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【川嶋朗先生】日本人の体温は0.8℃も下がった!? 現代病「冷え」はこんなにも危険! 2018.11.08

日本人の体温は、昔と比べて下がっている!? 日本の大学としては初めてとなる統合医療の先駆者、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗医師は、「冷えはうつ病や糖尿病、がんにまで関係する『万病のもと』だ」と主張する。この60年の間に生じた0.8℃という差は、現代の私たちにどう関係してくるのだろう。



監修ドクタープロフィール:
川嶋 朗(かわしま・あきら)

昭和58年 北海道大学医学部卒業、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所自然医療部門准教授を経て、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授(現職)。専門は自然医療全般、内科(腎臓病、膠原病、高血圧)。

冷えはなぜ悪いのか? 万病のもとと言われる理由は?

川嶋 朗医師

編集部『冷えは万病のもと』ということですが、体が冷えると、どのような症状が起きるのですか?
川嶋先生感染症、がん、うつ病、糖尿病など、代謝に関わる問題すべてに影響します。
例えば、免疫細胞が病原体のところまで届かないと感染症にかかりやすくなりますし、がんもできやすくなります。また、脳内のセロトニンという神経伝達物質は脳で作られます。このセロトニンが不足すると、うつ病になる可能性もあります。
ほか、各種ホルモンはわずかな量でも重要な働きをするので、女性ホルモンの合成が悪くなれば生理不順を招き、インスリンの合成が悪ければ糖尿病になるなどの連鎖も考えられるのです。
編集部うつ病や糖尿病、がんにまで関係しているというのは怖いですね
川嶋先生もちろん体温が低いからといって急に病気になるわけではありませんが、放置すればじわじわとその影響が蓄積して、本当に死に至るような病気になってしまいかねないのです。

編集部さらに詳しくお願いします
川嶋先生冷えは、体中の細胞の働きを悪化させかねません。たとえば、免疫力が下がれば、病気にかかりやすくなりますよね。ほかにも、脳が必要な情報を処理しきれなくなれば、適切な指示を出せなくなってしまうでしょう。
編集部なぜ、細胞の働きが弱まってしまうのですか?
川嶋先生体温が下がると血液の温度も下がるからです。そうすると血液の粘度が上がり、血流が悪くなります。血液は冷えればドロドロ、温まればサラサラになるので、冷えると血流が滞るということです。
血液はさまざまなものを運んでいます。たとえば赤血球は酸素を運んでいますし、白血球などの免疫細胞も身体中をめぐって病原体やがんをやっつけています。
加えて、血漿は水分や栄養分を運搬しています。この流れが滞ると、体の各細胞は酸素やエネルギー不足になり、働きを弱めてしまうのです。

そもそも冷えとは、どのような状態なのか?

編集部冷えとは、何度以下のことを指すのですか?
川嶋先生私は、体温が36.0℃以下であれば、自覚症状がなくても「冷え」と言っていいと考えています。ただ、みなさん、体温なんて気にかけていらっしゃらないですからね。患者さんの中には、冷えを自覚していない方もいらっしゃいます。
編集部体温という数字ではっきり評価されるのですね?
川嶋先生いえ、必ずしもそうとは言い切れません。数値とは別に、平熱が高くても外の環境を寒いと感じてしまう状況があります。つまり、寒さや冷たさを苦痛と感じる人ですが、これも冷えであると考えます。ただし、冬に手足が冷たいと感じるのは当たり前のことです。体の末端の血流を減らして、大事な内臓を守ろうとする生理的な反応ですから。その冷たさを苦痛に感じるか否かというところが、「冷え」という病態をあらわすポイントです。
編集部平熱が低い人と、手足の冷えがいつまでも続いてつらいという人は要注意ですね?
川嶋先生その通りです。ちなみに、900人の女性のみを対象にした「冷え」に関するアンケート調査があります。冷えを感じている人の割合を年代ごとに調べたもので、これによると、60代では約半数だったのに対し、20代では約80%の人が冷えを訴えていました。基礎代謝は、20代のほうが高齢者よりも高いはずなのに、どう考えてもおかしな話です。
編集部冷えは、昨今の若い世代で顕著になってきていると?
川嶋先生つい先日も9月上旬の福岡で、高校の体育大会に参加していた女子35人と男子1人が低体温症で病院に搬送されるという事故がありました。運動をしているのにもかかわらず低体温症、そういう事実が起こりかけているわけです。

60年前の日本人の平均体温は37℃近くあった!

