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歯周病と骨粗鬆症について

 更新日:2023/03/27

こんにちは、JR総武線市川駅の日本歯周病学会認定歯周病専門医が在籍する歯医者「水野デンタルクリニック」院長の水野剛志と申します。近年歯科治療に訪れる方の全身の現病歴の問診を行っていると骨粗鬆症のお薬を飲んでいる方がとても多くなってきていること気づきます。歯科治療においては骨粗鬆症の治療薬でもあるビスホスホネート製剤と顎骨壊死という問題が非常に重要になってきますが今回は、歯周病とは関係があるのか?というテーマでお話させていただければと思います。

 1.骨粗鬆症について

骨粗鬆症は、閉経期以降の女性や高齢の男性に多くみられる原発性骨粗鬆症と、栄養不足や運動不足、副腎ステロイド製剤などの影響で罹患する継続性骨粗鬆症に大別されます。
骨量の低下と骨組織の微細構造の変化を特徴とし、骨の脆弱化の結果、骨折の危険性が増大する疾患です。

 2.歯周病と骨粗鬆症との関係について

骨粗鬆症と歯周病についての関係性は、全身の骨量減少が減少する場合、歯を支える歯槽骨と呼ばれる骨自体にも影響が出るのかどうか?とい議論がおこり歯周病に起因する局所の歯槽骨の吸収と骨粗しょう症との因果関係を解明するために多くの研究が開始されました。

 3.考えられるメカニズム

閉経後骨粗鬆症の病態は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌低下で説明されます。エストロゲンは骨芽細胞の働きを促進して、破骨細胞の働きを抑制しますが、この機構が働かなくなることで骨粗鬆症が生じます。骨粗鬆症患者で歯周病が進行する可能性を示唆する見解においては、そのメカニズムとして、閉経後の女性では顎骨の骨密度が減少しており、さらにエストロゲンの分泌低下により炎症性サイトカインの産生亢進が生じ、既存の歯周病の進行に影響を及ぼすとした説が想定されています。

 4.歯周病と骨粗鬆症との関係性の研究の一例

古いものだと1960年後半より研究がおこなわれ、骨粗しょう症の患者さんの歯周病の状態の記録を取るところからはじまりました。具体的には、歯茎の出血の程度や歯周ポケットの有無や深さの測定。歯茎の高さの変化の記録などを健常者と比べたものなどです。
愛知学院大学短期大学部の稲垣幸司教授らの調査では、次のことがわかっています。
・閉経後の女性で骨粗しょう症になっている人は、そうでない人に比べて歯周ポケットの出血率が高い、すなわち、歯周病の活動性が高く進行している傾向がある。
・閉経後の女性で骨粗しょう症になっている人では、歯を支える歯槽骨の吸収が進んでいる割合が高い。
・中指の骨密度の低下が進んでいるほど、残っている歯の数が20本未満である割合が高い。
歯周ポケット内では、T細胞やB細胞の異常、インターロイキン1(interleukin-1、IL-1)、IL-6、IL-8、腫瘍壊死因子(tumor necrotic factor-α、TNF-α)などのサイトカイン、炎症性メディエーターであるプロスタグランジン(PGE2)の異常亢進が起きやすい。
エストロゲンには、骨の破壊だけでなく、歯周組織の炎症を抑える作用もあります。そのため閉経によってエストロゲンの分泌が減少すると、骨粗しょう症に加えて、歯周ポケット内では炎症性の物質(サイトカインなど)が出やすくなり、歯周組織の炎症も進行しやすい。また、歯周組織の炎症が進むと歯槽骨が溶けて歯がぐらつくようになりますが、骨粗しょう症の人では歯槽骨がもろくなっているため、その進行が加速され歯を失うリスクも高まるとしています。
愛知学院大学の研究のように、その関係性について多くの愛知学院大学の研究のように、その関係性について多くの研究が報告され、関係性についてはあるのではないかと結論されるものも多い一方、その関連性はかなり低いとするものや、否定する報告もあるため結論としてはまだはっきりとしていない分野といえます。
しかし、多くの研究においてサンプル数が十分とはいえず、断面的な調査結果であることや、年齢、性別、喫煙、人種、そしてホルモンなどの諸因子を考慮した適切な対照群を選択した報告が少ないことから、課題が多く残されている。
今後は、性差、ホルモン摂取量、喫煙、人種、年齢、ストレス状態、食生活、運動歴、および甲上腺機能、や糖尿病などの全身状態といった因子を補正した上で、より多くの集団で両者の関係性を長期的、かつ継続的に評価する必要性がある

 5.まとめ

研究により結論が異なり世界的にはまだ結論はでていないと考えるべきである。しかし、歯周病との相関関係もある研究もあるため無視は出来ない状態である。骨粗鬆症を持った患者の方は、歯周治療を予防すること。既に歯周病に罹患されている方の場合は、歯槽骨の吸収の度合いが強いとする統計も存在はしているので、しっかりとした歯周治療を受け継続的なメインテナンスを行い再発防うえで意を払うべきと考えます。

この記事の監修歯科医師