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網膜剥離
柿崎 寛子

監修医師
柿崎 寛子(医師)

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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

網膜剥離の概要

網膜剥離とは、眼の奥にある網膜が剥がれる疾患です。網膜は、物を見るために欠かせない役割を担っており、光や色を感知する視細胞とそれに繋がる神経線維からできています。眼に入ってくる光は角膜や水晶体、硝子体を通り抜けて網膜で焦点を結びます。特に、網膜の中央にある黄斑部には視細胞が密集しており、視力や色の識別に関わる重要な役割を果たしているのです。網膜剥離は、裂孔原性網膜剥離、牽引性網膜剥離、滲出性網膜剥離の3つのタイプに分類されます。裂孔原性網膜剥離は、網膜に裂け目や穴ができ、その部分から液体が流れ込むことで網膜が剥がれるものです。牽引性網膜剥離は、増殖性糖尿病網膜症などの病気によって網膜が引っ張られて剥がれます。奬液性網膜剥離は、重度のぶどう膜炎や脈絡膜血管腫などによって網膜の下に液体がたまり、網膜が浮き上がるものです。

網膜剥離の治療は、早期発見と迅速な対応が求められ、治療が遅れると視力の回復に支障をきたします。網膜剥離の治療法には、レーザー治療や手術があり、網膜が剥がれないようにしたり、剥がれた網膜を元の位置に戻したりする方法です。漿液性網膜剥離の場合は、薬物治療などを行うこともあります。

網膜剥離の原因

網膜剥離の原因は多岐にわたりますが、主に加齢、外傷、糖尿病、近視などが挙げられます。

加齢

加齢による網膜剥離は、中高年に多く見られます。加齢に伴い、眼球内の硝子体が変性し、網膜を引っ張ることで裂け目が生じ、網膜が剥がれることがあります。これを裂孔原性網膜剥離と呼び、網膜剥離の中で最も一般的なタイプです。

外傷

外傷による網膜剥離は、スポーツや事故などで目に強い衝撃を受けた場合に発生します。ボクシングやサッカーなどの接触スポーツでは、網膜剥離のリスクが高く、若年層にみられる点が特徴です。また、交通事故や転倒などで頭部や目に衝撃を受けた場合にも、網膜剥離が起こることがあります。

糖尿病

糖尿病も網膜剥離の原因の一つです。増殖性糖尿病網膜症は、糖尿病が悪化していく過程で、新生血管と共に増殖膜が形成されます。増殖膜による網膜の牽引が強くなることで牽引性網膜剥離が起こります。

近視

近視も網膜剥離を引き起こすことがあります。軽度の近視は問題にはなりませんが、強度の近視は網膜剥離や網膜の状態への注意が必要です。近視が強くなると、眼球は前後に強く伸び、網膜は薄くなります。そのため、網膜剥離を引き起こしやすい組織的変化が生じると考えられています。

網膜剥離の前兆や初期症状について

網膜剥離の前兆や初期症状は、視界に異常を感じることが多いです。代表的な症状として、飛蚊症、光視症、視野欠損、視力低下などがあります。

飛蚊症

飛蚊症(ひぶんしょう)は、目の前に黒い点が動いているように見える症状です。明るいものを背景にしたときに見えるが、それ以外の時は見えない特徴があります。これは、硝子体の変性や炎症などにより混濁し、その影が視界に映ることで起こります。飛蚊症は、加齢による生理的な変化でも見られるものです。しかし、急に症状が現れたり、増えたりした場合には、網膜剥離の前兆である可能性があります。

光視症

光視症は、視界の端にピカピカ光るものが見える症状です。これは、網膜が老化した硝子体に引っ張られることで光として感知するためです。頭や目をぶつけたり、指で強く推しても見えることがあります。頻繁に現れる場合には、網膜剥離の前兆である可能性があります。

視野欠損

視野欠損は、視界の一部が見えなくなる症状です。網膜が剥がれることで、その部分の視野が欠けてしまいます。視野欠損は、網膜剥離が進行するにつれて広がることがあります。ただ、通常では両眼で見てる状態であり自覚しないケースもあるため、おかしいと感じたら片目ずつ見え方をチェックしましょう。

