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つらい生理痛、原因や対策を知って少しでもやわらげましょう

 更新日:2023/03/27

この記事の監修ドクター:
白須 宣彦 医師(ホワイトレディースクリニック院長)

 女性の悩み生理痛を徹底解剖

女性の方にとって生理痛はとても不快な症状です。月経とともにほぼ毎月やってくる生理痛は少しでも軽減したいものです。

生理があるときでも快適な日常生活が送れるように、この記事では生理痛について徹底解剖しながら対処方法を探ってまいりたいとおもいます。

 生理のメカニズムから探る生理痛

生理痛とは「生理」という女性の妊娠・出産に関する身体の生理機能が稼働しているときに生じる痛みです。しかし具体的に女性の身体のなかでどのような変化が起こり生理痛という症状が現れているのでしょうか?

生理のメカニズムを探りながら詳しくご説明いたします。

 生理のメカニズム

女性の身体が成熟すると、妊娠・出産のための生理機能が働き始めます。

まず、受精卵が滞在する子宮内では妊娠に向けての環境づくりがおこなわれます。受精卵をしっかりと受け止めて着床しやすくするために、普段はあまり厚みのない子宮の内膜がエストロゲンの働きにより分厚くなります(卵胞期)。

子宮内の準備が整うと卵巣から卵子が子宮に向かって排出されます(排卵)。

それと同時に卵巣には黄体が出来、この黄体からプロゲステロンが分泌されて内膜がふわふわな状態になり、受精卵が着床しやすくなります(黄体期)。しかし、排卵された卵子には約24時間という寿命がありますので、この時間内に受精が成立しなかった場合には卵子は体外に排出され、妊娠しなかった場合には子宮内の状況も一旦フラットな状態に戻されます(生理)。

これを要約すると、ふわふわに分厚くなっていた子宮内膜は不要となった古い細胞としてはがれ落ち、子宮内はもとの状態になってまた一から新しい環境がつくり出されるのです。

このときはがれ落ちた子宮内膜が血液と一緒に体外に出てくる生理現象が、通常「生理」と呼ばれるものです。

 生理に大活躍するふたつの女性ホルモン

前述のような生理のメカニズムにおいては、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」というふたつの女性ホルモンが大活躍しています。

 【エストロゲン(卵胞ホルモン)の作用】

エストロゲンは女性らしい身体を作るホルモンとなっており、生理が終わったあとに分泌量を増やしながら新たな妊娠の準備をし始めます。子宮内への作用として子宮内膜を少しずつ分厚くし、エストロゲンの分泌量が最大量に達すると排卵をうながします。

 【プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用】

プロゲステロンは排卵のあとに分泌されるホルモンとなっており、女性の身体を妊娠と出産に適した環境に整えていく働きをします。

エストロゲンが用意し始めた子宮内の状態をより妊娠に快適な状態にするため、子宮内膜をさらに分厚くさせます。

 生理サイクルと生理期間

生理には「サイクル(周期)」と「期間」があります。

生理サイクルというのは生理が始まった日から次の生理が始まる前日までがひとつのサイクルとなっています。

不要となった古い子宮内膜がはがれ落ちて外に排出される日が生理の初日となりますので、「出血があった日から次の出血がみられる前日まで」というのがひとつの生理サイクルです。

一般的には生理サイクルは28日前後といわれています。ちなみに、排卵は生理の初日から大体14日前後、ちょうど生理サイクルの真ん中辺りでおこなわれます。

そして、この出血の期間を生理期間といいます。この生理期間は、通常3日から7日程度となっています。

 生理痛はいつ起きる?

不要となった子宮内膜が体外に排出されるときの痛みが生理痛となるわけですが、生理前にも生理痛のような痛みが起きる時期があります。

このような痛みは生理が始まる前(黄体期)と、生理期間中に起きる生理痛のふたつに分けられます。

では、このふたつのタイプの生理痛は具体的にいつごろ、どの様な原因で起きるのでしょうか?

