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眼精疲労
柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

眼精疲労の概要

眼精疲労は、長時間のデジタルデバイスの使用や読書、近距離作業などによって目が過度に疲れる状態を指します。症状は、目の痛みや乾燥、ぼやけた視界、頭痛、首や肩のこりなど多岐にわたります。眼精疲労は現代社会で広く見られ、その原因は視覚の過労に加え、照明や姿勢、さらには精神的なストレスも影響を及ぼします。

眼精疲労が引き起こす視覚的な問題としては、焦点を合わせる能力の低下や、視力の一時的な変動があります。これらの症状が続くと、集中力の低下や作業効率の悪化を招き、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

眼精疲労の予防と軽減には、いくつかの方法があります。まず、デジタルデバイスの使用時には適切な休憩を取ることが重要です。例えば、20分ごとに20秒間、遠くを見つめる20-20-20ルールが推奨されます。また、作業環境の改善も有効です。さらに、作業中の姿勢にも注意し、モニターの位置や高さを適切に設定することが望ましいとされています。

眼精疲労の治療としては、目薬の使用や温湿布を用いた目の休息が推奨されています。目薬は目の乾燥を防ぎ、快適な視界を保つのに役立ちます。また、温湿布は目の周囲の血行を良くし、緊張を緩和します。これらの対処法に加え、定期的な眼科検診を受けることで、眼精疲労の原因となる視力の問題やほかの眼疾患を早期に発見し、適切な治療を受けられます。

眼精疲労の原因

眼精疲労は視覚環境と個々の生活習慣が密接に関連しており、その要因は多岐にわたります。特に、長時間にわたる近距離作業は、目のピント調節を担う筋肉や眼球を動かす筋肉に過度の負担をかけ、目の疲れの主要な原因となります。これに加えて、不適切な視覚補助具の使用、適切な照明が確保されていない作業環境、反射光が多い場所での作業も、眼精疲労を助長します。

さらに、個人の健康状態も眼精疲労に大きく影響します。ストレスや睡眠不足が続くと、全身の血行が悪くなり、それが目の周囲の筋肉を硬くする原因となります。この状態が長く続くと、眼精疲労が悪化しやすくなります。また、肩こりや首のこりも、目への血流を低下させ、眼精疲労のリスクを高めます。

さらに、ドライアイや眼瞼炎といった眼の疾患も、眼精疲労を引き起こす重要な要因です。これらの状態は、涙液の分泌不足やまぶたの炎症によって、目の不快感や疲れが生じやすくなります。なかでも、ドライアイは、現代の方に多い眼の問題であり、適切な治療と管理が必要です。

これらの状況を踏まえ、眼精疲労を予防または緩和するためには、定期的な休憩を取り、作業環境を改善することが重要です。

眼精疲労の前兆や初期症状について

眼精疲労の初期症状として、目のかすみや一時的な視力の低下がよく見られます。これは、長時間にわたるデジタルデバイスの使用や読書など、目を酷使する活動によりピントを調整する筋肉が過度に疲労するためです。目の乾燥感や異物感、そして充血や涙目、まぶしさを感じることも、眼精疲労の典型的な症状です。さらに、症状が進行すると目の周囲や額、こめかみに頭痛が生じることがあります。

これらの視覚的な不快感に加えて、眼精疲労は肩こりや首の痛み、倦怠感や集中力の低下など全身的な不調を引き起こすことが特徴です。これらの症状は日常生活に大きな影響を及ぼし、放置すると視力の永続的な低下につながる可能性があるため、これらの初期症状を感じた場合には、速やかに眼科の受診をおすすめします。

また、激しい頭痛や体のしびれが伴う場合は、単なる眼精疲労以上の問題が隠れている可能性があるため、脳神経内科や脳神経外科の診察も必要になります。目の健康を保ちながら、早期に適切な治療を受けることが、症状を管理し、日常生活への影響を抑えるための鍵となります。

眼精疲労の検査・診断

眼精疲労の診断には、複数の検査が用いられます。初めに行われる視力検査は、基本的な視力測定だけではなく、遠視、近視、乱視などの屈折異常を特定するために実施されます。

次に、眼圧測定が行われ、眼球内部の圧力を測定します。この測定は、高眼圧がある場合、緑内障のリスクを示唆するため、早期発見と早期治療の開始が可能となります。また、眼底検査を通じて、眼球の内部構造や視神経、網膜の健康状態が詳細に観察されます。この検査は、網膜剥離や糖尿病性網膜症など、目の深刻な疾患の早期発見にとても有効です。

さらに、シルマーテストによる涙液の分泌量の測定が行われます。この測定は、ドライアイの有無を診断するのに役立ち、ドライアイは眼精疲労の原因の一つとなりうるため、この情報は治療計画において重要です。また、眼球運動検査を行い、眼球の動きを評価します。斜視や調節異常などが発見されると、これらが視覚的ストレスの原因となり、結果として眼精疲労を悪化させる可能性があります。

これらの検査結果を総合的に評価した後、眼科医は眼精疲労の原因を特定し、患者さんに適切な治療法や対処法を提案します。治療は、症状の軽減と将来の視力保護を目的として、患者さんのニーズに応じてカスタマイズされます。

眼精疲労の治療

眼精疲労の治療には、原因に応じたアプローチが必要です。

点眼治療と温熱療法
眼精疲労がドライアイから生じている場合、ドライアイの点眼薬が処方されます。これには、ピント調節を助ける筋肉をリラックスさせたり、眼の表面を潤す効果が期待できます。また、眼球を適度に温めることで血流をスムーズにし、目の疲れを和らげられるため、温湿布や蒸しタオルを目に当てるのがおすすめです。

適切な視力矯正
眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っていないことも、眼精疲労の原因となります。定期的に眼科で視力検査を受け、適切な視力矯正を行うことが重要です。年齢とともに変化する視力に対応するため、定期的なチェックが必要です。

薬物療法
点眼薬だけでなく、必要に応じて内服薬も使用します。ドライアイが原因の場合には、内服薬は目の疲れを軽減するための内服薬が処方されます。

これらの治療法を組み合わせ、眼精疲労の症状を軽減させます。定期的な眼科診察と適切な治療のもと、日常生活のなかで目を守ることが重要です。

眼精疲労になりやすい人・予防の方法

眼精疲労は、デジタルデバイスの普及により、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用が増え、眼精疲労の発症が増加しています。なかでも、糖尿病や高血圧などの全身疾患を抱えている方や、精神的なストレスを感じやすい方は、眼精疲労になりやすい傾向があります。

眼精疲労を予防するには、目が疲れにくい環境を整えることが重要です。適切な照明環境を保ち、強い光や反射を避けることで目への負担を軽減できます。また、パソコン作業を行う際は、モニターの位置を目線と水平に合わせ、目から適度な距離を保つことが推奨されます。画面の明るさやコントラストを調整し、目に負担がかからない設定にすることが望ましいとされています。

さらに、定期的な休憩を取り入れることが眼精疲労の予防には欠かせません。1時間ごとに10分程度の休憩を取り、遠くの景色を眺めることで目の緊張を和らげられます。また、目の筋肉をほぐすために簡単な目の運動やマッサージを行うとよいでしょう。特に、パソコンやスマートフォンの長時間使用後には、意識的に目を休めることが重要です。

適切な栄養補給も眼精疲労の予防に寄与します。ビタミンAやビタミンC、亜鉛など、目の健康に必要な栄養素を含む食品を積極的に摂取することがおすすめです。これらの栄養素は、目の機能をサポートし、眼精疲労の軽減に役立ちます。


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