視力低下

視力低下は、網膜剥離が進むと現れることがあります。網膜の中心部である黄斑部まで網膜が剥がれると、急激に視力が低下します。

これらの症状がみられた場合、眼科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

網膜剥離の検査・診断

網膜剥離の検査・診断には、視野検査、眼底検査、OCT(光干渉断層計)検査、超音波検査などが行われます。

視野検査

視野検査は、視野欠損の位置や程度を確認する検査です。視力検査のように片方の目を隠し、正面の点を見つめます。その時に周辺の光指標がどの範囲まで見えるか調べます。

眼底検査

眼底検査は、瞳孔を通して網膜の状態を詳しく調べる検査です。眼底検査では、瞳孔を開く目薬を点眼し、眼底鏡を用いて網膜、眼底の血管、視神経などの状態を観察します。眼底検査は、網膜剥離の診断において最も重要な検査の一つです。

OCT(光干渉断層計)検査

OCT検査は、網膜の断層画像を撮影する検査です。OCT検査では、眼底検査ではできなかった網膜の断面を見れます。網膜の厚さや構造の変化を確認し、網膜剥離の有無や進行具合を判断できるため、網膜剥離の診断や治療の効果判定に役立ちます。

超音波検査

超音波検査は、眼の内部が濁っていて網膜が観察できない場合に行われる検査です。超音波を用いて眼球内部の状態を観察し、網膜剥離の範囲や程度、硝子体の状態を確認することができます。超音波検査は、網膜剥離の診断において補助的な役割を果たします。

網膜剥離の治療

網膜剥離の治療には、レーザー治療、硝子体手術、強膜バックリング法などがあります。治療法は、網膜剥離の進行具合や原因によって異なります。

レーザー治療

レーザー治療は、網膜にできた裂け目を焼き、レーザー光凝固で剥がれないようにする方法です。これにより進行を食い止められる場合があります。レーザー治療は、網膜剥離の初期段階で行われることが多く、通院で行うことができます。

硝子体手術

硝子体手術は、眼球の硝子体を切除し、そこにガスを入れて膨らませ、網膜を元の位置に戻して裂け目をレーザーで塞ぐ手術です。手術後は網膜にガスをあてるため、うつ伏せでいるようにします。硝子体手術は、入院が必要な手術であり、術後には一定期間の安静が求められます。

強膜バックリング法

強膜バックリング法は、外側から眼球を凹ませて網膜の裂け目をふさぐ手術です。網膜の裂け目を冷凍凝固装置で凍らせ、引っ付きやすくします。その上にシリコンでできたスポンジを縫い付けて裂け目をふさぎますが、網膜の戻りが悪い時は眼球に気体を入れて内側から圧迫します。強膜バックリング法は、網膜剥離の進行具合や原因によって適用される手術であり、術後には一定期間の安静が必要です。

網膜剥離になりやすい人・予防の方法

網膜剥離になりやすい人には、強度の近視、加齢、糖尿病、外傷、などのリスク要因があります。

強度の近視

強度の近視の人は、網膜剥離のリスクが高いです。近視が進行すると、眼球が長くなり、網膜が薄くなるため、裂け目が生じやすくなります。また、遺伝的要因が関与している場合があるため、家族に網膜剥離の既往がある人もリスクが高いとされています。

加齢

加齢も網膜剥離のリスク要因の一つです。中高年になると、眼球内の硝子体が変性し、網膜を引っ張ることで裂け目が生じやすくなります。特に、50歳以上の人は、定期的な眼科検診を受けることが推奨されます。

糖尿病

糖尿病も網膜剥離のリスクを高める要因です。糖尿病では、血管障害が起こりますがそれが網膜に発生し糖尿病網膜症となります。網膜の血管が酸欠状態になり、新生血管を生やすが出血しやすいため網膜剥離の原因になります。

外傷

外傷も網膜剥離のリスク要因です。スポーツや事故などで目に強い衝撃を受けた場合、網膜剥離が発生することがあります。特に、ボクシングやサッカーなどの接触スポーツでは、網膜剥離のリスクが高まります。外傷による網膜剥離は、若年層にも見られることが特徴です。

網膜剥離の予防方法

網膜剥離の予防には、定期的な眼科検診が有効です。視界に異常を感じた場合には、早めに眼科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。また、糖尿病の管理や適切な眼の保護も大切です。糖尿病患者さんは、血糖値の管理を徹底し、定期的な眼科検診を受けることが推奨されます。スポーツや作業中には、適切な保護具を使用し、目を守ることが大切です。


関連する病気

  • 裂孔原性網膜剥離
  • 牽引性網膜剥離
  • 滲出性網膜剥離
  • 増殖性糖尿病網膜症

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