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《歯牙移植》移植ができる条件
はこれだ

 更新日:2023/03/27

こんにちは日本歯周病学会専門医で有楽町デンタルオフィスの片山です。今回は歯牙移植についてお話しさせて頂きます。
歯を失う原因の多くはう蝕と歯周病です。歯を失ったあとを補うためにブリッジ、義歯、インプラント治療があります。それ以外に今回お話しする歯牙移植があります。

う蝕や歯周病になった歯を抜く基準は歯科医師によってばらつきがあります。しかしできるだけ歯周病治療や歯周組織再生治療、精密な根管治療を受けて保存を試みてもらう必要があります。
しかし、それでも保存が難しく抜歯する場合は親知らずがあれば歯牙移植(歯の移植)が可能な場合があります。
よく歯を抜いた後に歯科医師にインプラント治療を勧められたり説明を受けたりする経験のある方もいらっしゃると思いますが、インプラント治療に勝るものはご自身の歯そのものなのです。奥歯がすでに無くなっている方でも親知らずがあればその歯を移植することで咀嚼能率をあげることが可能です。
また、お子さんで先天的に歯の数が少ない場合なども歯牙移植と矯正治療により、正常な歯列を回復できる場合があります。お子様の先天的歯牙欠損は前歯や小臼歯を中心に認められます。
 
一般的に小児歯科では歯牙移植を推奨しませんが、乳歯から永久歯に生え変わり永久歯の形成が完了前であれば歯牙移植をしても神経や血管までもが残せる可能性のデーターあります。歯牙移植は1950〜60年代よりの臨床報告があり、う蝕におかされた第一大臼歯の抜歯窩に親知らずを移植したり、外傷により脱臼した歯牙の再植、(再度同じ場所に埋め戻す)などが報告されはじめました。当時は、科学的な背景はなく試行錯誤の歴史でしたが、1970年以降研究によって、 自家歯牙移植の生物学的原則および移植によって治るという根拠が確立されました。
 
左のレントゲンの歯は移植後16年経過した歯であり右のレントゲンはインプラントです。
左側のレントゲンで歯と骨のまわりに隙間が空いているのがわかりますか? 天然歯とインプラントの決定的違いは歯の根元を覆う組織である歯根膜の有無です。歯根膜は歯と骨の間にあります。歯は歯根膜からの豊富な血液循環や細菌に対する天然の防御機能を働かせることが可能なので、お口の環境によって柔軟に形や位置を変えながら生体の変化に追随しますが、インプラントにはそれができません。また、歯根膜は感覚圧受容器でもあります。食べ物の歯触りの感じ方が大きく違います。
では実際の歯牙移植のケースを見てみましょう。
 

虫歯で保存が困難な歯

移植ができる親知らず

抜歯した親知らず

抜歯した後の保存できない歯の部位
 

親知らずを歯牙移植した状態
 

移植した状態のレントゲン
 

移植後8年
 
 
このように歯牙移植後8年経っていますが経過良好です。
では歯牙移植の実際の流れについて説明します。
1.自家歯牙移植の適応か否かを診断します。
・ 問診とカウンセリング
・ 口腔内診査、歯周組織検査、歯科用レントゲン撮影
→移植が可能な歯牙があり患者様のご同意があれば歯牙移植手術を行います。
2.歯牙移植手術
・保存不可能な歯の抜歯
・移植歯(親知らず)の抜歯
・歯牙移植、縫合
3.消毒と抜糸
・手術より1週間後に抜糸します。
・手術より約2週間後に移植歯の根管治療
・手術からおおよそ1〜2ヵ月後、噛み合わせを与える。
4.かぶせ物の作製
・2〜3ヵ月、問題なければ最終的な詰め物、被せ物を作製します。
5.メインテナンス
このような流れで歯牙移植を行います。
また、私の患者様では15年以上、歯牙移植した歯が経過良好なケースもあります。
 

虫歯で保存は不可能な左下の奥歯

左下の奥歯を抜歯して左上の奥歯を歯牙移植

16年経過した左下の奥歯
 
 
 
今回は歯牙移植についてお話しさせて頂きました。もし奥歯を抜かなければならない場合に親知らずがあるかどうか、歯の移植ができないかどうかを検討してみてください。

この記事の監修歯科医師