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椎間板ヘルニアって手術しないと治らないの?

高齢者に限らず、学生時代の部活動などによっても起こりえる「椎間板ヘルニア」。その激しい痛みは、平常なら背骨の中に収まっている髄核(ずいかく)というゲル状の組織がはみ出し、周囲の神経を圧迫することで生じるようです。このヘルニアは、物理的に切除するしかないのでしょうか? 「洗足整形・形成外科」の伊藤先生に伺いました。

監修医師
伊藤 大助(洗足整形・形成外科 院長)

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信州大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部整形外科学教室医員、稲城市立病院整形外科医長歴任後の2004年、東京都目黒区に「洗足整形・形成外科」開院。総面積270㎡超の広々とした施設で、医師ほか、理学療法士、鍼灸マッサージ師、柔道整復師らがホスピタリティにあふれた治療を提供している。日本整形外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本レーザー医学会認定医、日本抗加齢医学会認定医。日本股関節学会、日本人工関節学会、日本ペインクリニック学会の各会員。

 

保存療法が主体、手術による切除はレアケース

編集部編集部

椎間板ヘルニアになったら、手術は避けられないのでしょうか?

伊藤先生

そんなことはありません。椎間板ヘルニアを手術で治療するケースは、もはや1割以下となってきています。痛み止めの注射お薬と、リハビリなどの「保存療法」によって、十分に改善が望めます。

編集部編集部

意外です。手術するイメージを持っていましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?

伊藤先生

10年以上前になりますが、同じ椎間板ヘルニアの患者さんに対し、手術と保存療法それぞれの予後を比較した論文が発表されました。それによると、双方の結果に顕著な差は認められなかったのです。であれば、わざわざ切開する必要はないだろうと。この発表を契機に、治療の方向性が大きく変わりましたよね。また、別の“興味深い”症例研究もあります。

編集部編集部

どのような研究なのでしょうか?

伊藤先生

それは、「巨大なヘルニアほど自然消滅する」という研究報告です。人間の体には「食細胞」がいて、異物などを取りこんでくれます。そして、どうやらこの「食細胞」は、巨大なヘルニアを異物と認識して消化してくれるのです。そのような研究もあり、現在の椎間板ヘルニアの治療方針は、「痛みのコントロールと、保存療法による治癒」に傾きつつあります。

編集部編集部

あえて手術をするケースとしては、どんな症例が考えられるのですか?

伊藤先生

症例というより、主に社会的要因ですね。「仕事が忙しくて通院できない」「スポーツ選手なので、すぐに痛みを取り除きたい」「仕事を休めない」などです。ただし、手術を用いたとしても、2割くらいの患者さんは痛みが残ります。その場合、保存療法へ切り替える必要があるでしょう。


 

あえて手術を選んだ場合の方法や費用など

編集部編集部

1割以下とはいえ、手術の方法について教えてください。

伊藤先生

わかりました。かつては患部を大きく切開していましたが、いまでは、メスやレーザーが通る「管」を刺しておこないます。管の太さは直径1センチ程度なので、患者さんへの負担も少なく、日帰り手術が可能になりました。もちろん、ヘルニアが飛び出ている部分は、X線やCTによる画像診断で特定していきます。

編集部編集部

手術では、いわゆる「飛び出た」部分を切除するのですよね?

伊藤先生

そうとも限りません。椎間板ヘルニアの「飛び出た」部分は、例えるならおまんじゅうの中のアンコです。パンパンのアンコが、何かしらのきっかけであふれてしまったわけですね。ならば、アンコそのものを減らせばいい。アンコの“圧”が下がれば、ヘルニアも引っ込むだろうと。そういう考え方に沿った治療方法もあります。

編集部編集部

「アンコを減らす」治療方法について、詳しくお願いします。

伊藤先生

レーザーで照射する物理的な方法と、特殊な薬を使う科学的な方法があります。なお、レーザーによる治療は、保険の適用外です。他方、特殊な薬を用いる治療は、保険が使えます。ちなみに、アンコに相当する「髄核」は神経組織ではなく、クッションのような別の組織です。神経組織そのものを取ったり溶かしたりするわけではないので、ご安心ください。

編集部編集部

手術の場合の費用は、どれくらいかかるのでしょう?

