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性同一性障害の症状・原因・治療方法についてご案内 2018.02.16

性同一性障害(せいどういつせいしょうがい)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
針間 克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長

性同一性障害とは

性別といえば、男性か女性の2種類に分かれると多くの人たちは単純に考えます。しかし、性別には生物学的な性別(sex)と、自分の性別をどのように意識するのかという2つの側面があります。性別の自己意識あるいは自己認知をジェンダー・アイデンティティ(gender identity)といいます。
多くの場合は生物学的性別と自らの性別に対する認知であるジェンダー・アイデンティティは一致しているため、性別にこのような2つの側面があることには気づきません。しかし、一部の人ではこの両者が一致しない場合があるのです。そのような場合を「性同一性障害」といいます。
つまり、性同一性障害とは、「生物学的性別(sex)と性別に対する自己意識あるいは自己認知(gender identity)が一致しない状態である」と、定義することができます。

引用:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_gender.html

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長監修ドクターのコメント
定義は上記の通りです。あえて言うなら、現在性同一性障害という病名は、性別違和という名称に変わってきています。

性同一性障害の症状

性同一性障害を有する人にみられる症状は、「自らの生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しない状態」から生じるものです。しかも、生物学的性別をジェンダーに近づけたいという願望からくる症状として、理解することができます。
1. 自らの性別を嫌悪あるいは忌避する
自分の性器が間違っている、成人になれば反対の性器を持つようになるであろうなどと主張したり、自分の性器はなかったらよかったのにと考えることもあります。
また、2次性徴期には、男性では声変わりがしたり、喉仏が目立ったり、肩幅が広く、筋肉が張ってくる、陰茎が大きくなるなど、女性では体つきが丸みを帯び、月経が発来したり、乳房が膨らむなどの変化が起こります。こうした男らしい、あるいは女らしい体つきになることに対する嫌悪感や忌避の気持ちが強くなります。
そのために、すね毛をそったり、乳房を晒しで巻き、ふくらみを隠そうとしたりします。これらの症状は、自らのジェンダーにふさわしくない身体症状を嫌悪し、忌避することからくるものです。
2. 反対の性別に対する強く、持続的な同一感を抱く
自分の存在そのものを、自らのジェンダーと同一化したいと願い、反対の性別になりたいと強く望みます。そのために、反対の性別の服装(異性装)をしたり、反対の性別としての遊びを好みます。
男の子の場合、女の子の遊びを好んだり、女の子の服装をしたいと望みます。また、女の子の場合には、男の子のような活発な遊びを好みます。これは、自らのジェンダーにあった生活や遊びをすることが自分の気持ちにしっくりするためです。
3. 反対の性別としての性別役割を果たそうとする
日常生活の中でも反対の性別として行動したり、義務を果たしたり、家庭や職場、社会的人間関係でも、反対の性別として役割を果たそうとします。また、言葉遣いや身のこなしなど、様々な点で、反対の性別として役割を演じることを希望し、実際そのように実行します。

引用:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_gender.html

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長ドクターの解説
例えば男性の場合、自身の男性の体に嫌悪感を抱き女性の体になりたい、あるいは周りから男性として扱われることが嫌で女性として扱ってほしいといった、社会的にも身体的にも反対の性別で生きていきたいと思うようになります。

性同一性障害の原因

身体の性との脳の性の不一致という観点から、性同一性障害/性別違和の発症原因には生物学的背景があると予想されていますが、傍証はあるものの直接の原因や発症機序は未だ不明です。

引用:岡山大学大学院 精神神経病態学教室
http://psychiatry.ccsv.okayama-u.ac.jp/research/group05.html

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長ドクターの解説
原因に関しては今のところはっきりしたことはわかっておりませんが、先天的(生まれつき)に脳の性別が男性的もしくは女性的な傾向で生まれてくるのではないかと考えられています。また、性の自己意識(心の中の性別)は、生まれながらの傾向と育っていく中での環境が相互に関係はしてきますが、「このように育てたから、この病気になる」と言った後天的なものではありません。

