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腰痛は自分で治せる! 家庭でできる腰骨ズレ矯正とは【関野吉晴先生】

厚生労働省の調査によると、全国で約2800万人が「腰痛」に悩んでいるという。そんな国民病とも言える腰痛だが、実はその85%が「原因不明」とされていることをご存知だろうか。医師の資格を持ちながら、植村直己冒険賞を受賞するなど探検家としても知られ、現在は武蔵野美術大学教授も務める関野吉晴先生は、「腰痛の多くは“骨のズレ”が原因」で、そのズレを「家庭で治すことができる」という。関野教授の用いる手技「モルフォセラピー」について、詳しく伺った。

監修医師プロフィール:

関野吉晴(せきの・よしはる)教授

一橋大学法学部卒業、横浜市立大学医学部卒業。一橋大学在学中に同大探検部を創設し、南米への旅を重ねる中、医療の重要性を感じて横浜市大医学部に入学。卒業後、武蔵野赤十字病院、多摩川総合病院などに勤務。1993年、人類が誕生したとされるアフリカからユーラシア大陸やアメリカ大陸へ至った経路「グレートジャーニー」を逆からたどることに挑戦。踏破後の2004年からは「新グレートジャーニー 日本列島にやって来た人々」へ挑み、2011年に達成。現在、武蔵野美術大学文化人類学教授。植村直己冒険賞、旅の文化賞受賞。


 

ヒトの背骨は、決まって左側へズレる

腰痛の原因は、腰椎のズレにあると伺いましたが?

関野先生

はい。腰痛に限らず、さまざまな体の不調は、背骨のズレから生じていると考えています。ズレといっても「だるま落とし」のように横へズレるイメージではなく、回転するズレです。そして不思議なことに、必ず左へズレるという規則性があるのです。

えっ? 誰もが共通して左方向なのですか?

関野先生

そういうことです。また、背骨のズレにより、肋骨や腸骨といった骨格の高さが左右で違ってくることもあります。このような場合も、決まって左側が高くなります。このズレを手技によって戻すと、体のさまざまな不具合が改善してくる。その一例が腰痛です。

なぜ背骨のズレが体調に関係してくるのでしょう?

関野先生

主要な神経は、脳から背骨を伝わって体の隅々に張り巡らされているからです。背骨のズレにより神経が圧迫されると、痛みや機能不全を起こします。椎間板ヘルニアと同じ理屈ですね。また、背骨のズレによって周辺の筋肉などがねじれを起こすため、血管を圧迫し、血行障害に至ることもあります。

腰痛に限らず、全身と関わりがあるのですね?

関野先生

はい。その方が訴えている症状から、ズレの出ているところを予想することも可能です。例えば、肩こりや手のシビレなら首の近く、胃の消化不良や便秘なら腰椎の上あたりといった具合です。とくに腰周りは、あばら骨のような体を支えてくれる骨格が少ないため、ズレやすいですよね。腰痛に悩む方が多いのもうなずけます。


 

規則性に基づいた、「モルフォセラピー」の考え方

ズレを修正していく手技に、名称は付いているのですか?

関野先生

モルフォセラピー」といいます。花山水清という方が創設者であり、私の師匠でもあります。花山氏ならほとんどの腰痛を、10分から15分くらいの手技で改善できます。

左へズレるという規則性も、その方が発見されたのでしょうか?

関野先生

そうです。花山先生は、この武蔵野美術大学の油絵科出身です。美術家だったから規則性を見つけられたのではないでしょうか。デッサンなどをする際、作家は人体を注意深く観察しますよね。他方、医師は体の中を見ようとするから、なかなか骨のズレに着目できない。

それほど細かな差なんですね?

関野先生

いいえ。着目がされていなかっただけで、慣れてくれば触診や外見からわかります。背骨のズレによって周辺組織も引っ張られるため、筋肉の盛り上がり方が左右で違うこともあるのです。

そもそも、ズレの原因は何にあるのでしょう?

関野先生

その原因は、体の内部にあると考えています。もし外部からの圧力であれば、右にズレている方がいてもおかしくはない。例えば、いつもカバンを持っている手が左右どちらなのかによって、左右双方に偏りが出るはず。ところが実際は左にしか現れてきません。したがって、体の内部が関係していると考えられるのです。

体の内部では、何が起こっているのですか?

関野先生

交感神経がいつも優位にあり、筋肉を特定の方向へ引っ張り続けているためだと考えられます。なぜ交感神経が優位なのかについては、いまだ研究中です。おそらく、食べ物の中に含まれる人工添加物や重金属、あるいは体が浴びる放射線なども関係しているのでしょう。


 

「グレートジャーニー」を通して見えてきたこと

世界を探検されて、何か気付きはありましたか?

関野先生

「モルフォセラピー」に限って言えば、ズレの共通性が、地域や人種を問わず見受けられました。これだけ規則性のあるものが発見されていなかったことを考えると、やはり現代の“何か”に起因しているのではないでしょうか。

その一例が食べ物だと?