 【生理前(黄体期)の生理痛】

生理の3日~14日前ぐらいから生理初日前までの間に起きることがあります。これは、月経前症候群(PMS)と呼ばれています。プロゲステロンの影響が原因と考えられています。生理が始まるとPMSによる不快な症状は消滅していきます。

 【生理中期間の生理痛】

生理が始まる直前から生理期間前半に起きる場合と、生理期間の後半に起きる場合がありますが、いずれも子宮の収縮と炎症が原因となっています。

 女性にとって長いお付き合いとなる生理痛

女性の成長段階において生理が始まる時期(初潮)は大体12歳ころからとなっており、妊娠・出産の機能がだんだん後退して生理が終了する時期(閉経)は50歳前後となっています。

この初潮から閉経までの平均的な年数からみても、約40年近く繰り返し生理の現象と向き合うことになります。そのため、生理の症状のひとつである生理痛とも大変長いお付き合いとなります。

 生理痛にも個体差がある!原因別にみる生理痛

前項で「子宮内膜がはがれ落ち体外へ排出されるときに起きる痛みが生理痛」とご説明いたしましたが、実際の痛みや症状の程度などは人それぞれ異なっています。

何がその生理痛の個体差が生じる原因となっているのか?痛みが起きる仕組みと共に探ってみましょう。

 1:月経困難症による生理痛

生理痛のなかでも、特に日常生活を送る際に何かしら支障をきたしてしまうほど症状がひどい場合を「月経困難症」といいます。月経困難症には子宮の病気との関わりの有無により「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」に分けられます。

 【機能性月経困難症】とは

機能性月経困難症とは、生理が困難になる原因に子宮の病気が関係していないものをいいます。初潮を迎えた時期の10代から20代なかばくらいの女性に多いといわれています。ただし、全く病気に関与していないというわけではないため経過観察等が必要です。

機能性月経困難症による生理痛の主な原因として考えられているのは、プロスタグランジンという物質の影響です。

子宮内では子宮の収縮をおこなって子宮内膜の老廃物を排出するのですが、その際プロスタグランジンというホルモンに似た物質が分泌され子宮の収縮をうながす活躍をします。

この物質が性質的に炎症を起こし痛みを引き起こすことに加えて、プロスタグランジンの分泌量が多くなるとそれだけ収縮も活発になることから痛みが増強するといわれています。

 【器質性月経困難症】とは

こちらは逆に、生理が困難になる原因に子宮の病気が関係しているものをいいます。年齢でいうと20代~40代の方に多いといわれています。

器質性月経困難症に関しては、次の項に詳細を記します。

 2:子宮の病気による生理痛

前述の器質性月経困難症について掘り下げてみましょう。関係しているといわている子宮の病気のうち主に以下の二つの疾患についてご説明します。

 【子宮内膜症】

通常排卵の前から子宮内膜が分厚くなり受精の準備が始められるのですが、この子宮内膜の粘膜組織が骨盤内の臓器、腹膜や卵巣など子宮内部以外の場所にできる場合が子宮内膜症です。

しかし、場所を間違ってしまったとはいえこの粘膜組織は子宮内と同じように生理のサイクルによって女性ホルモンに反応します。

本来なら妊娠がなかった場合は不要な老廃物として体外へ排出されるべきものですが、出口がないのでその場にとどまったままとなっている状態です。

そのため、生理が訪れるたびに炎症を起こしそれが生理痛となって現れます。また、生理痛だけではなく炎症のために卵巣、卵管などが周りの臓器に癒着を起こし、不妊症の原因になったりもします。

 【子宮筋腫】

子宮は筋肉で出来ていますが、子宮の壁にできるコブのような良性の腫瘍のことを子宮筋腫といいます。

女性の子宮の疾患としては発生頻度も高く、子宮筋腫の大きさを問わず大体2~3割の女性が罹患(りかん)しているともいわれています。

この子宮筋腫は子宮のどの部分にできるかによって身体に及ぼす影響が異なりますが、いずれも生理時の子宮の収縮作用の際に子宮内を圧迫したり血液の供給を妨げるなどの弊害により生理痛を引き起こします。

