されて起こるため、早期の診断と治療が求められます。特に、痛みが強くなる場合や呼吸困難、発熱を伴う場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
これらの症状がみられた場合、 整形外科または内科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

肋間神経痛の検査・診断

肋間神経痛の診断で重要なのは、痛みの原因を見逃さないことです。また、肋間神経痛と同じような症状の病気と見分けることです。診断にはまず、問診で痛みの場所、性質、持続時間、悪化要因などを詳しく尋ね、肋間神経痛の可能性を診断します。次に、痛みの原因を特定するために、以下の検査が行われます。
まず、X線検査やCTスキャンなどの画像診断で、骨折や脊椎の異常、肺炎や肺がんなど内臓疾患の有無を確認します。一方、画像診断で明らかな異常がない場合には、狭心症や心筋梗塞など、心臓の病気や肺の病気がないか見分ける必要があります。その際は、心電図検査、心臓超音波検査、内視鏡検査、血液検査など行い、痛みの原因を特定させます。
原因が分からない原発性肋間神経痛の場合は、原因となる神経に直接治療を施すことが検討されます。

肋間神経痛の治療

肋間神経痛の治療は、原因と症状に応じて異なりますが、まずは痛みを緩和させるために薬物療法が行われます。一般的に用いられるのが鎮静薬で、特にアセトアミノフェンやNSAIDsがよく使用されます。
痛みが強い場合や薬物療法に効果がない場合は、神経ブロック注射やトリガーポイント注射が行われることもあります。これは、傷ついたり圧迫されたりして過敏になっている神経を、麻酔薬によって麻痺させることで痛みを和らげる治療法です。肋間神経の近くに針を刺し、そこから麻酔薬を注入し、痛みの緩和を促します。
また、物理療法も肋間神経痛の治療に役立ちます。筋力強化や柔軟性向上を目的とした運動療法では、姿勢の改善や筋肉のバランスを整えることで、神経への圧迫を軽減できます。
一方で、手術が必要となるケースもあります。椎間板ヘルニアや脊椎の変形が原因で神経が圧迫されている場合には、手術で神経の圧迫などを取り除く治療を行います。

肋間神経痛になりやすい人・予防の方法

肋間神経痛になりやすい人には、いくつかの共通点があります。
まず、姿勢が悪い人や長時間同じ姿勢を保つことが多い人は、肋間神経痛のリスクが高くなります。特にデスクワークが多い人や長時間運転をする人は注意が必要です。また、筋力が低下している人や運動不足の人もリスクが高いとされています。
予防のためには、日常生活において正しい姿勢を保ち、長時間同じ姿勢を続けないようにしましょう。
肋間神経痛では特に背筋や腹筋の筋力を鍛えることが推奨されているため、定期的にストレッチやウォーキング、水泳、ヨガなどの軽い運動を行うことも大切です。
また、体を温めると血流が良くなり、硬くなった筋肉がほぐれるため、少し熱めのお湯につかって身体を温めることを心がけましょう。
筋肉の緊張は、ストレスからも起こります。気分転換を図るための適度な休息と、十分な睡眠を確保して、日ごろからストレス管理を行うことも大切です。
さらに、過体重や肥満は脊椎に負担をかけ神経の圧迫を引き起こす可能性があるため、バランスの取れた食事と定期的な運動を心がけ、健康的な体重を維持することが推奨されます。
既往歴や家族歴に神経疾患がある場合は、定期的な健康診断を受けましょう。初期症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが大切です。


関連する病気

この記事の監修医師