関野先生

生き物の体は食べ物が作りますからね。新陳代謝により、1年で体の90%以上の組織が作りかえられます。そう考えると、日々取り込んだ化学物質や重金属が神経を興奮させているとしても、不思議ではないですよね。

防腐剤や着色料、人工甘味料など、いろいろとありそうですね

関野先生

昔の食パンには、すぐに色鮮やかなカビが生えてきました。最近のパンはカビを殺す物質が入っているので長持ちします。厚生労働省のデータによると、私たちはこうした人工添加物を1年で平均8キロ摂取しているそうです。50年なら400キロという計算。体に不具合が起きてもおかしくない数値です。また、食べ物に限らず、お薬も体内に取り入れていますよね。

普段のんでいる薬が、背骨のズレを生じさせるのですか?

関野先生

要因としてはありえるということです。体は薬によって「戦闘モード」へ切り替わりますから、交感神経が優位になる。常に血管が縮まり、筋肉が硬直しているとしたら、何かしらの偏りが生じてもおかしくないでしょう。

西洋医学の浸透していない地域のほうが、むしろ“健康的”と言えそうです

関野先生

我々はつい、西洋医学しか選択肢がないと思い込んでしまいます。すると、「痛みには鎮痛剤」といった単一思考に陥りがちです。しかし、鎮静剤は対症療法で、根本解決になっていない。ところが、探検先の村長のような尊敬を集めている人に「モルフォセラピー」を教えておくと、実際に治せるし効果が持続するのです。


 

「モルフォセラピー」の実践と解説

「モルフォセラピー」で用いる手技について教えてください

関野先生

手技とは言っても、力でプッシュするような力技ではなく、ズレをスライドさせて戻すソフトな施術です。ズレた背骨は是正される方向に動きやすいですから、骨そのものを触らなくてもいいくらいです。すぐに自然な位置で止まります。

背骨は体の後ろ側なので、自己診断がむずかしそうです

関野先生

ご自身でもわかる場合がありますよ。例えば骨盤の位置です。左右の骨盤の一番上の部分を探って、目印に指を置いてみてください。その状態で鏡の前に立つと、左側が上がっていることに気付くのではないでしょうか。

いずれにしても、手技は専門家に任せるのですよね?

関野先生

最初はそうなりますが、やり方さえわかれば、ご家族の方でもできます。

つまり、日常的におこなう必要があると?

関野先生

そうです。矯正をしてそのまま治ってしまう方もいますが、またズレ始める人もいます。だからご家族で日常的におこなってください。器用な方なら自分でも可能です。

自分で背中をマッサージするのですか?

関野先生

先ほども言いましたが、「モルフォセラピー」では、必ずしも骨を押す必要がありません。背骨につながっている筋組織や筋膜なら、体の前側の部分でも効果が得られます。また、ズレがどこにあるのか診断できなかったら、体全体をやっておけばいい。強く押すわけではありませんから、やり過ぎて右にズレるということもありません。

とはいえ、他人に協力してもらったほうが楽かもしれませんね?

関野先生

ご家族に協力してもらうのが一番でしょう。少なくとも、信頼の置ける方に頼んでください。いままで悪かった血流が戻ると、まれに、ふらつきやめまいのような症状を伴います。施術者との間に信頼関係がないと、「かえって調子が悪くなった」などの誤解を生じかねないのです。

先生ご自身は、どのような方に施術してきたのですか?

関野先生

治療院を開設しているわけではないですから、主に大学の職員や学生などです。また、紹介を通じて施術することもあります。例えば、国際連合の職員でトランペッターとしても知られる伊勢崎賢治さん、小説家の田口ランディさん、クライマーの山野井泰史さんなどです。


 

スタッフが実際に体験してみました!

腰の痛みに悩む編集Kの場合

関野先生

まず、あおむけになってください、腰の腸骨を診てみます。やはり左側が上になっていますね・・・約1分間の施術・・・・はい、左右均等になりました。

 

編集K びっくりするくらい何もされていない感覚です。ほとんどさすられているだけ。

 

関野先生

次は、うつぶせになりましょう。腰椎の5番にズレがありますね。触っていると、スッと曲がるからわかります・・・約2分間の施術・・・どうですか? 起き上がってみてください。

 

編集K 本当に軽くなった。ビックリです。


 

編集部まとめ

規則性のある物事に対しては科学的アプローチが可能。そして、誰にでも同じような効果を望める再現性が見いだせるはず。「モルフォセラピー」は、こうした考え方に沿った療法でした。

 

また、家族同士がおこなうことで、腰痛の原因を特定できるかもしれません。例えば、共通の食べ物を食べて家族全員の腰椎が曲がってきたら、原因は「その食べ物だろう」といった具合です。

 

医師であり、世界中の人々と文化を見聞してきた関野吉晴教授ならではの結論。みなさんは、どう感じられたでしょうか。今回は腰痛についての記事でしたが、今後、「モルフォセラピー」と全身の症状との関係も解き明かしていく予定です。引き続き、ご期待ください。