失明リスクが下がる加齢黄斑変性の手術法
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失明リスクが下がる加齢黄斑変性の手術法 2017.11.17

加齢黄斑変性とは、年齢を重ねるにつれて網膜色素上皮の下に老廃物が溜まったり、不良な新生血管ができて出血したりしておこる黄斑部の不具合です。視力が低下し、ものが見えにくくなったり歪んで見えたりします。欧米成人の失明原因第1位です。日本でも、高齢化と生活の欧米化により近年患者が激増し、失明原因の第4位となっています。高齢になるほど患者が多く、50歳以上の人の約1%にみられます。しかし、近年新たに治療法が開発され、多くの患者の視力維持や改善に成果をあげています。そんな加齢黄斑変性の手術について、Medical DOC編集部がお届けします。

手術が不要な場合もある加齢黄斑変性の概要

なぜ起こるの?「黄斑」とはどこのこと?

人間の眼は、瞳孔を通って外からの光が入り、水晶体や硝子通り抜けて網膜にあたり、網膜で光が電気信号に変換され脳に伝えられ、物を見ることができます。網膜は光を受け取る非常に重要な機関です。その中央にある「黄斑」は直径1.5mm~2mm程度。黄斑の真ん中は中心窩と呼ばれ、ちょうど見ているところの光が当たる部位です。

加齢黄斑変性は、その黄斑の下に加齢による老廃物が溜まったり、異常な新生血管が発生したりすることでおこる病気です。男性は女性の約3倍の発症率といわれています。網膜の中心である黄斑ではきちんと視力がでますが、それ以外では正常な目でも十分な視力がでません。網膜に異常がなくても黄斑に傷がつくと視力がとても下がります。網膜の下には網膜色素上皮があり、その下に脈絡膜という血管の多い組織があります。網膜が正しく働くためには網膜色素上皮や脈絡膜が正しく働く必要があります。 手術が必要なものと急いで手術をする必要がないものがあります。

全身疾患(心血管疾患や高血圧)、喫煙、栄養状態、遺伝との関係も研究中です。もともと加齢黄斑変性は、欧米人に多い疾患でした。その理由としては、欧米人の眼が日本人の眼に比べて光刺激に弱いことが挙げられます。生活スタイルや食生活の欧米化、平均寿命の延長、TVやパソコンからの光刺激などが原因で近年は日本でも加齢黄斑変性症が増加しています。

加齢性黄斑変性の種類と手術前の検査の種類

加齢黄斑変性の症状と種類

加齢黄斑変性になると、ものが歪んで見える変視症や、色の区別がつきにくい色覚異常、見ているものの中心が暗く見えたり欠けてしまい見えなかったりする中心暗点、視力低下で見たいものがはっきり見えない、といったことがおこります。加齢黄斑変性には下記の2種類があります。

滲出型加齢黄斑変性(しんしゅつがたかれいおうはんへんせい)

網膜のすぐ下に、正常ではない非常にもろい新しい血管(新生血管)ができます。新生血管からは、血液成分(滲出液)がもれ出て溜まったり、血管が破れて血がでたりします。この血管から出た液体が黄斑の組織にダメージを与えて、視覚障害を引きおこします。病状の進行が早く、急激な視力低下がおこります。一日も早く検査と治療をおこなうことが大切です。

萎縮型黄斑変性

加齢によって網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に老廃物が溜まり、網膜組織がだんだんと萎縮します。症状はゆっくり進行し、急激に視力が低下することはありません。現状で治療は必要ありませんが、新生血管が発生して「滲出型」に移行する危険性があります。急激に視力が低下させないよう、定期的な通院と検診が必要です。

手術の前におこなわれる各種検査

検査の際はまず、症状、家族の病歴、現在治療中の病気や喫煙歴などを問診できかれます。視力検査のあと、各種検査へとうつります。自分でもできる簡単な検査にアムスラーチャートがあります。
格子の中にある点を片目ずつで見て、点を含む中央のあたりが歪んで見えたり、部分的に欠けて見えたりすると、加齢黄斑変性の疑いがあります。

眼底検査

眼底にある網膜の状態を調べます。瞳孔の奥にある網膜を見るために、点眼薬で散瞳する場合もあります。検眼鏡を使用して直接眼底を観察する方法と写真に撮って記録する方法があります。

網膜断層検査

光干渉断層計(OCT)という機械で網膜の断面を調べます。網膜のむくみや脈絡膜新生血管の状態を観察できます。

蛍光眼底造影

腕の静脈に造影剤を注射し、眼底カメラで網膜や脈絡膜にある新生血管やもれ出てくる水分(滲出液)を観察し、症状を確認します。検査はフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)とインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)の2種類があります。

加齢黄斑変性の手術・治療法

抗VEGF療法

眼の中にはVEGF(血管内皮増殖因子)という新生血管を成長させたり血液成分をもれやすくしたりする物質があります。VEGFのはたらきを抑えるために硝子体内に薬剤を注射し、新生血管の増殖や成長を沈静化したり血液成分のもれを抑えたりする手術法です。

光線力学的療法(PDT)

光に反応する薬剤(光感受性物質)のベルテポルフィリン(ビスダイン)を静脈に注射すると、ビスダインは新生血管に集まります。その病変部に弱いレーザーを約1分半照射します。

レーザーにより薬剤が活性化され化学変化を起こして活性酸素が発生、その働きで血管の壁が傷つき閉じます。その結果、異常血管からの出血が止まります。このレーザーは新生血管以外の正常な網膜や脈絡膜にはほとんど影響を与えません。治療後は3ヵ月ごとに検査をおこない、その結果により必要に応じて再度治療をおこないます。継続性が必要な治療法です。

レーザー光凝固術

新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。安全な治療法ですが、正常な周囲の組織にもダメージを与えるので、新生血管が中心窩より外にある場合のみにおこなわれます。

出血多量の場合や中心窩にある新生血管に対しては、それら除去する手術である、硝子体切除術をおこなうこともあります。

バランスのいい食事と定期健診で手術は不要

少し前までは、視覚障害の原因となり治療法のなかった加齢黄斑変性ですが、今では早めの治療で視力を失わずに済みます。

ただ、治療後の視力は病状の進行度によりさまざまです。黄斑でも特に重要な中心窩が侵されている場合はやはり視力低下は避けられません。それに、加齢黄斑変性と診断を受けた4割程度の人は、時間がたてば両眼に発症する可能性があります。現在は良い眼でも、定期的に健診を受けましょう。早期発見早期治療がいい結果を生むことは間違いありません。

また、亜鉛不足だと加齢黄斑変性になる確率があがるそうです。高齢になると穀類、貝類、根菜類など亜鉛を含む食品の摂取量が少なくなり、腸の吸収力が低下することから亜鉛が不足しがちです。手術法があるからと安心しきってしまわずに、食生活や喫煙に気をつけて規則正しい生活を送り、新生血管発生の予防を心がけましょう。