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たった1回の簡単検査で胃がんは防げる! ―ピロリ菌と胃がんの関係とは 2018.06.27

予防医療普及協会とは

日本では毎年約5万人が亡くなっている胃がん。筑波大学附属病院の鈴木英雄先生は、「ピロリ菌を除菌することで、胃がんは撲滅することが可能」という。どういうことなのか。ピロリ菌感染のリスクや胃がんとの関係など、詳しく伺った。


監修ドクタープロフィール:
鈴木 英雄

医師・医学博士。予防医療普及協会 顧問。
平成6年、筑波大学医学専門学群卒業。専門は消化器内科、医学教育。平成19年から1年半、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターへ留学。平成30年から筑波大学腫瘍内科准教授。総合内科専門医、消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医、がん治療認定医、ピロリ菌感染症認定医など。

ピロリ菌に感染していない人は、ほとんど胃がんにはならない


編集部「ピロリ菌は胃がんの原因」とのことですが、そもそもピロリ菌って、何なのですか?

鈴木先生ピロリ菌は、正しくはヘリコバクター・ピロリ菌という人の胃の中で生息している細菌で、胃がんの原因であることがわかっています。

編集部ということは、ピロリ菌がいなければ胃がんにはならないんですか?

鈴木先生まったくならないとまでは言えませんが、ピロリ菌に感染していない人は、胃がんにはほとんどなりません。

編集部ピロリ菌に感染すると、どうやって胃がんになっていくんですか?

鈴木先生5歳ぐらいまでにピロリ菌に感染するとまず胃炎になるんですが、長い間ピロリ菌に感染している状態でいると、それが萎縮性胃炎と呼ばれるものになり、さらに腸上皮化生といって、胃が腸に似た組織に置き換わっていきます。それが胃がんの原因になっていくというように、長い期間を経てがんになるんです。
胃がんになるのは60歳とか70歳ぐらいの年代が多いので、感染してから数十年の単位で時間が経ってからがんになるということですね。

編集部ピロリ菌が原因となる病気は胃がん以外にもありますか?

鈴木先生一番多いのは胃潰瘍・十二指腸潰瘍ですが、あとは胃MALTリンパ腫というちょっと珍しい病気など、いくつかの病気があります。他にもじんましんや貧血など、胃の病気以外の病気にも関係しているといわれていて、今、研究が進んでいるところです。

ピロリ菌は5歳までの小さな子どものとき、口から入って感染する

編集部日本ではどれくらいの人がピロリ菌に感染しているのですか?

鈴木先生年代によってかなり違いがあります。若い方ではそれほど多くなくて、10〜20代の方だと1割前後ですが、70代では半分ぐらいとなっています。
1970年代には若い方でも7〜8割は感染していたんですが、衛生環境が良くなるにつれて、若い方の感染率はどんどん減ってきました。
ピロリ菌は一回感染すると一生持続するので、若い頃に多くの方が感染していると、その世代は一生涯ずっと感染率が高いままなんですが、若い方の感染率が減ってきているので、そのまま時間が経てばいずれ日本にピロリ菌のいない方がどんどん増えてくるということになります。

編集部ピロリ菌はどうやって感染するんですか?

鈴木先生基本的には経口感染といって、口から入ります。感染経路は家族間の感染のほか、井戸水などでも感染すると言われています。

編集部ピロリ菌の感染を防ぐにはどうすればいいんでしょうか?

鈴木先生ピロリ菌の感染が成立するのは5歳頃までといわれています。小さい頃は親から口移しでものを食べたり、親とのスキンシップが密接ですので、そこでうつってしまいます。
親がピロリ菌を除菌していれば子どもにはうつらないといわれていますので、結婚する前に除菌をすれば、子供にうつすことは少なくなります。

ピロリ菌の検査は病院に行かずにできる方法もある


編集部ピロリ菌がいるかいないかを調べるには、どんな検査をするんでしょうか?

