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がんを撲滅するために、元気で働く世代が考えるべきこと[Vol.3 ~2年ごとの胃カメラで、胃がんの死亡リスクは半減する]

がんを撲滅するために、元気で働く世代が考えるべきことvol.2 2年ごとの胃カメラで、胃がんの死亡リスクは半減する 監修Dr. 間部 克裕

Introduction

日本の医療制度は、遠からず破綻を迎えかねない。多大な医療費負担が、もはや限界を迎えているからだ。その一方、国立病院機構函館病院の間部克裕医師によれば、主要ながんの多くは未然に防止することができるという。いわゆる「がん検診」の有効活用だ。しかし、がん検診の受診率は1割前後と低迷し、本来の機能を十全していない。いったい、どこに原因があるのだろう。医療界の現実と最新事情について、過日、都内でおこなわれた間部先生の医療関係者に向けた講演を収録した。

Profile

間部 克裕先生

監修医師 間部 克裕(予防医療普及協会)

プロフィールをもっと見る
山形大学医学部卒業、山形大学大学院卒業医学博士課程修了。山形県立中央病院内科医長、KKR札幌医療センター消化器科医長、北海道大学大学院がん予防内科特任講師などを歴任後、現在では、国立病院機構函館病院消化器病・がん予防センターの各センター長と消化器部長に就任。消化管疾患の診療とがん予防に関する活動・研究を続けている。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化器病学会専門医、日本消化管学会・専門医・指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本ヘリコバクター学会Hp感染症認定医。

内視鏡検診がなぜ定着しないのか

監修医師 間部 克裕(予防医療普及協会)

データがないから議論が進まない

ピロリ菌感染者の中で胃の萎縮がどれくらい進んでいるか、それによって、はっきりと胃がんのリスクを判定できます。ピロリ菌への感染は、中学生くらいの年代から、ほとんどしなくなります。日本のような、上下水道が整っている先進国に住んでいることを前提としてですが。

 

ピロリ菌陽性者の生涯胃がん罹患率を最低のパラメータで計算すると、男性で14%、女性で7%といったところ。実際には、その2倍から3倍くらいと考えられます。スナネズミに対しておこなった実験では、長生きさせる程、殆どが胃がんになる。日本人のピロリ菌は、それくらい胃がんを作ります。長生きすればするほど胃がんリスクが大きくなるというわけです。

 

胃がん検診については、昔から「バリウムがいいのか内視鏡がいいのか」という議論がなされてきました。しかし、社会的な問題をバーサスで論じることに意味はないと考えています。国立がん研究センターは2014年に「内視鏡を認める」との見解を出しました。この時点では、内視鏡学会のマニュアルができていなかった。内視鏡検診が広がらない理由に現在のマニュアルにある精度管理が難しいとの意見も多く、今後広く普及可能なマニュアル作成が求められる。

胃がん検診ガイドラインの変更点

その後の2016年、内視鏡学会が環境整備に向けた調査を実施しました。それによると、内視鏡検診をおこなえる見込みのない自治体・医師会が、全体の過半数を占めています。異常な状態です。

内視鏡学会によるアンケート調査 2016年2月

なぜ、内視鏡検診ができないのか。その理由として最も多かったのはキャパシティの問題。内視鏡検査を行う医師や設備が足りていないのではないかという懸念です。そのほか、制度管理上の問題が挙げられました。マニュアルに詳細な規則を記載したために、多くの地域では実施出来ない内容になっています。規則は理想や完璧な体制をめざすべきものではなく、最低限守るべきものとし、その後はセミナー等で技術、知識を修得していくのが本来の姿でしょう。

 

このキャパシティについてですが、データの裏付けがないんですね。いま把握しているのは、6月単月の件数を12倍にしたものです。内視鏡検査の正確な国内件数すら把握できていない。しかも、把握できている数値は保険診療に限られ、人間ドックや検診の件数はまったくわかっていません。

 

もっと大きな問題もあります。国民皆保険であること、内視鏡検診が普及していないことから、ピロリ菌除菌後など、本来は検診として行うべき内視鏡検査が医療としておこなわれています。これを検診にするだけで、検診のキャパシティーは大幅に上がり、医療費も抑えることが出来ます。

 

2018年2月に行った北海道内でのアンケートでも、ほぼ同じような結果が出ています。内視鏡検査を学会のマニュアルどおりに進められる自治体の数は179分の2。そういうマニュアルを運用すべきかといえば、大きな問題があります。

 

北海道のある市では、市役所の方が、内視鏡検査の実態を全て調べたそうです。それによると、医療で行っていた内視鏡検診を検診で行うと仮定すると既に目標値である50%以上だったとのこと。このように、データさえあれば、もっと議論を深められるのです。データがないことが一番の問題。マイナンバー制度を医療分野に使わないことも弊害といっていいでしょう。

データ活用が現実を変える

一方、韓国はどうだったか。2002年の胃がん検診受診率は、日本と同じようにわずか7.7%でとどまっていました。そのうち約8割がバリウム、約2割が内視鏡です。国のがん予防プログラムの策定、実行により、2011年には、国が推進する検診の受診率は46%へ上昇しました。5年生存率も43%から67%へ。すでに日本を越えました。

韓国の胃がん検診~見習うべきところ~

なぜこんなことが可能だったかというと、プログラムを作っただけでなく、きちんと評価したからです。何%の対象者が受診したとか、どれだけがんを見つけられたとか。こうしたデータを取り、インターネットで公開したことにより、国民ががん検診を受け始めたのです。

 

韓国のデータにある「0.53」という数値は、内視鏡検査を受けたことで胃がんの死亡率が「47%」減ったという意味です。細かなことを言う前に、大多数の方が内視鏡検査を受ければ、多くの方の命を救えます。一方、バリウム造影検査は、優位性が見られなくなってきました。「0.98」ですから、バリウム造影検査を受けても、胃がんでの死亡率が2%しか減らないということです。

Effectiveness of the Korean National Cancer Screening Programin Reducing Gastric Cancer Mortality

同じ内視鏡検査でも、75歳から79歳の場合は「0.89」、つまり11%しか減りません。この年代になると、内視鏡の優位さが減ってきます。85歳以上は「2.83」、むしろ受けた方のほうが亡くなる傾向にあります。このようなリスクを考えると、85歳以上の方に内視鏡検診は勧奨せず、希望した場合に限り行う。

 

韓国では基本的に、すべての方が2年ごとの内視鏡検診を受けます。これにより、確実に胃がんで亡くなる患者さんが減りました。すべて国家レベルでのデータをとり解析して公表、検証するから言えることです。個人情報保護法が日本より厳しい韓国でも国家の施策はきちんとデータで検証しています。僕は個人的にきちんとデータベース化することが最も重要と考えています。

[近日公開]Next >> Vol.4 ~元気な人にこそ予防医療!

予防医療普及協会とは

2016年3月、経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションをさまざまな企業や団体と連携し、推進している。

これまでに胃がんの主な原因である「ピロリ菌」の検査・除菌啓発を目的とした“「ピ」プロジェクト”や、大腸がん予防のための検査の重要性を伝える“「プ」プロジェクト”を実施したほか、病気予防のための自己管理サービス「YOBO(ヨボウ)」をリリース。各診療科の専門医、歯科医など診療科や研究の専門領域を横断した医師団が集い、活動をサポートしている。

今後、「ピ」、「プ」プロジェクトに引き続き、子宮頸がん検査、HPVワクチンに関する正しい情報の発信、普及啓発を目的とした「パ」プロジェクトを実施予定。

一般社団法人 予防医療普及協会

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