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劇症肝炎の症状・原因・治療方法についてご案内 2018.06.29

劇症肝炎(読み方:げきしょうかんえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長

劇症肝炎とは

わが国では、劇症肝炎は、“初発症状出現後8週以内に昏睡II度以上の肝性脳症をきたし、プロトロンビン時間が40%以下に低下する肝炎”と定義されています。
10日以内に脳症が出現する急性型とそれ以降にみられる亜急性型に分類されています。また、肝性脳症はみられないが、プロトロンビン時間が40%以下に低下する場合は、重症肝炎と診断されます。
劇症肝炎の生命予後は極めて不良で、救命率は、急性型で約40%、亜急性型で20~30%と報告されています。

引用:岐阜大学医学部附属病院 肝疾患診療支援センター
https://hosp.gifu-u.ac.jp/html/disease/disease02.html

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
劇症肝炎とは、肝臓の細胞が何らかの原因で急激に破壊されることをいい、急性肝炎の中でも重症で、意識障害(肝性脳症)を伴うものをいいます。生命予後の非常に悪い病気で、急性期では40%程度の救命率といわれています。最初の症状から、肝性脳症が現れるまでの期間が10日以内の場合(急性型)と11日以降の場合(亜急性型)に分類され、経過は急性型の方が良好です。

劇症肝炎の症状

特徴的な臨床像は,精神状態の変化(通常は門脈大循環性脳症の一部),出血,紫斑,黄疸( 黄疸),腹水( 腹水)である。その他の症状は非特異的なもの(例,倦怠感,食欲不振)か,あるいは原因となった障害の結果である。肝性口臭(かび臭い,または甘い口臭)と運動機能不全がよくみられる。頻脈,頻呼吸,低血圧がみられ,敗血症を伴うこともある。脳浮腫の徴候には,昏睡を含む意識障害,徐脈,高血圧などがある。感染症のある患者では,ときに局所症状(例,咳嗽,排尿困難)がみられることもあるが,無症状の場合もある。

引用:MSDマニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/02-肝胆道疾患/肝疾患を有する患者へのアプローチ/急性肝不全

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長ドクターの解説
劇症肝炎の初期症状では、通常の肝炎のように、感冒症状や、倦怠感、食欲不振などが現れ、徐々に皮膚や白目、尿が黄色くなる黄疸が現れます。劇症肝炎の症状は、肝臓の機能不全によるものが多いです。
肝臓の機能は、
①代謝:吸収した糖・たんぱく質・脂肪を貯蔵し、必要なときにエネルギーとして供給する。
②解毒:アンモニアやアルコール、薬などを分解し無毒化する。
③胆汁の生成・分泌:脂肪の消化吸収を助ける消化液でもある胆汁を生成する
④凝固因子の生成:血液を出血した際に固まりやすくする凝固因子を生成する。
などがあります。
劇症肝炎では、肝臓の細胞が破壊されることで
③胆汁の生成ができなくなり、原料であるビリルビンが血液中に増加し白目や肌が黄色になる「黄疸」が出現する
②アンモニアなどの解毒ができなくなり、意識が朦朧としたりする「肝性脳症」などが起こる。
①、④代謝不全や凝固因子の欠乏により、急激に多臓器不全(腎不全、DICなど)をおこす。
ということが同時に進行していきます。

劇症肝炎の原因

劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などが原因で起こります。わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めています。これには、B型肝炎ウイルスのキャリアが発症する場合と、キャリアから性交渉などを介して感染して発症する場合とがあります。A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染もその頻度はわずかですが劇症肝炎になる場合があります。
B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、成因が確定できないもので、全体の約30%を占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定したものは、何れも10%以下を占めるに過ぎません。しかし、成因の確定できない患者さんには、未知の肝炎ウイルスが感染して起こる場合以外に、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因のものが含まれている可能性があり、その実態を解明することが今後の課題です。また、A型やB型肝炎ウイルスが原因の場合には、急性肝炎と原因が同じなのにもかかわらず、なぜ一部の人で重症化して劇症肝炎になるのかは、わかっていません。