性同一性障害の検査法

(1)ジェンダー・アイデンティティの判定
詳細な養育歴・生活史・性行動歴について聴取する。DSM-Ⅳ-TR や ICD-10 を参考にしながら性別違和の実態を明らかにする。 診察の期間については特に定めないが、診断に必要な詳細な情報が得られるまで行う。
(2)身体的性別の判定
身体的性別の判定は原則として、MTF は泌尿器科医、FTM は婦人科医により実施される。 身体的性別に関する異常の有無が総合的にみて判定できれば良い。
(3)除外診断
統合失調症などの精神障害によって、本来のジェンダー・アイデンティティを否認したり、 性別適合手術を求めたりするものではないこと、反対の性別を求める主たる理由が、 文化的社会的理由による性役割の忌避やもっぱら職業的利得を得るためではないことを確認する。 ただし、統合失調症等他の精神疾患に罹患していることをもって、画一的に治療から排除するものではない。 症例ごとに病識を含めた症状の安定度と現実検討力など適応能力を含めて、慎重に検討すべきである。
(4)診断の確定
以上の点を総合して、身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないことが明らかであれば、これを性同一性障害と診断する。 性分化疾患( 性染色体異常など)が認められるケースであっても、身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致していない場合、 これらを広く性同一性障害の一部として認める。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=87

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長監修ドクターのコメント
この病気に関しては、血液検査やCT等のような画像の検査でわかるようなものではありません。逆に、体のほうには、はっきりとした異常がないにもかかわらず、そのように(生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが不一致のように)思うといったことがひとつの診断基準となります。実際に診断する際は、精神科医がご本人から話を丁寧かつ詳しくお聞きすることが大切です。
子供の場合は、両親が薦めて受診することもありますが、思春期ぐらいの方からは、自ら性別を変えたい(自身と反対の望みの性別で生活したい、そう言ったように体を変えたい)と受診される方がほとんどです。
カウンセリングでは、詳しく今までのことを聞いていかなければいけないので、数か月かけて(何回かに分けて)行う必要があります。そういった気持ちが、一時的なものではなくずっと続いているということを確認する必要があります。

性同一性障害の治療方法

治療は、精神科領域の治療(精神的サポート)と身体的治療(ホルモン療法とFTM における乳房切除術、性別適合手術)で構成される。 治療は画一的にこの治療の全てを受けなければならないというものではない。 身体的治療については、治療に関する十分な理解を前提としたうえで、自己の責任において、 どのような治療をどのような順番で受けるかを自己決定することができる。ただし、診断の手続きと精神科領域の治療を省略することはできない。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=87

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長監修ドクターのコメント
あまり症状が強くない方(自分の性別をどのようにすれば良いかよくわからないといったふうに悩んでいる方、生物学的性別と心の中の性別の違いに対して、違和感がそれほど強くない方等)は、今の状態のままでいいと症状が落ち着くこともあります。しかし、違和感が強い人の場合には、心の中の性別が元に戻ることはありません。例えば、体が男性でも心の中の性別が女性ということを強く思っているのであれば、女性として生きていったほうが精神的にもよいということになります。
投薬によってこの症状を治療する(精神科的なお薬を投与するといったこと)といったことはないのですが、ホルモン療法で男性になりたい方に男性ホルモン、女性になりたい方に女性ホルモンを投与して行くことで体を変えていくということは行います。
ただし、症状があまりにつらくて、眠れないとか、不安だとか、気分が憂鬱等といった場合には、その症状に対してお薬を出すことはあります。
こういった症状をお持ちの方でも、病院を受診されていない方もおられます。例えば、親や家族の方が性別を変えることを反対されているといった場合などです。ただ、そのまま放置されると、本人の悩みや苦しみがさらに続き、自傷行為(リストカット等)や自殺未遂、もしくは実際に自殺される場合もあるので、実際に体の治療をするかはともかく、周りに相談できる人がいれば、相談されたほうがいいと思います。最終的には医療機関の受診が望ましいです。


この記事の監修ドクター

針間克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長針間 克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長

PROFILE

●プロフィール
1990年 東京大学医学部医学科卒業
1990年 東京大学医学部付属病院精神神経科入局
1991年 東京都立松沢病院にて研修
1992年 東京大学医学部大学院進学
1996年 東京大学医学部大学院卒業
1996年 鶴が丘病院勤務
1997年 東京家庭裁判所医務室勤務
2005年 東京武蔵野病院勤務
2008年 はりまメンタルクリニック開院
●資格
精神保健指定医
医学博士
●学会
日本精神神経学会 性同一性障害に関する委員会委員
日本性科学会幹事長
GID学会理事
●著書
・単著
『性非行少年の心理療法』
『一人ひとりの性を大切にして生きる―インターセックス、性同一性障害、同性愛、性暴力への視点』
・訳著
『がん患者の〈幸せな性〉―あなたとパートナーのために』
『私たちの仲間―結合双生児と多様な身体の未来』
・共著
『性同一性障害30人のカミングアウト』
『性同一性障害って何?―一人一人の性のありようを大切にするために』
『性同一性障害と戸籍―性別変更と特例法を考える』