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肢端紫藍症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

肢端紫藍症の概要

肢端紫藍症(したんしらんしょう)は、手足の指先が青紫色に変色する症状のことです。思春期の女性に多くみられる特徴があります。また膠原病、悪性腫瘍、感染症、神経疾患、摂食障害などの基礎疾患が背景にあり、発症することがあります。

肢端紫藍症は細動脈の異常な収縮・静脈の拡張による血流障害とされ、寒冷刺激やストレスの影響を受けやすいと考えられています。血管が物理的に詰まるわけではないため、閉塞性動脈疾患とは異なります。

時間の経過とともに自然に軽快することが多く、特別な治療を必要とするケースは少ないです。基礎疾患がある場合はそちらの治療が優先されます。

肢端紫藍症の原因

肢端紫藍症の原因は、末梢血管の異常な反応による血流障害とされています。寒冷刺激や精神的ストレスが引き金となり、細動脈が通常以上に収縮する一方で、静脈が拡張することで血液の流れが滞り、指先が青紫色に変色します。血管の反応は自律神経の影響を強く受けるため、思春期の女性に多く見られる傾向です。

肢端紫藍症には原因が特定できない「特発性」と、特定の病気と関連して発症する「続発性」があります。特発性の場合、体質やホルモンバランスの影響が関与していると考えられ、特に冷え性の人に多くみられます。続発性の肢端紫藍症は、膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、関節リウマチなど)、悪性腫瘍(食道がんなど)、感染症、神経疾患(脳梗塞やてんかんを伴うもの)、摂食障害(拒食症など)と関連して発症することがあります。

肢端紫藍症の前兆や初期症状について

肢端紫藍症の前兆や初期症状は、指先や足先が冷たく感じることから始まります。次第に皮膚の色が青紫色や赤紫色に変化し、周囲との色の違いが明確になっていきます。この変化は特に手の甲や指の甲側に現れ、左右対称に症状が出ることが多いとされています。

指先の血流が滞ることで軽い腫れがみられたり、常に湿っているような感覚があったりします。気温が低い冬に悪化し、反対に温かい季節には軽快することが多いです。ただし、夏でも症状が続く場合もあります。

症状が長期間続く場合や、痛みや潰瘍が伴う場合は、他の疾患が関与している可能性があります。

肢端紫藍症の検査・診断

肢端紫藍症の診断では患者の手足の色の変化や冷えの程度を確認し、発症のタイミングや持続時間を詳しく聞き取ります。寒冷刺激やストレスとの関係を調べ、症状が季節によって変化するかどうかも診断の手がかりになります。さらに、肢端紫藍症と似た症状を示すほかの病気と区別するために、いくつかの検査が行われます。

視診と触診

手や足の皮膚の色の変化を観察します。左右対称に紫色や赤紫色の変化があるか、温めたときに色が戻るかどうかを確認します。また、指先の温度や湿り気の有無を確かめ、血流の滞りによる腫れがあるかを診察します。
加えて、手首や足首の動脈の脈拍を確認し、大きな血管に詰まりがないかを調べます。肢端紫藍症では脈は正常に触れることが多いため、閉塞性動脈疾患との鑑別に役立ちます。

血流の評価

血液の循環状態を詳しく調べるために、手足を心臓より高い位置に上げたり、局所を圧迫したりしたときに皮膚の色がどのように変化するかを観察します。血流が一時的に滞っているだけなのか、慢性的な血管の異常があるのかを判断します。肢端紫藍症では、血管が詰まっているわけではないため、こうした動作により皮膚の色が変化することが多く見られます。

血液検査

肢端紫藍症の背後に基礎疾患が隠れている可能性を調べるために、血液検査が行われることがあります。全身性エリテマトーデスや強皮症などの膠原病、感染症、貧血、がんなどが関与している場合は、血液中の異常な成分が検出されることがあります。そのため、免疫の異常を示すマーカーや炎症反応、血液の粘度などを測定し、隠れた病気がないかを確認します。

画像検査

通常、肢端紫藍症の診断には画像検査は必要ありませんが、血管の異常が疑われる場合には超音波検査や血管造影検査が行われることもあります。動脈硬化や血栓が疑われる場合には、これらの検査によって血管の状態を詳しく調べることができます。

肢端紫藍症の治療

肢端紫藍症の治療は、基本的に症状の管理が中心となります。特発性の肢端紫藍症では、寒冷刺激を避け、適度な運動を行い、ストレスを軽減することで症状の緩和が期待できます。
特に冬場は手袋や靴下を着用し、外気に直接触れないようにすることが重要です。室内でも暖房を適切に使い、体を冷やさないようにすることが推奨されます。また、温浴やマッサージを行い血流を促進することで、症状の軽減が期待できます。

症状が強い場合には、血管を広げる薬が処方されることもありますが、すべての患者に有効とは限りません。

続発性の肢端紫藍症の場合は、原因となる基礎疾患の治療が優先です。例えば、膠原病が関与している場合は免疫調整薬が用いられ、がんが関連している場合は、がんの進行度に応じた治療が行われます。

肢端紫藍症になりやすい人・予防の方法

肢端紫藍症は、寒冷刺激やストレスが症状を悪化させる要因となるため、日常的な対策を講じることが重要です。

予防のためには、まず手足を冷やさないことが基本となります。冬場は手袋や靴下を着用し、長時間の冷房の使用を避けることで血流を良好に保てるでしょう。血流の循環を改善するために、日常的なウォーキングやストレッチなどの軽い運動が推奨されます。

ストレスの管理も予防には重要です。ストレスが血管の収縮を引き起こすため、十分な睡眠を確保し、リラックスできる時間を持つことが症状の抑制につながります。また、深呼吸やストレッチを行い、自律神経のバランスを整えると、症状の予防につながります。

生活習慣の改善も重要な予防策です。バランスの取れた食事を心がけ、鉄分やビタミンEを含む食品を積極的に摂取すると血流を良好に保つことができます。また、喫煙は血管を収縮させ、肢端紫藍症の症状を悪化させる可能性があるため、禁煙が望ましいでしょう。


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