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多胎妊娠
佐伯 信一朗

監修医師
佐伯 信一朗(医師)

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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

多胎妊娠の概要

多胎妊娠は、過去20年間で増加傾向にあり、現在では全出生児の2-3%を占めています。これは主に生殖補助医療技術の普及と高齢出産の増加によるものです。多胎妊娠では単胎妊娠と比較して、母体合併症や周産期死亡のリスクが有意に高くなります。特に双胎の約50%が早産となり、そのうち10%が妊娠32週未満での出産となることが報告されています。

多胎妊娠の原因

多胎妊娠の増加は、主に生殖補助医療技術の発展と普及によるものです。特に体外受精による妊娠では約4分の1が多胎妊娠となります。また、卵巣刺激や排卵誘発剤の使用も多胎妊娠の要因となっています。近年では、各国のガイドラインで移植胚数の制限が推奨されていますが、それでもなお混合性の多胎妊娠(異なる膜性を持つ多胎)は増加傾向にあります。これは性腺刺激ホルモンの使用や胚分割が原因と考えられています。

多胎妊娠の前兆や初期症状について

多胎妊娠の診断は主に超音波検査によって行われ、特に妊娠10週頃が最適な時期とされています。この時期に、胎囊数、胎児数、羊膜数を系統的に確認することで膜性診断を行います。また、1絨毛膜双胎の場合、双胎間輸血症候群の発症を示唆する症状として、一方の児での羊水過多、もう一方での羊水過少などの所見が認められることがあります。

多胎妊娠の検査・診断

診断の基本は超音波検査による胎児の様子の確認です。
検査は以下の3つの順序で慎重に行います。
1.まず最初に赤ちゃんを包む外側の袋(胎囊)の数を確認します。
2.次に赤ちゃんの数を数えます。
3.最後に赤ちゃんを直接包んでいる内側の膜の数を確認します。
この検査は特に妊娠10週頃が最も適していると言われています。

妊娠14週を過ぎると、膜の数を直接確認することが難しくなってくるため、以下の点を総合的に判断して診断を行います。

  • 胎盤の数
  • 赤ちゃんの性別
  • 赤ちゃんの間にある隔たりの形や厚さ

特に胎盤を共有する双子(一つの胎盤に二人の赤ちゃんがいる場合)では、以下のような問題が起こる可能性があるため、より頻繁な超音波検査による観察が必要です。

  • 双子間での血液のやり取りの問題
  • 一方の赤ちゃんの成長が遅れる問題
  • 双子での貧血と血液の濃さの違いの問題

多胎妊娠の治療

治療方針は、胎盤の共有の仕方や妊娠週数、合併症の有無によって決めていきます。特に重要なのが、胎盤を共有する双子での血液のやり取りの問題(双胎間輸血症候群)への治療です。
この場合、妊娠16週から26週未満では、胎盤の中の血管をレーザーで処置する手術が最も効果的な治療となります。
この治療の成績は年々良くなってきており、現在では以下のような結果が期待できます。

  • 二人とも元気に生まれる確率:70%程度
  • 少なくとも一人が元気に生まれる確率:90%以上

また、出産時期の決定も重要となるため担当する医師と入念な話し合いが必要となります。
特に三つ子以上の場合は、さらに早く生まれる可能性が高くなり、約3分の1が妊娠32週未満での出産となります。そのため、妊娠初期からの慎重な管理が必要です。場合によっては、赤ちゃんの数を減らす治療を検討することもありますが、この場合は流産のリスクについても十分に考慮する必要があります。どのような治療を選ぶかは、お母さんの状態、妊娠週数、問題の程度などを総合的に判断して、担当医と相談しながら決めていくことが大切です。

多胎妊娠になりやすい人・予防の方法

多胎妊娠になりやすい人

生殖補助医療を受けている方、高齢妊娠の方、排卵誘発剤を使用している方で多胎妊娠のリスクが高まります。特に1絨毛膜双胎では2絨毛膜双胎と比較して周産期死亡率が3〜4倍、神経学的合併症のリスクが3〜9倍となることが報告されています。

予防の方法

予防としては、生殖補助医療における適切な胚移植数の決定が重要です。
また、定期的な妊婦健診を受け、早期に異常を発見することで適切な管理を行うことができます。特に妊娠初期からの膜性診断が重要で、これにより適切な管理方針を立てることができます。


関連する病気

参考文献

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