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歯周病とメタボリックシンドローム

こんにちは、千葉県市川市市川にある『水野デンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の水野剛志と申します。


 

 1、はじめに

 
近年、「メタボリックシンドローム」という言葉は急速に広まり、“太っていればメタボ”と、太っている人の代名詞のように使われることが多くなりました。お腹が出てしまった中高年男性に多い「内臓脂肪型肥満」が健康的ではないこと、そして、生活習慣を改善しましょう、といった雰囲気が社会の中に芽生え始めていることは、私達の健康を考えるうえで、大変大きな一歩であったと言えます。そして歯科医学会の中でもここ10数年で、歯周病と肥満やメタボリックシンドロームとの関連を示す論文が数多く報告されてきています。今回のブログではメタボリックシンドロームや肥満と歯周病のかかわりについて紹介したいと思います。
 
まず『メタボリックシンドローム』の言葉の意味をおさらいしたいと思います。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上を合併した状態であり、その基準は国により異ます。
 

 

 2、疫学

肥満の基準は世界的にはBMI(kg/m2、体重÷身長)が30以上で、米国などではすでに30%を超えていますが、わが国の場合は30を基準とすると約2%と非常に少ない。しかし、肥満が直接の原因となる2型糖尿病の罹患率が米国と変わらないことなどから、わが国ではBMI25が基準とされています。
国民健康・栄養調査によると、1980年から2010年の30年の間に、男性ではすべての年齢層でBMIが25を超える肥満者が増加しており、最大値を示す50歳代では37.3%に達しています。
他方、女性では60歳代までほぼ減少傾向にあり、逆にBMI18.5未満の痩せ増加しており、閉経後骨粗鬆症の増加が懸念されています。、また、5年ごとに同時に実施させている糖尿病実態調査では糖尿病が急増しており、わが国では特に男性の肥満が重要な問題になりつつあります。
 

 

 3、脂肪組織から全身へ

1990年代に脂肪組織から分泌される生活活性物質の研究が盛んとなました。その中にはTFN-α、IL-6、MCP-1などのサイトカインが含まれており、肥満者では脂肪組織から分泌されるこれらの物質が全身に軽い炎症状態をおこしているのではないかと考えられるようになりました。このうちTNF-αは2型糖尿病の直接の原因であることが明らかにされています。近年、脂肪組織には多量のマクロファージが集積していることが明らかにされ、脂肪組織の肥大化とそこへマクロファージの集積が炎症とインスリン抵抗性をもたらし、メタボリックシンドロームの病態の基礎をなしていると推測されるようになったのです。
 

 

 4、肥満から歯周病へ

1998年に、肥満と歯周病が関連していることが報告されました。その後、10数年を経て肥満と歯周病との関連を示す多くの報告がなされてきたが、そのほとんどが時間軸の無い断面調査であり、因果関係についてはいまだに明らかではありません。さらに、歯周病とメタボリックシンドロームとの関連を示す報告も増えているが、こちらも同様です。
脂肪組織はエネルギーの貯蔵庫として中性脂肪を蓄えるだけでなく、さまざまな生活活性物質を分泌し疾患を引き起こす内分泌器官であると考えられるようになりました。脂肪組織から産生されたTNF-αやIL-6などのサイトカインが歯周組織の炎症を亢進し歯周病を悪化させている可能性があるとしたのです。
しかし、動物を用いた実験の報告は非常に限られており、動物実験では肥満が歯周病を起こすという関係性を明らかにすることは困難でした。
 

 

 5、歯周病から肥満へ

歯周病における炎症性サイトカインがインスリン抵抗性を起こし、糖尿病や肥満を引き起こしている可能性が指摘されました。歯周病などの局所の慢性炎症が全身に影響を与えているのではないかと推測されました。歯周病の原因菌をマウスの皮下に埋め込むと、肝臓や脂肪組織に脂肪の沈着が起き、体重も増加しました。このことから歯周病における細菌感染が血中のLPS濃度を上昇させエンドトキシン血症となり、これが肝臓に作用して肥満を誘発する可能性があると示唆されたのです。
実際、歯周ポケットが深い者ではNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)を疑わせる肝機能検査値を有する者が多く、NASHの患者の唾液から、特に侵襲性の高いとされている2型のPorphyromonas gingivalisが高頻度に検出されており、さらに歯周治療によって肝機能検査値が改善しているという報告もあります。
また、4年間のコホート調査で4mm以上の歯周ポケットを有する者では、肥満やメタボリックシンドロ-ムになりやすいことが2010年に報告されています。
さらに歯周治療を行うことによって、血中のLDL、コレステロール値、総コレステロール値の減少したという研究もあります。これらの研究結果から歯周炎という局所の炎症が、肝臓や脂肪組織に働き、肥満を誘発している可能性が考えられるようになってきたのです。
 

 

 まとめ


 

肥満があると歯周病になるということは現在の研究ではあまりはっきりと解っていない。

 

 

歯周病に罹患していると肝臓や脂肪組織に影響を与え体重の増加やメタボリックシンドロームを誘発する可能性がある。

 

 

歯周治療をおこなうと肝機能の改善と血中のLDL、コレステロール値、総コレステロール値の減少がおこる可能性がある。

 
歯周病とメタボリックシンドロームの関係性については、研究は行ってはいるもののさらなるデータの集積が必要と考えられいる分野であるようです。
 
歯周治療をおこない、メタボリックシンドロームが改善したという報告は存在するが、人を対象とした臨床報告の統計データでは、同時に食生活を気をつけていたり、内科などを受診し医科的なアプローチも同様にされているでしょう。その中で歯周治療が効果があったと特定することは困難なことだと思いますので現在のところは可能性があるという表現にとどめておくことが妥当なのでは考えています。

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