川嶋 朗医師

編集部日本人は昔に比べて、体温が低くなっているのでしょうか?
川嶋先生日本人の平均体温に関する論文としては、東京大学の田坂定孝(たさか さだたか)教授のグループによって1957年(昭和32年)に出されたものが最後になります。これによると、10〜50歳代の健康な人3094人(男性:1445人、女性:1649人)の体温を計測した結果、平均体温は36.9℃だったそうです。
編集部えっ?昔はそんなに高かったんですか!今ならちょっと熱があるんじゃないかと思うような数字ですね?
川嶋先生36.9℃と聞くと、ほとんどの方が「そんなに高いんですか?」とおっしゃいます。それ以降の体温に関する論文はないものの、2011年に興味深いテレビ番組の企画がありました。それによると、調査対象となった日本人300人の平均体温は36.2℃だったそうです。また、テルモ株式会社が2008年に行ったインターネットの調査では、大人の平均体温が36.1℃、子どもでも36.4℃。いずれも参考データですが、1957年時の36.9℃と比べるとかなり低めです。
編集部どうして冷えを感じる人や体温の低い人が増えているのでしょう?
川嶋先生今は一年中、冷たい飲み物をたくさん飲んでいます。コンビニや家庭の冷蔵庫では、4℃ぐらいに保たれているのではないでしょうか。体温より30℃以上も温度の低いものを飲んでいるのですから、相当のエネルギーがないとカバーできません。
編集部たしかに、飲み物があまり冷えていないとおいしくないと感じてしまうところがあります
川嶋先生それに、いつでもエアコンが効いていて、自分で体温を維持する必要が少なくなっていることも大きいでしょう。暑さや寒さへ順応する力を、あまり鍛えていない。したがって、若い人ほど顕著な傾向が現れていると考えられます。
また、私たちの体の基礎代謝の4割を担っているのは筋肉ですが、その筋肉量も減っています。地方では自動車が普及し、都会でも交通機関が発達しているので、体を動かす機会がなくなっていますよね。
編集部冷えは現代病なのでしょうか?
川嶋先生そう言っていいと思います。上記のほか、ストレスも冷えの原因になります。ストレスを感じた瞬間は呼吸数や心拍数が上がり、体温も上がります。しかし同時に血管の収縮を起こすため、30分を過ぎたころから血流が悪くなり、体温は下がってきます。
エアコンの話と同じですが、現代の若い人たちは、良くも悪くも“大切に”育てられてきました。さまざまなストレスに対する耐性も弱くなってきているのでは。つまり冷えは現代病であり、文明・社会の発展が原因となって、若い人ほど冷えを感じるようになったと考えられるのです。
編集部冷えに限らず、体温調節の問題とも受け取れますが?
川嶋先生その一面はあるでしょう。夏になると熱中症ばかりが問題になっていますが、熱中症になりやすい人は冷え症でもあるのです。熱中症とは、外気温が上がるにつれてそのまま体温も上がっていく状態。そういう人は、逆に外気温が下がるとそのまま低体温になってしまいます。
先ほどの福岡の事例を思い出してみてください。低体温で病院に搬送されたような子どもたちが長時間暑いところにいると、今度は熱中症になってしまうはずです。

簡単でお金もかからない!湯たんぽで冷えを改善して健康になる方法

川嶋 朗医師

編集部冷えを感じている人が体を温めるのに効果的な方法を教えてください
川嶋先生私がよく言っているのは、湯たんぽを太ももの上に置いて温めるという方法です。効率よく温めるためには血流の多い場所を選ぶといいでしょう。さらに、日中の利用が効果的です。夜寝るときに足が冷たくて眠れないからといって布団に入れるのではなく、自分の体温そのものを上げてみてはいかがでしょうか。
編集部ほかに、温めるのが効果的なところはありますか?
川嶋先生「首」と名の付くところはすべてお勧めです。顔の下の首のほか、手首や足首などですね。太い動脈が走っていますから、血液を温めやすくなります。
また、血液だけではなく、交感神経にも注目してみましょう。日中の緊張状態では、主に交感神経が働いています。その一方、腰の仙骨には、「休め」の指示を出す副交感神経が集中しています。ですから、この部分を温めると血管が開いてくることが期待できます。実際に腰を湯たんぽなどで温めると効率よく体温が上がってきますよ。
編集部熱をもらって温めるのではなく、体質改善のような方法はないのでしょうか?
川嶋先生体質改善には筋肉をつけることが一番です。日本人はもともと農耕民族ですが、農作業をしていた時代に比べて現代人の生活は、運動の絶対量が足りません。誰もが運動すればいいことはわかっているけれど、なかなかできないんですね。本当は電車でも座らずに立っていたほうが体にいいんですよ。
また、冷えた飲み物に対する信仰みたいなものは、この機に見直してみましょう。このように、冷え対策は意外とシンプルですから、すぐに取り組めることから始めてみてはいかがですか。

編集部まとめ

冷えは、どちらかというと不快さのような「気持ちの問題」だと思っていました。ところが、体の冷えから血液の流れが悪くなるとさまざまな体の不調を引き起こし、逆に体を温めれば改善されるとのこと。川嶋先生のお話にあった冷え対策には次のようなものがありました。
・冷たいものを飲みすぎない
・エアコンの設定温度を調節する
・日中から湯たんぽで太ももを温める
・運動をして筋肉量を増やす
これらは、お金がかからないだけでなく、「やって損」にはならない対策ばかり。また、体の冷えは、体を痩せにくくしてしまうそうです。つらい冷えの悩みを解消したい方、知らないうちに冷えで体調を崩している方、そして冷えによって思ったほど痩せられない方は、できることからひとつずつでも取り組んでみてください。「病気が発症する前に手を打つ」。そのために、日ごろから体温を高める工夫をしてみましょう。