鈴木先生検査の方法はいろいろありますが、まず病院に行って検査をしてもらう方法があります。
胃に何らかの症状があって病院に行くと、病気を調べるために胃の内視鏡検査をします。そのときにピロリ菌に感染していそうだと医者が胃の組織を取って調べます。他には血液で調べたり、袋に息を吹き込んでそれを調べる尿素呼気試験などがあります。
病院に行かずに検査する方法としては、通信販売でピロリ菌の尿検査キットなどが購入できるので、それを利用する方法もあります。
そのほかには自治体や企業の健康保険組合などが実施する胃がんリスク層別化検査(ABCリスク検診)というものがあります。この場合は採血でピロリ菌がいるかどうかと胃が萎縮しているかを調べることができます。
検査は主にこの3つのどれかということになります。

編集部胃の調子が悪いとか自覚症状がなくても、一度はピロリ菌の検査を受けておいたほうがいいんでしょうか?

鈴木先生自覚症状があればもう病気が進んでいる可能性があるので、自覚症状がないうちに、一生に一度は調べておいたほうがいいですね。
それでピロリ菌がいないとわかれば、あとは40歳ぐらいになってから内視鏡検査を受ければいいですし、もしもいるということがわかったら、ちゃんと病院を受診してピロリ菌を退治することです。これを除菌といいますが、今は保険適用になっているので、ちゃんと除菌をしたほうがいいと思いますね。

胃カメラは苦しい?おすすめは鼻から入れる経鼻内視鏡検査

編集部実は私も胃の内視鏡で検査をしてもらったのですが、結構苦しい思いをしました。もう少し楽な検査はないでしょうか?

鈴木先生内視鏡は口から入れましたか?最近は経鼻内視鏡といって、鼻から入れる細い内視鏡が開発され、普及しています。私も鼻と口、両方受けたことがありますが、断然鼻のほうが楽ですね。

編集部鼻から入れる内視鏡は細いんですか?

鈴木先生細いですよ。直径5〜6mmです。口から入れる内視鏡の太さは直径1cmぐらいですから、それに比べれば半分ほどなので圧倒的に楽です。
なぜ鼻から入れるのがいいかというと、舌根部と呼ばれる舌の付け根のところに物がさわると「オエッ」という反射が起きるのですが、口から内視鏡を入れるとどうしても必ずそこにさわってしまいます。
ところが鼻から内視鏡を入れると、のどの奥のほうから入って行くので、舌根部に触れないで済むんです。そうするとオエッと来ないというメリットがあります。
それに、鼻からの内視鏡だとモニターを見ながら会話もできます。

編集部内視鏡の検査では、胃の中をカメラで見るだけじゃなくて、胃の壁をつまんで組織を取ったりもするんですか?

鈴木先生ピロリ菌感染が疑われた場合は胃の組織をつまんで取る方法が3つあります。一つは迅速ウレアーゼ法といって、その場でピロリ菌がいるかいないかを調べる方法、顕微鏡を使ってピロリ菌がいるかいないかを調べる方法、最後にピロリ菌を培養して確かめる方法があります。
それとは別に、がんが疑われるようなところがある場合、やはり組織を取って、ピロリ菌の検査とはまた別に顕微鏡で調べる検査に出します。
ですから、ピロリ菌のために取る場合もありますし、がんが疑われるようなときのために取る場合があります。

1週間薬を飲むだけ!ピロリ除菌は保険診療で受けられる


編集部検査をしてピロリ菌がいたら、やはり除菌をするべきなんですか?

鈴木先生そうですね。ピロリ菌がいてもいいことはないので、特に若い方は除菌したほうがいいですね。

編集部除菌の方法はお薬ですか?

鈴木先生胃酸を抑える薬と抗生剤(細菌を殺す薬)を2種類、これを1週間飲んでもらいます。この方法は保険診療で認められていて、成功率は7割ぐらいといわれています。
この方法で残念ながらうまくいかない場合は、もう1種類、別の抗生剤に変えてまた1週間飲むという方法があります。この2回をやれば95%以上はうまくいきますので、ほとんどの方はこれらの方法でピロリ菌を消すことができます。

薬の副作用や体調の変化は?ピロリ除菌の不安をぶつけてみた

編集部薬の副作用は人によって違いますか?

鈴木先生ピロリ菌の除菌に使っている薬は昔から普通に使っているものなので、あまり副作用はないんですが、便がゆるくなったり、ときに下痢をすることがあります。他には味覚障害といって、食べ物の味が少し変わったように感じることがあります。
また、薬疹といってじんましんが出る方もいらっしゃいます。そういった強い副作用が出たときは、薬をやめたほうがいいですが、そうでない方は1週間しっかり飲み切ってもらうことが多いですね。

編集部除菌の後、逆流性食道炎になることがあるという話を聞いたのですが。

鈴木先生除菌をすると今までピロリ菌がいたために抑えられていた胃酸の分泌が回復するんですね。胃が若返って、胃酸が出やすくなるんです。それも長期的にみると落ち着いてくるといわれています。

ピロリ除菌でリスクを減らし、定期的に検査をすれば胃がんは防げる!


