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歯周病って何?歯周病の進行と分類

 更新日:2023/08/03

こんにちは。日本歯周病学会認定医の飯島佑斗と申します。
突然ですが歯周病という病気についてみなさまはどのように認識されているでしょうか?
歯茎が腫れて出血する。口臭がする。歯茎が下がってきた。歯が揺れている。歯周病は歯を磨かないとなってしまう。きちんと歯ブラシをしていれば歯周病にならない。歯周病になったとしても歯をきちんと磨いていれば歯医者に行かなくても治るんじゃないのか。このように認識されている方が多いのではないでしょうか。
 
しかし実際は定期的にクリーニングを行っているのになぜか歯茎が腫れた、痛い、歯が揺れると訴える方がいらっしゃいます。
歯周病は進行度によって対応の仕方が違ってきます。そのため定期的にクリーニングをしているだけではその進行をくいとめることができない事があります。
そこで今回は歯周病の進行や分類について解説したいと思います。

飯島 佑斗

監修歯科医師
飯島 佑斗(飯島歯科医院・院長)

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東京歯科大学卒業。日本歯周病学会専門医。日本口腔インプラント学会専修医。飯島歯科医院 院長。

 歯周病ってなに?

そもそも歯周病とはなんでしょうか?
歯周病とは一部を除きほとんどが歯周病を起こす細菌による感染症と言われています。
よく知られている虫歯と違い、歯の周囲の歯茎や骨などの歯周組織と言われる部分に問題が起こります。歯周病は歯茎にのみに症状が起こる歯肉炎歯肉炎が進行して起こる歯周炎に大別されます。
また昨今、歯周病は生活習慣病として認知されてきていて糖尿病や動脈硬化など全身疾患との関連が示唆されていています。つまり歯周病の予防が全身の生活習慣病の予防にもなると考えられているということです。
歯周病になるとどのような症状がおこるのでしょうか?
まず歯周病にはいくつかの分類があります。症状によりおこる症状は様々です。まず大きく分けると歯茎のみに症状がみられる歯肉病変と呼ばれるものと歯茎より深い部分にある骨やセメント質という部分にまで進行してしまった歯周炎に分けられます。
(日本歯周病学会 歯周病分類システム)

⒈歯肉病変

歯垢などの汚れに潜む歯周病をおこす細菌によって歯茎のみに炎症を起こす歯肉炎が最もよくみられます。しかしそれ以外にも原因によっていくつか歯茎に病変を形成する歯肉病変があります。

 ①プラーク(歯垢)による歯肉炎

一般的に歯肉炎と言われるものです。歯の汚れである歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯茎に起こる炎症のことです。歯周炎の前段階とされています。
症状としては歯茎の色調がピンク色から赤色になり、腫れ、出血、痛みなどがみられます。しかしレントゲンや歯周ポケットの検査では異常が見られない状態です。
思春期、妊娠などの特定の時期に起こりやすいとも言われ、糖尿病や白血病、栄養不足などによっても起こりやすいとも言われます。
原因としては歯垢(プラーク)ですので、歯肉炎の発症を予防するためには日々のブラッシングや歯科医院への定期検診は非常に重要となります。

 ②プラーク以外による歯肉炎

歯垢の中の細菌以外でおこる歯肉炎のことです。一般的な歯垢にいる細菌以外の細菌による感染によるもの、皮膚病に伴うもの、アレルギーによるもの、外傷によるものなどがあります。原因によりさまざまな症状をおこします。

 ③歯肉の増殖

薬の内服や遺伝によって歯茎が腫れた状態を指します。歯垢が原因の歯肉炎と違い歯茎は腫れますが触るとかたさがあります。
薬剤としてはてんかんの薬、高血圧の薬、免疫抑制剤などでこの症状がみられます。
薬剤、遺伝いずれが原因だとしてもブラッシングを徹底することで発症や再発をある程度防止できると言われています。
④HIV感染によっておこる歯肉病変
HIV感染によっておこる特徴的な歯肉の病気です。帯状歯肉紅斑、壊死性潰瘍性歯肉炎という歯肉炎がみられることがあります。これらの歯肉炎の発見によりHIV感染の早期発見につながることがあります。

⒉歯周炎

一般的に歯周病と言うとこの歯周炎を指すことが多いと思います。
歯周病をおこす細菌による炎症が歯茎からさらに深部の歯を支える骨(歯槽骨)や歯と骨を結合している歯根膜、セメント質にまで及んでしまった状態です。
歯槽骨の吸収などに伴い歯と歯茎に歯周ポケットという深い溝を形成します。一度歯周ポケットを形成してしまうとその溝の中でかたい歯石(歯肉縁下歯石)ができてしまい、その歯石の表面にまた歯垢が沈着し炎症をおこします。歯周ポケットは4mm以上の深さのため歯ブラシの毛先が届きづらくさら歯周ポケットが悪化し、より歯石や歯垢の除去が困難になり悪循環をおこしてしまいます。
歯周炎にもその進行スピードによって種類があります。

 ①慢性歯周炎

最もよくみられる歯周炎で、35歳以上になるとみられることが多いです。
症状としては歯周ポケットの形成、歯周ポケットからの膿の排出・出血、歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊、歯が揺れるなどです。
名前の通り慢性に経過するため上記の症状を自覚するまでどんどんと病気は進行します。ほとんどが痛みを伴わないため見逃されがちで気づくと治療が非常に困難になってしまっていることもあります。