  • 子宮の内膜近く(粘膜下筋腫)にできた場合は、子宮腔内に向かって大きくなっていく傾向があります。こちらは小さなものでも出血や生理痛がひどくなることがあります。
  • 子宮筋腫のなかで、最も多く発生する子宮筋層の真ん中(筋層内筋腫)にできた場合は、筋腫が小さなうちは身体への影響も少ないのですが、大きくなると出血や生理痛が出てくることがあります。
  • 子宮の外側(漿膜下筋腫)にできた場合が大きくなるまで最も症状が出にくいといわれています。しかし、筋腫の根元に茎を伴ってできているものはその茎がまれにねじれることがあり、この場合には激しい痛みが出ますので早急に医療機関への受診が必要です。

 3:自律神経の乱れによる生理痛

自律神経の乱れが生理痛に影響することがあります。

自律神経は緊張の状態にあるときは交感神経が働き、リラックス状態のときは副交感神経が働いています。このふたつの神経がバランスを取ることにより、身体全体の調和が保たれます。

しかし、過度なストレスなどでこの自律神経のバランスが乱れると血行が悪くなってしまいます。

生理は子宮を収縮させて老廃物を排出していますが、血行が悪く排出がスムーズにいかない場合は機能性月経困難症の項でもご説明したプロスタグランジンという物質がやはり大ハッスルします。

このため、過度の子宮収縮が起こり生理痛が引き起こされます。

 4:冷え症による生理痛

生理痛は冷え症によっても引き起こされます。

冷え症の方は体内の血行が悪くなっていますので、自律神経の乱れによる生理痛と同様にプロスタグランジンという物質が多く分泌されることによる影響です。

 生理痛以外にもある?生理に関するさまざまな身体の症状

ここでは、生理が及ぼすさまざまな身体の不快な症状についてまとめてみました。

 こんな症状のときは要注意!

生理時の痛みは仕方がないものと思いがちですが、そんな生理痛も尋常ではない違和感を感じたときには注意が必要です。

「生理痛がどんどんひどくなってくる・激痛が走る・痛みで起き上がれない」など、このようなケースでは前述にあった器質性月経困難症である場合が疑われるため早急に医療機関へ受診しましょう。

また、生理期間以外に出血や痛みがある場合も同じ対応が必要です。

 頭痛

生理中に起きる頭痛に関してあまり生理との関係を気にしない方も多いと思いますが、実は生理による影響の場合もあります。

妊娠・出産に活躍する女性ホルモンのひとつであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が生理前に一気に減少する際に、セロトニンという脳内にある物質も一緒に減少します。

セロトニンの役割として痛みを抑える働きがあるため、この物質が減少することにより脳内が痛みに敏感になります。

また、脳の血管の収縮作用をコントロールする役目もありますので、生理のときには頭痛が起きやすいということです。

このときの痛みは身体の動きによって痛みが強まったり、ズキズキと痛む感じがあります。

 腹痛・腰痛

生理痛において一般的な症状が腹痛や腰痛などの子宮周りの痛みです。主に生理直前や生理期間中に起こります。

これは子宮の収縮作用により現れるものが多く、下腹部に鈍痛があったりお腹が張るような痛み・チクチクするような痛みなどさまざまな痛みの症状があります。

 イライラ

生理前の黄体期に起こる月経前症候群(PMS)のときの症状としてよくしられています。

はっきりとした原因は解明されていませんが、生理前にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)というふたつの女性ホルモンが上昇することによって、脳内の神経の伝達がうまくいかなくなって不安定な精神症状がでるのではないかと考えられています。

 生理痛を和らげる効果的な方法をご紹介!

毎月のことながら毎回つらい生理痛。一刻も早く解消したいものですよね。

ここからは生理痛を和らげる効果的な方法をご紹介します。すぐに対応できるものから始めてみてはいかがでしょうか?