編集部ピロリ菌が除菌できたかどうかは、どうやって調べますか?

鈴木先生除菌がうまくいったかどうかを調べるには、二つの方法がいいといわれています。まずひとつは便で調べる方法です。胃の中にいるピロリ菌が最終的には死骸になって便の中に出てくるので、それを調べるのが便の検査です。
もうひとつは尿素呼気試験といって、紙袋に息を吹き込む検査です。
除菌をしてから4週間以上、できれば8週間以上経ってから調べるのがいいといわれていますので、私はだいたい2か月後に来てもらって調べています。

編集部除菌に成功したら、あとは何もしなくて大丈夫ですか?やはり定期的に検査は受けたほうがいいんでしょうか?

鈴木先生ピロリ菌が消えたといっても、長い間胃の中にいたわけですから、胃がんになるリスクはゼロにはなりません。最近は除菌後胃がんといって、除菌をしたにもかかわらず胃がんになってしまうということがわずかながらありますので、やはり除菌をしたからといって安心しないで、胃がん検診はちゃんと受けたほうがいいと思います。

編集部まだピロリ菌の検査をしたことがない方には、どんなことを伝えたいですか?

鈴木先生まずお伝えしたいのは「胃がんは感染症である」ということです。感染症であるということは、防ぐことができるんです。胃がんになるのは遺伝や生活習慣のせいではありません。外からの異物が原因ですので、それを除去することによってリスクを下げられます。
ですから、感染症が原因のがんは予防ができるという知識を持っていただくことが第一です。
次は対策です。自分の胃にピロリ菌がいるかいないかということを、まずは1回チェックしていただいて、いたらなるべく早く除菌をしていただきたいと思います。
感染率は減ってきてはいますが、20〜30代の方でも10人に1人はピロリ菌がいるので、日本全体で考えるとかなり大きな数になります。その方たちが結婚をして子どもが生まれるその前に除菌をすれば、親から子への連鎖も断ち切ることができます。
そうすればいずれ日本から胃がんがほぼなくなるでしょう。我々は「胃がん撲滅」を目指していますから。

編集部まとめ

いかがでしたでしょうか。「ピロリ菌がいなければ、ほぼ胃がんにならない」というのは驚きでしたね。そして、将来子どもにうつさないためにも、若いうちにピロリ菌の有無を調べておくことが大切だとわかりました。ピロリ菌の検査にはいくつかの方法がありますが、どの検査も90%以上の精度がありますので、胃がんは高齢者の病気などと思わず、20〜30代の皆さんもまずは手軽な検査キットなどを利用してピロリ菌の有無をチェックしてみてはいかがでしょうか。ピロリ菌の除菌をしておくことで、胃がんをはじめさまざまな胃の病気リスクを減らすことができます。そして、40代になったら内視鏡の検査を一度は受けておきましょう。
特に、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などと診断されたことのある方や、胃の病気になったことがなくても親や兄弟に胃がんや胃潰瘍がいらっしゃる方はピロリ菌が陽性かもしれませんので、早めに検査を受けられることをおすすめします。

予防医療普及協会とは

2016年3月、経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションをさまざまな企業や団体と連携し、推進している。
これまでに胃がんの主な原因である「ピロリ菌」の検査・除菌啓発を目的とした“「ピ」プロジェクト”や、大腸がん予防のための検査の重要性を伝える“「プ」プロジェクト”を実施したほか、病気予防のための自己管理サービス「YOBO(ヨボウ)」をリリース。各診療科の専門医、歯科医など診療科や研究の専門領域を横断した医師団が集い、活動をサポートしている。
今後、「ピ」、「プ」プロジェクトに引き続き、子宮頸がん検査、HPVワクチンに関する正しい情報の発信、普及啓発を目的とした「パ」プロジェクトを実施予定。
一般社団法人 予防医療普及協会
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-33 プリンス通りビル2階
TEL:03-5226-1086 (10:00~17:00)
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お問い合わせ:office@yobolife.jp

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