 ②侵襲性歯周炎

全身的には健康ですが、急激な歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊や歯周ポケットの形成を起こす歯周病です。家族内で同様の症状がおこることが多いと言われています。一般的には歯垢(プラーク)の付着している量は少なく、発症する年齢も10〜30歳くらいの若い人が多いと言われています。さらに歯周病の細菌の中でも特定の細菌が多いと言われることもありますが、最近では慢性歯周炎に多い細菌が原因となって発症していることもあると言われています。さらにこの歯周病を発症したひとには身体の免疫の異常が認められるという特徴もあります。この歯周病にかかっているひとは全体の0.05〜0.1%程度と言われています。

⒊壊死性歯周疾患

 ①壊死性潰瘍性歯肉炎

歯茎とくに歯と歯の間の歯茎が壊死を起こす歯肉炎で激しい痛みと出血が認められます。精神的ストレス,免疫力低下,栄養不良、HIV感染者や白血病患者,喫煙がなどが関与していると言われています。特定の歯周病を引き起こす細菌が関与しているとも言われています。

 ②壊死性潰瘍性歯周炎

上記の壊死性潰瘍性歯肉炎が治療されずに放置されると発症すると言われています。歯茎だけでなく歯槽骨の破壊、深い歯周ポケットの形成も認めます。急速に進行すると歯の根の部分がほとんど露出することがあるとされています。

⒋歯の周囲の膿瘍

 ①歯肉膿瘍

歯周ポケットからの細菌の感染や歯茎に対する刺激や傷からの感染によって歯茎に膿がたまる病気です。原因となる部分の歯茎の赤み、腫れがみられ、痛みもみられることがあります。

 ②歯周膿瘍

深い歯周ポケットがあり、不十分な歯石除去などの影響により歯周ポケットの入り口が閉鎖されることで深部に膿が溜まった状態です。過大な噛み合わせの力や糖尿病などで感染に対する抵抗力が低い場合にも発症します。

⒌歯周-歯内病変

歯の周囲の感染である歯周病が歯の内部の感染(歯内病変)と交通したものを言います。
歯周病の進行により歯の内部が感染したもの、歯内病変が進行し歯周病になったもの、またそれぞれの病態が存在し交通したものに分けられます。一般的に歯内病変からスタートしたもの以外は難治性と言われています。

⒍歯肉退縮

歯茎の位置が基準となる位置より下がった状態を言います。加齢、強いブラッシング、歯茎の炎症、かみ合わせとなる歯の喪失に伴うものなどがあります。
歯茎が下がって歯の根の部分が露出すると虫歯や知覚過敏などが生じることがあります。

⒎咬合性外傷

強いかみ合わせの力により歯の周囲の組織が破壊される状態を言います。歯の周囲に炎症がない場合に強いかみ合わせの力が生じた場合は歯周ポケットの形成はなく、歯の根の周囲の骨の部分的な喪失が認められます。しかし歯の周囲に炎症がある状態で強いかみ合わせの力がかかると急激に歯周病が進行します。

 歯周病になってしまったらどうするの?

原因によりそれぞれ対応はことなりますが、一般的な歯肉炎、歯周炎は原因(歯垢や歯石)を除去することで改善もしくは進行の停止は期待できます。また原因の除去だけでなく歯垢などの汚れがたまりにくい環境にするために必要に応じてずれている被せ物や詰め物などの修正、矯正治療によるかみ合わせの改善、口呼吸の改善、虫歯の治療なども行う必要があります。
歯肉炎や軽度の歯周炎であれば健康を回復できますが、中等度以上まで進行してしまった歯周炎では原因の除去だけでは深い歯周ポケットが残ってしまい歯周病の再発や増悪の危険性があります。そういった場合には歯周外科手術という処置により歯周ポケットの改善を図る必要がでてきます。そのような処置でも改善を期待できないような歯に対してはやむを得ず抜歯を行うこともあります。
現在では大きく骨が溶けてしまった場合でも状態によっては歯周組織再生療法という手術によって元の骨の状態に近づけることも可能となりました。しかし状況によっては健康保険の適応となりますが、大きく骨がないような状態では自費診療となってしまうこともあるのでそのような場合は担当医の先生と相談となります。
そして一番重要なことは以上のような治療によって歯周病の状態が改善した後はそれで終了、ではなくしっかりと定期検診を行なっていただく必要があるという事です。歯周病に一度なってしまった方は歯周病の再発のリスクが高いためその予防のためにしっかりと定期健診によりチェックしていきます。治療中はモチベーション高く日々ブラッシングしていても時間が経つとだんだんとブラッシングもおろそかになっていきます。そういったモチベーションを維持していくという意味でも定期検診を受ける意味があります。
 

 まとめ

歯周病と一言で言っても分類上様々な種類があります。ほとんどは歯肉炎、歯周炎の場合が多いですが、中には全身的な病気が原因の歯周疾患もあるため、定期検診をしていることでそのような自覚症状のない全身的な病気の早期発見にもつながります。
一般的な歯肉炎、歯周炎の予防としては日々のブラッシングになります。しかしご自身ではしっかり磨いていると思っても意外とできていない場合が多く前述したように気づかぬうちに進行しているような事もあるため歯科医院への定期検診は非常に重要となってきます。
今回は歯周病の分類についてお話しさせていただきましたが、今回の内容のように少しでもお口の中でおかしいなと思ったことがあったら早めに歯周病専門医、認定医のいる歯科医院を受診しましょう。

この記事の監修歯科医師