FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 歯科TOP
  3. 日本歯周病学会専門医・認定医のブログ(歯科)
  4. 日本が歯科先進国と比較すると歯周病患者が多いのはなぜ??

日本が歯科先進国と比較すると歯周病患者が多いのはなぜ??

 更新日:2023/03/27

こんにちは、日本歯周病学会認定医であり、市川市行徳にございます『杉澤デンタルクリニック行徳』の杉澤幹雄と申します。歯周病は歯の周りの組織に対する歯周病原細菌の感染によって引き起こされ、世界で最も多くの感染者数の多い疾患です。その歯周病は日本でも多くの感染者数が報告されており、日本人で歯を失う原因の1位であり、歯科先進国の中でも歯周病罹患数が多いことが知られています。今回は日本において歯周病罹患数が多い原因について書いていこうと思います。

 日本における歯周病の罹患状態

平成28年の歯科疾患実態調査において、歯周病の指標となる深さが4mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合は、年齢が高くなるにつれて増加しており、ほぼすべての年代で高い値が示されました。年齢ごとに見てみると、45-54才の2人に1人は4mm以上の歯周ポケットを有しています。(歯と歯茎の間の隙間の深さは正常で3mm以内が正常値となります。)また、歯肉出血を有する者の割合は、15才以上のすべての年齢階級で30%を超えていて、30才以上55才未満では40%を超えています。
日本では歯肉に何らからの症状がみられる患者数を想定すると約9,500万人いるといわれています。それに対し、実際に歯周病の治療を受けている患者数は約331.5万人と報告されています。この数字の差から歯周病に感染していても治療をしていない人がいかに多いかがわかります。

 歯科先進国での歯周病の罹患

WHOにおけるCPIにおける歯周疾患の有病率において、世界地域ごとの歯周ポケットを有する割合(35-44才)は4~6割程度であり、日本の同年代の割合は2~3割程度のであり、世界の平均的な状況と比べると比較的良好といえます。※最も多い対象者数が35-44才
歯科先進国と知られているスウェーデンの80歳代における平均残存歯数は19本であり、日本の15本と比較すると約4本歯が残っていることになります。(歯の本数において3本の差は大きいと思われます。)

 日本人の歯周病罹患数が多い原因

〇予防の実践

歯周病を発症させないまたは悪化させないために一番大切なのは、歯周病原菌による感染を防ぐことにあります。そのためには日々のオーラルケアや歯科医院でも専門的なケアが大切になります。
日本でも最近は歯周病に対する予防意識が高まっております。しかし、予防のために定期的な歯科医院での検診や歯周病を予防するメンテナンスを行っている割合はまだまだ低いのが現状です。
『定期的に歯科医院にて検診やメンテナンスを受けている割合』
スウェーデン・・・・・80%
アメリカ・・・・・70%
日本・・・・・16%
この受診率の差は、年齢が高くなるにつれ残存歯数に現れていきます。定期検診、メンテナンスを受けている人は、受けてない人に比べて残る歯が多いということです。
日本では30代女性の定期的な検診やメンテナンスの受診率が44%とほかの層よりは高いようです。
しかし、歯科先進国と比較するとまだまだ割合が低いのが現状です。
また、日々のオーラルケアの取り組みにも大きな違いがあります。歯ブラシ以外のオーラルケア用品であるデンタルフロスも併用してセルフケアをしている日本の割合は20.5%であり、スウェーデンの51.6%と比べると倍以上の違いがあります。それだけ予防に対する意識が違うことが挙げられます。
(※ライオン株式会社の調査)

〇歯への意識

歯周病の自覚症状はあるものの、痛みやぐらつきが小さいため、歯周病治療を後回しにされる方も多いと思います。歯科医院への恐怖心や多忙さも大きな理由としてありますが、歯周病は症状が大きくなってからの治療に対する効果は低くなる可能性が高い病気の為、取り返しのつかないことも少なくありません。定期的にかかりつけの歯科医院へ受診することにより、小さな自覚症状でも歯科医院への受診が比較的スムーズに行われることにより、早期発見早期治療による効果が歯周病の進行を大きく防ぐ可能性が高いと思われます。
アメリカでは歯科医院を受診する理由の1位が歯科検診(45.4%)であり、次いで歯周病の予防(37.2%)、治療を目的とする人は12%と言われています。
日本での1位は虫歯などの治療目的(59.1%)であり、検診やメンテナンスの総数は16%であり、歯周病の症状が大きくなってから受診する割合が多いのが現状です。
また歯医者に対する意識の違いも大きな要因です。日本では歯医者が嫌いまたは苦手とされる方がまだ多くいるのが現状です。歯科先進国では幼少期から歯科へ定期的に通院することにより、歯科への苦手意識はなく歯について楽しく学ぶ場所になっているとの報告があります。

〇歯並び

また、歯並びの問題です。歯周病のリスクファクターの大きな要因として歯並びがあります。日本でも歯列矯正を小さいころからされる方も増加しておりますが、まだまだ歯科先進国と比較するとまだまだ低いのが現状です。キレイな歯並びにすることで日々のケアもしやすく、歯周病原細菌の停滞を効率よく防ぐことが可能になります。歯科矯正治療は保険がきかないため、高額になりますが、歯科先進国においては通常の歯周病や虫歯の治療も高額なため、幼少期からの歯科矯正に力を入れていることも考えられます。もちろん審美的な要素も含まれるでしょう。

〇保険制度

日本では国民皆保険制度により歯周病の治療も保険で安く受けることもできます。保険がないまたは保険内であっても費用が高額な国は歯周病になると高額な治療費が必要になるため、歯周病にならないための日々のオーラルケアの意識が高いことがあります。日本では千円単位で行える歯周治療が保険がないと数万円かかってしまいます。治療費が少なく済むことで、その病気に対する意識が減少してしまう恐れがあります。

 まとめ

日本人における歯周疾患は近年やや減少傾向にはあります。また、80歳で20本の歯を有している人の割合も増加しています。しかし、歯肉からの出血や深い歯周ポケットを有している人はまだまだ多く、まだまだ歯周疾患を有している人の割合はまだ高いのが現状です。これからも歯科先進国の国々のようにお口の環境に対する意識を高め、より長くご自身の歯で健康にお食事ができるようにする必要があります。そのためには日々のオーラルケアも非常に大切ですが、定期的な歯科医院でのメンテナンスや歯周病学会認定医/専門医による歯周病に対する検診も重要と思われます。

この記事の監修歯科医師