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骨髄線維症
山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

骨髄線維症の概要

骨髄線維症は、骨の中にある骨髄というスポンジ状の組織が線維化してしまい、正常な血球が作られなくなる病気です。

骨髄は、骨の中の血液を作り出す組織ですが、線維化してしまうと骨髄が硬くなり、正常な血液細胞を作ることができなくなります。

骨髄線維症の初期症状では、赤血球が不足することで貧血を発症します。
病気が進行すると、白血球や血小板も作られにくくなり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、出血しやすくなったりします。

骨髄線維症は、女性よりも男性に多く、主に60歳以降の高齢者に多くみられます。日本における1年間の新規発症者は約380人と推定され、比較的まれな病気です。

骨髄線維症

骨髄線維症の原因

骨髄線維症には、原因がはっきりしない「原発性骨髄線維症」と、他の病気に続いて発症する「二次性骨髄線維症」の2種類があります。

原発性骨髄線維症

原発性骨髄線維症は、骨髄の中にある造血幹細胞という血液を作る細胞に遺伝子の異常が生じることが原因です。
骨髄の中で特定の細胞が過剰に増殖することで、骨髄が線維化してしまいます。

二次性骨髄線維症

二次性骨髄線維症は、他の病気が原因で発症します。
たとえば、骨髄異形成症候群や真性多血症、本態性血小板血症などの血液の病気が進行することで骨髄が線維化することがあります。

骨髄線維症の前兆や初期症状について

骨髄線維症の症状はさまざまで、病気の進行具合によって異なります。
また初期段階では、症状が現れないことがあります。

貧血症状

一般的な症状は動悸(心臓が速く打つ感じ)、息切れ、そして疲れやすさです。
これは貧血によるもので、体が酸素を十分に運べなくなり、日常生活での活動が辛くなることがあります。

腹部症状

次に起こりやすいのが、腹部の不快感です。
骨髄線維症では、脾臓が大きくなることがあり、これが原因でお腹が張ったり、痛みを感じたりします。
また、食事をしたあとに、すぐに満腹感を感じることが多くなります。

出血症状

皮膚にあざができやすくなったり、鼻血や歯茎からの出血が起こりやすくなります。
これは、血小板の数が減少することが原因です。

全身症状

病気が進行すると、発熱や寝汗、体重減少といった全身に影響を及ぼす症状が現れることもあります。

骨髄線維症の検査・診断

骨髄線維症の診断時になんらかの症状を自覚している方は約4割だといわれています。
また症状がなく、健康診断などで偶然に見つかるケースも少なくありません。

なんらかの症状がある方のうち約2割が貧血症状を訴え、腹部症状は約1割の方に見られます。

診断は、病歴や理学的所見の確認のほか、血液検査や生化学検査、骨髄穿刺および骨髄生検、染色体検査、家蔵検査、遺伝子検査などを行い、総合的に判断されます。

血液検査

貧血や血小板の異常が見られるケースが多いため、赤血球や白血球、血小板の数を調べます。
また、血液の塗抹標本を顕微鏡で観察し、涙滴状赤血球や赤芽球、巨大血小板などの異常を確認します。

骨髄検査

骨髄液を吸引する穿刺吸引検査と、骨髄組織を採取する生検検査があります。
骨髄線維症では、骨髄が線維化しているため、骨髄液がうまく吸引できず、仮に取れたとしても線維化の状態を確認できません。
そのため、骨髄の組織を直接採取して調べる必要があります。
生検検査によって、骨髄の線維化の程度や異常な細胞の有無を確認します。

染色体検査・遺伝子検査

染色体検査とは染色体の数と形態(構造)異常の検索をする検査です。
骨髄や血液の細胞に異常がないかを調べます。
また、遺伝子検査によりJAK2やMPLなどの遺伝子の変異を調べます。

画像検査

骨髄線維症では、脾臓や肝臓が大きくなることがあります。
肝臓や脾臓の大きさを確認するために、腹部の超音波検査やCT検査を行います。

骨髄線維症の治療

自覚症状や貧血の症状が軽い場合は、特に治療をせずに様子を見ることがあります。
しかし、貧血や血小板の減少がひどくなった場合には、症状に応じた治療が行われます。

治療効果が不十分な場合や脾臓が腫れてお腹に強い痛みがある場合には、脾臓を取り除いたり、脾臓に放射線をあてる治療を行うこともあります。
病気を根本的に治す可能性がある治療法は造血幹細胞移植です。

対症療法

症状を和らげることを目的にした治療です。
たとえば、貧血が進行した場合には赤血球の輸血を行います。

白血球や血小板の数が増加する場合は、抗がん剤を使用することがあります。
脾臓が大きくなって腹部に症状が出る場合にはJAK2阻害剤を使用します。
この薬は脾臓を小さくし、全身の症状を改善する効果が期待できますが、副作用として貧血が進行することがあります。

脾臓摘出

開腹手術で脾臓を摘出する場合は、みぞおちから左の側腹部まで大きな切開が必要です。
腹部の筋肉も大きく切開することになり、術後の回復には時間がかかります。
腹腔鏡を用いた手術では、体に小さな穴を開けて手術を行います。
この方法では、傷が非常に小さいため、術後の回復が早く、時間が経つとほとんど目立ちません。

放射線照射

腫れている脾臓や肝臓に放射線をあてて、小さくする方法です。
ただし、この効果は一時的なもので、時間が経つと再び症状が現れることがあります。

造血幹細胞移植

根本的な治療法としては、造血幹細胞移植があります。
これは、強力な抗がん剤や放射線で異常な細胞を消滅させた後、他人から提供された正常な造血幹細胞を移植する方法です。
造血幹細胞移植には、白血球の型が一致するドナーが必要です。
重篤な合併症のリスクがあるため、年齢や病状を考慮して慎重な判断が求められます。

骨髄線維症になりやすい人・予防の方法

骨髄線維症は、男性に多く見られます。
発症年齢の中央値は66歳で、40歳未満での発症は非常に稀です。

遺伝的な要因や特定の遺伝子変異が関与していることが知られていますが、具体的な予防方法は確立されていません。
定期的に健康診断や人間ドックを受診することで、病気のサインを見逃さないようにし、適切な医療を受ける機会を確保することが大切です。


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