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強迫神経症(強迫性障害)の症状・原因とは?

 更新日:2023/03/27

強迫神経症(読み方:きょうはくしんけいしょう、別名:強迫性障害)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
野本裕子 医師(医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長)

強迫神経症(強迫性障害)とは

強迫症/強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder:OCD)は、かつては強迫神経症と呼ばれていました。OCDは不安障害という病気の一つに分類され、その症状にはトイレに行くたび、自分が汚れてしまったと感じ、長い時間をかけて手洗いを行う、玄関のドアを閉めたかどうか不安になり何度も確かめないといられなくなるなどさまざまなものがあります。

引用:OCD研究会
http://ocd-net.jp/whats/

野本裕子 医師 医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長ドクターの解説
強迫神経症は主にセロトニンなどの脳内にある神経伝達物質の調節障害により情報伝達がスムーズに行われなくなることによって発症する病気と考えられます。強迫観念によって引き起こされるさまざまな症状がありますが、例えば、汚れが気になって何度も手を洗うといったものが挙げられます。これは実際にはそれほど汚れていなかったり、既に綺麗に洗ったのにまだ汚れているような気がしてさらに洗う、洗うのをなかなかやめられないといった形でエスカレートしていきます(強迫行為)。他には戸締まりが気になって何度も同じところを確認し直すといった症状などもあります。この病気は男女や年齢に関わらず誰もがかかり得る病気ですが、早い年齢で発症する場合も多く、小児期から症状が始まり、家族に付き添われて来院するケースも少なくありません。

強迫神経症(強迫性障害)の症状

OCDの症状は、「強迫症状」と呼ばれ、次の2つがあります。

強迫観念:不適切な考えが繰り返し頭に思い浮かび、ふり払おうとしても頭にこびりついてしまって、なかなか消し去ることができず、強い苦痛や不安をもたらします。

強迫行為:強迫観念の衝動に従って、苦痛や不安を打ち消すために行われます。 何度洗っても汚れが残っているような気がして、延々と洗い続けてしまう、鍵がちゃんとかかっているのか何度も何度も確認してしまうような繰り返しがみられます。

引用:OCD研究会
http://ocd-net.jp/whats/02.html

野本裕子 医師 医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長ドクターの解説
強迫神経症の主な症状は強迫行為ですが、一番の問題は患者さん自身の日常生活に支障をきたすことです。例えば手を洗うといった強迫行為も、1度や2度なら大きな問題になりませんが、繰り返し行なわれると時間が取られてしまい、しかもそれを止めることがなかなかできません。また、戸締まりをしたのに気になって何度もやり直すことで、予定の時間に出かけられなくなるといったことも起こります。強迫神経症になると、強迫行為によって時間に遅れたり、約束を守れなかったり、外出そのものができなくなるといったことが起こります。自分自身の日常が上手く回らなくなるだけでなく円満な人間関係や社会生活が営めなくなる危険性があり、その点も深刻な問題です。その結果、ストレスが過剰となり精神的に追い込まれることで症状が悪化する場合もあります。

強迫神経症(強迫性障害)の原因

原因としてはセロトニンという神経伝達物質の調節障害という考えが有力ですが、ドパミンをはじめとする他の神経伝達物質の関与も考えられています。脳の特異的部位の機能障害も関係していると考えられており、最近の画像検査では、脳の前頭葉、大脳基底核や帯状回という部分の活動性の異常も原因として指摘されています。

引用:人形町メンタルクリニック
http://www.cocoro-support.com/Obsessive_Compulsive_Disorder.html#faq1

野本裕子 医師 医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長ドクターの解説
強迫神経症の主な原因はセロトニンなどの神経伝達物質の調節障害ですが、生活習慣や食生活の乱れ、ストレスなどの影響によってセロトニンの合成が円滑でないことも、調節障害を引き起こす理由として考えられます。

強迫神経症(強迫性障害)の検査法

強迫症の診断は、症状(強迫観念、強迫行為、またはこれら両方)に基づいて下されます。強迫観念や強迫行為は、時間がかかるもので、多大な苦痛を引き起こし、その人が本来の役割を果たす能力に支障をきたすものでなければなりません。

引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/強迫症および関連症群/強迫症-(ocd)

野本裕子 医師 医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長ドクターの解説
強迫神経症は体調の不具合とは異なり、強迫行為によって現れるため、初期は単なる神経質な行動と区別がつきにくいのが特徴です。明らかに症状が顕著になり、病気を疑って来院するケースが見られます。また、本人だけでなく周囲が異変に気づき、指摘されて来院するケースもあります。強迫行動がどの程度になると強迫神経症になるかは本人の性質や症状によっても異なりますが、本人や家族などが困っており、また日常生活に支障をきたすほどであることがひとつの目安になります。ただし患者自身や周りでは判断できないため、異変を感じたら早めに来院し、医師の診断を仰ぐことをおすすめします。

強迫神経症(強迫性障害)の治療方法

強迫症の主要な治療は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を主とした薬物、および認知行動療法(CBT)です。さらに病気自体や治療、対処法などについて、患者さんや家族に十分な理解を促す心理教育は、治療的動機づけを高め、周囲からの一貫した支持を得て安定的治療環境を築く上で重要です。患者さん個々の治療は、症状の特性や精神病理、併存症、治療的動機づけの程度、身体状態などを考慮し選択する必要があります。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=22

野本裕子 医師 医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長ドクターの解説
強迫神経症の治療方法として薬物療法と行動療法が一般的ですが、薬物によって劇的に回復するというわけではありません。この病気の原因となっている神経伝達物質であるセロトニンをスムーズに合成できるようになるためには、セロトニン単体だけではなく脳内のホルモン全体のバランスを整えることが大切です。本来、セロトニンだけがアンバランスであるということは考えられず、さまざまな物質が影響し合っているため、ホルモン全体の状態を改善することで、セロトニンの分泌を円滑にすることにも繋がります。ホルモンバランスの乱れはライフスタイルによって大きく左右されるので、薬物以上に生活習慣の改善も強迫神経症の治療には有効です。脳神経系に存在するセロトニンは偏った食事以外に睡眠不足や環境から来るストレスなどが原因で不足することもあるため、食生活を中心に生活全体の改善をおこなって、ホルモンをバランスのとれた状態に導くことで強迫神経症の症状を和らげることができます。強迫神経症は病気自体より、それによって引き起こされる日常生活への影響が大きい病気です。日常生活や会社・学校など集団生活に支障をきたす場合もあるので、周囲に病気であることを理解してもらうことで、精神的な負担は大きく減ります。そのためにも医師の診断を受け、患者自身も周囲も、病気であることを認識することが大切だと言えるでしょう。来院してすぐ治るという病気ではなく、治療にはある程度の時間がかかります。

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