伊藤先生

内容にもよりますが、保険適用の3割負担を前提に、入院費込みで25万円前後といったところではないでしょうか。他方、保存療法なら数百円で済むこともありますから、本当に必要なのかどうか、じっくり検討してみてください。


 

一般的な保存療法の方法や費用など

編集部編集部

今度は保存療法についてお願いします。

伊藤先生

「痛み」には波がありますので、ますば「大きな波」を、お薬などでうまくやり過ごしましょう。その後、リハビリやけん引、体の使い方に関するご指導など、さまざまな療法を用いていきます。

編集部編集部

どのくらいの期間で、治療の効果が出てくるのでしょう?

伊藤先生

保存療法の場合、1週間から2週間前後は必要でしょうか。それでも痛みが引かなかったら手術を検討するわけですが、実際の症例としては、ほとんどありません。

編集部編集部

先ほど、費用が「数百円で済むこともある」とのことでしたが?

伊藤先生

保険の3割負担を前提として、リハビリだけで痛みが軽減されれば、その可能性はあります。投薬や複合的な治療をしたとしても、数千円程度が相場です。

編集部編集部

治療後、再発することはあるのですか?

伊藤先生

「腰の痛み」全般まで広げるとしたら、その心づもりでいたほうがいいでしょう。仮にヘルニアが飛び出てこなくても、体質や生活習慣による腰痛は起こりえます。いずれにしても、「腰に痛みを感じたら、すぐに痛みのコントロールを始める」ことが重要です。

編集部編集部

どういうことでしょう?

伊藤先生

ヘルニアでも痛くない方がいらっしゃいますし、逆のケースも散見されます。ですから、ヘルニアかどうかという判断は医師にお任せいただいて、「とにかく痛みがあったら、すぐに受診すること」をお勧めします。そして、「痛みの少ない状態」を作りだしてから、診断や治療に入りましょう。


 

「喫煙」と椎間板ヘルニアの意外な関係

編集部編集部

椎間板ヘルニアになりやすい人や、なりやすい習慣はあるのですか?

伊藤先生

重い物を持ち上げる作業や、ずっと座ったままの姿勢のほか、喫煙も関係しているとされています。ですから、「腰を使わずに脚の力で持ち上げる」「立ったり歩いたりする時間を意識的に作る」「タバコをなるべく控える」などが、予防につながります。

編集部編集部

もし腰痛になった場合、市販薬の「シップ」などに頼ってもいいのでしょうか?

伊藤先生

それで「痛みが緩和」されればいいですけどね。腰痛の根本原因が治癒せず、進行することも考えられますから、受診だけはしていただきたいです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

伊藤先生

椎間板ヘルニアは治癒が見込める「怖くない病気」です。「手術しないと治らない」ということはありません。むしろ「手術だけを勧める医師」がいたとしたら、疑ってかかるべきでしょう。実際、症状にあわせた多くの治療選択肢がありますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。


 

編集部まとめ

椎間板ヘルニアの治療は、そのほとんどが、手術をしないで済ませられるようです。また、保険適用を前提とした治療費は数千円程度とのこと。加えて、気になる「痛み」もコントロール可能ということであれば、受診しない理由がありません。ただし、「どのような治療選択肢が提示されるか」といった点には注意しましょう。提示された治療方法が限られていたら、必要により、セカンドオピニオンを検討してください。


 

医院情報

洗足整形・形成外科

洗足整形・形成外科
所在地 〒152-0012 東京都目黒区洗足2-7-15キューブ洗足2F
アクセス 東京急行電鉄目黒線洗足駅より徒歩1分
診療科目 整形外科、形成外科

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