 西洋薬

生理痛の独特の痛みの軽減には、やはり内服薬の服用が挙げられます。痛みが強くなる前に早めに服用することがポイントです。西洋薬の生理痛のお薬としては、下記のような成分が入ったものが主流となっています。

  • ・イブプロフェン…生理痛の痛みのもととなる物質「プロスタグランジン」が過剰に分泌されるのを抑える作用があります。
  • ・ブチルスコポラミン臭化物…子宮や腸内の過敏になった収縮作用を抑えます。

 漢方薬

生理のつらい症状を体質を整えながら改善していくときに効果的です。

漢方薬は体質や症状によって適切なお薬が異なりますので、漢方の専門家の指示を仰ぐとよいでしょう。ここでは、生理痛の対応としてよく処方されるものについて一例をご紹介します。

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…生理痛における下腹部痛
  • 薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)…生理痛における腹痛
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)…月経困難や月経前症候群(PMS)のときの精神不安

 温めて血行を改善する

生理痛の原因のなかでも非常に多くみられるのが子宮周りの血行不良です。血行不良を改善するためには温めることが大切です。

 【温める方法】

簡易カイロや湯たんぽ・ホットタオルなどを利用します。身体のデリケートな部分を温めますので、やけどや低温やけどへの配慮が必要です。湯たんぽはタオルなどでくるみましょう。簡易カイロは直接地肌に当たらないように注意します。

 【温める場所】

  • おへその下部…おへその下部は子宮に近いということと、ホルモンバランスに関係しているツボが集まっているところです。ここを温めることによって、血流の改善とリラックス効果が得られます。
  • ふくらはぎ…ふくらはぎの中には動脈が2本通っていますので、ふくらはぎを温めることにより温かな血液がスムーズに身体を流れるようになります。身体全身の血流がよくなることにより、子宮周りの血行不良も改善されます。
  • 腰部…腰のすぐ下にある仙骨という骨の周りにを温めると骨盤全体が温まりますので、骨盤内の血流の改善にもなります。

 生活習慣を改善して生理痛の緩和を目指す!

生理痛には自律神経の乱れや冷え症などの密接な関係もうたわれています。これらは、生活習慣を改善することで対応することもできます。下記に二通りの方法をご紹介いたします。

 【運動】

  • 骨盤周りのストレッチ…仁王立ちしてゆっくりと腰を回します。右に5回・左に5回を1セットとし、1日に数回時間を空けておこなうとよいでしょう。骨盤周りの筋肉の緊張が和らぐと共に、血流がよくなり生理痛の緩和につながります。
  • ウォーキング…ゆっくりと無理のないペースで1日30分程度歩くことで、身体が温まり全身の血流がよくなります。

 【アロマテラピー】

自律神経の乱れを整える方法として、アロマオイルを使用するということもひとつのポイントです。

自分の好きな香りによりリラックス効果が現れて穏やかな気持ちになり自律神経が落ち着いてきます。

また、アロマオイルのなかには、イライラを抑制するようなタイプのものもありますので、そのときの状況に合ったものを選ぶとよいでしょう。

 まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は生理のメカニズムを理解した上で不快な生理痛と向き合い、効果的な対処方法を見つけていきました。

この記事を参考にして、是非今の状況に合った対処方法にチャレンジして生理痛を乗り切っていきましょう!

白須 宣彦 医師 ホワイトレディースクリニック 院長監修ドクターのコメント

生理痛を和らげる方法は、本文中でもいくつか紹介されましたが、機能的月経困難症、器質的月経困難症及びPMS症状にも効果のある方法として低用量ピル(OC及びLEP)が今、推奨されております。今現在器質的に問題が無いように思われる人であっても、生理痛の強い方は将来子宮内膜症になる可能性が高いと言われています。子宮内膜症は本文でも述べましたが、不妊の原因にもつながると考えられているので、将来のことも考えると早めに対処することが勧められています。ぜひ婦人科の医師に相談してみてください。受診したからといって必ず内診するわけではありません。

 

監修ドクター:白須 宣彦 医師 ホワイトレディースクリニック 院長

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