引用:厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」
http://www.hepatobiliary.jp/modules/disease/index.php?content_id=7

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
原因として、特にB型肝炎などのウイルス感染(最近ではB型肝炎のキャリア(既感染の方)が免疫抑制剤などにより発症する場合も報告されています。)や薬剤性が挙げられますが、実際には原因がはっきりしない場合も多い疾患です。

劇症肝炎の検査法

原因診断は、基本的には急性肝炎とほぼ同じですが、B型肝炎の診断には注意が必要です。
B型肝炎の診断には、通常、血清HBs抗原を測定しますが、正確な診断にはIgM型HBc抗体の測定が必要です。なぜならば、劇症肝炎の場合、免疫反応が強いため、急激なウイルス排除の結果、HBs抗原やHBV DNAがすでに血中から消失している場合がみられるからです。
肝萎縮の診断に超音波検査やCT検査が、予備能の測定にRI検査が用いられます。また、肝性脳症の診断に脳波が有用な場合があります。

引用:岐阜大学医学部附属病院 肝疾患診療支援センター
https://hosp.gifu-u.ac.jp/html/disease/disease02.html

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
血液生化学検査では、肝機能検査、腎機能検査、血液凝固検査が行われ、肝臓で合成される蛋白質(凝固因子も含む)や脂質の状態を反映する検査項目も重要な検査項目になります。

劇症肝炎の治療方法

B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、エンテカビルなどの核酸アナログ製剤やインターフェロンを用いた抗ウイルス療法が最も有効です。また、自己免疫性肝炎や薬物アレルギーが原因の場合は副腎皮質ステロイドを大量に点滴静注する治療を行います。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。
劇症肝炎となった場合には、原因の如何にかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法を行って、身体に必要な物質を補充し、有害な物質を取り除きます。この治療法には、患者さんの血液から血球以外の成分(血漿)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する方法(血漿交換)と、腎臓が悪い患者さんで行われている血液透析を応用した方法(血液濾過透析)があります。通常は両方が併用されます。また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療を行う必要があります。これらの治療により肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命することが可能です。
しかし、劇症肝炎ではこのような治療によっても肝臓の機能が回復しないことがあり、その際は肝移植を行うことになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合(生体部分肝移植)がありますが、わが国では生体部分肝移植が広く行われております。従来、生体部分肝移植は主に小児に行われておりましたが、最近では成人でも積極的に行われるようになりました。なお、平成22年には法律の改正で脳死肝移植の実施数が増えており、劇症肝炎の患者さんも脳死肝移植を受けることが多くなっています。

引用:厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」
http://www.hepatobiliary.jp/modules/disease/index.php?content_id=7

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
劇症肝炎の治療は下記の①、②、③を並行して行っていきます。
①原因がはっきりしていれば原因の治療(B型肝炎であれば、B型肝炎の治療、薬剤性であればその中止と免疫抑制剤の投与など)を行います。
②血漿交換療法や持続的血液ろ過透析などで肝臓の機能を補う補助療法(血液中の有害物質を取り除き、凝固因子など必要な物質を補充すること)を行い、急性期を乗り切ることが大切です。
③全身の臓器障害をそのつど迅速に治療を行う必要があります。急性期を乗り越え、肝臓の機能が回復してくることを期待します。ただし、回復しない場合、可能であれば肝移植などを行う場合もありますが、予後の非常に悪い疾患です。


この記事の監修ドクター

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長

PROFILE

平成19年 北里大学医学部医学科卒業。平成19年 北里大学医学部医学科卒業。国際親善総合病院にて初期研修後、慶應義塾大学一般・消化器外科教室入室。平成21年 稲城市立病院 外科。平成22年 平塚市民病院 外科。平成23年 慶應義塾大学病院 一般・消化器外科。平成27年6月 厚木胃腸科医院院長。日本消化器内視鏡専門医。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。日本禁煙学会認定指導医。