「ホリエモン×峰宗太郎医師」オンライン対談(後編) 新型コロナ収束へ進むべき道

公開日:2020/05/13  更新日:2020/05/26
「ホリエモン×峰宗太郎医師」オンライン対談(後編) 新型コロナ収束へ進むべき道

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令からおよそ1か月。5月に入り新規感染者の数は減少傾向にあるものの、いまだ終息への道筋は見えず、外出自粛や営業自粛が求められるなど、多くの人が厳しい生活を強いられています。

このような状況が続くなか、4月末に実業家の堀江貴文氏とウイルス学を専門にされている米国研究機関の峰宗太郎氏によるオンライン対談が実現し、治療薬の効果や終息のタイミング、取るべき政策などについて議論が交わされました。

※この記事は対談後編となります。前編は下記よりご覧いただけます。

堀江 貴文

実業家
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)

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1972年福岡県生まれ。作家活動のほか、ロケットエンジン開発やスマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」などのプロデュースも手掛ける。2016年、「予防医療普及協会」の発起人となり、現在は理事として活動。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」にも深く関わる。同協会監修の著作に、『120歳まで生きたいので、最先端医療を取材してみた』(祥伝社新書)『健康の結論』(KADOKAWA)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)など多数。

峰宗太郎

米国研究機関 博士研究員
峰 宗太郎(みね・そうたろう)

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京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。予防医療普及協会顧問。

医師の目から見たCOVID-19対策

堀江堀江 貴文

知人の病院経営者から、COVID-19の患者さん以外は、病院に来なくなったという話を聞きました。開店休業状態の病院を新型コロナウイルス専門病院にするような施策は必要だと思いますか?

峰宗太郎

感染対策はなかなか難しいものなのですが、COVID-19を診療する病院、病棟は分けた方がいいですね。

堀江堀江 貴文

医師であれば、専門外でも感染症に対応できるものなのでしょうか?

峰宗太郎

今回のCOVID-19のように、感染症の集団感染が起こる事例は、訓練していないと難しいと思います。病院内に感染者を隔離出来る病室・病棟も必要ですし、医師の他にも、感染症に精通した看護師がいるということも重要なポイントです。そう考えると、すべての病院で対応するのは難しいでしょうね。

堀江堀江 貴文

医療崩壊を防ぐために、さまざまな国でロックダウンや自粛が行われていますが、医療のリソースを増やす現実的な方法はありますか?

峰宗太郎

ニューヨークやロンドンのように野営病院、コロナ専用病院を作り、患者を一箇所に集約してしまうのは一つの手ですね。東京は、今はまだ大丈夫かもしれませんが、今後感染爆発が起きた場合には、施設を確保する必要が出てきますし。

堀江堀江 貴文

都内のホテルをCOVID-19軽症患者向けに使う方針のようですが、この辺はいかがでしょうか?

峰宗太郎

最近は、自宅隔離で、家族に感染させてしまうケースが増えているそうです。施設を確保して、患者の病状経過を追うこと、さらにはこれ以上感染を広げないために施設を作るというのは、感染拡大防止に有効だと思います。

堀江堀江 貴文

最近、過剰な自粛ムードや誤った情報拡散が見られます。新型コロナウイルスとの長期戦の様相を呈してきていますが、どのような感染対策をすればいいのですか?

峰宗太郎

感染症対策の基本的な原理を守るのは大切ですが、しっかりと線を引くことは難しいですよね。感染症対策をやりすぎると経済が止まってしまいますし、自粛生活が続くと、メンタルに悪影響を及ぼしてしまうこともあります。一方で、感染症対策を緩くすると、感染者が増えてしまう。さじ加減は難しいですよね。多くの人がどこまで自粛をすればいいかわかってくるという状況が整うことは必要ですよね。

堀江堀江 貴文

ベトナムやマカオでは、新規感染者がゼロになりました。ロックダウン解除の動きも出てきています。一方、日本の病院では、COVID-19の症状がない患者さんにPCR検査をしたところ、無症状だけど感染しているというケースもあったそうです。いま、感染が増えている状況があるなかで、感染者ゼロというのは実現可能なのでしょうか?

峰宗太郎

もう新規の感染者をゼロに収めるのは無理です。考えられないですよね。感染が広がること自体は、ある程度許容しつつ、感染爆発が起こらない状態を持続させる。医療崩壊を招かないようにするというのが、現実的な目標でしょうか。

ベトナムとかマカオの感染が収まったのは、人の動きが止まっていて、国のなかではうまく統制が取れたということが大きいと思います。しかし、現時点では上手くいっていても、国際的なやり取りや人の移動が増えていくと、また感染者が増えてしまう可能性もあるので、ウイルスに対する警戒は今後も必要になると思います。

    

集団免疫? ワクチン? 新型コロナウイルス騒動収束へ進むべき道

堀江堀江 貴文

新型コロナウイルスの感染が広まってきていますが、免疫を獲得して抗体ができるメカニズムも、わかっていないんですよね?

峰宗太郎

ある程度、抗体が出来ることはわかってきました。しかし、できた抗体が症状を防御できる「中和抗体」ができるか、免疫が十分な量で、すべての人に出来るのかどうか、また、抗体がどのくらいの期間維持されるのかなどについては、まだまったくわかっていません。

堀江堀江 貴文

十分な抗体量が体内にできていないのに、ウイルスがなくなるというのはどういうことですか?

峰宗太郎

抗体は、B細胞が担う抗体の「液性免疫」によって生まれるのですが、それとは別に、ウイルスを排除するT細胞が、ウイルス細胞の増殖を防いだり、破壊して病原体を排除する「細胞性免疫」という反応もあります。なので、「抗体」だけが病原体を排除するわけではありません。私達の身体内にあるさまざまな免疫反応が作用して、病原体が排除されます。

堀江堀江 貴文

感染者のうち一定程度の人には抗体もできている。しかしその一方で、ウイルスを排除していても、抗体が出来ていない人もいるかもしれないということですかね?

峰宗太郎

そうですね。それぞれの割合はわかりませんが、可能性はありますね。

堀江堀江 貴文

インフルエンザウイルスと比較したときに、新型コロナウイルスはどのような特徴がありますか?

峰宗太郎

インフルエンザは変異が早く、タイプもたくさんある難しいウイルスです。さまざまなインフルエンザウイルスがあるので、抗体が対応できないケースもありますね。

このような変異は、新型コロナウイルスでも起こる可能性もあり、まだ注意しながら研究を続けているという段階です。

堀江堀江 貴文

新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が、インフルエンザより変異しにくいのではないかというお話もありましたが?

峰宗太郎

その通りです。スパイクタンパク質がレセプターという相手とくっつく場所(RBD)があるのですが、変わりにくい方が、ウイルスにとっても都合がいいんです。将来的にはRBDに対する免疫反応によって中和抗体が出来て、ウイルスの変異に強い有効な抗体であると証明されていく可能性もありますね。

堀江堀江 貴文

ウイルス感染を収束させる方法の一つには、集団免疫の獲得があると思います。でも、新型コロナウイルスでは感染したにもかかわらず、免疫がないという方もいる。皆さんが不安を抱えられているこの状況の収束を,どのように評価すれば良いのでしょうか?

峰宗太郎

集団免疫だけで収束させる場合には、既感染患者が全人口の6〜7割になり免疫を持っている状態が必要だと言われています。

堀江堀江 貴文

この新型コロナウイルスに対する免疫が出来るか、そしてどのくらいの期間持ち続けられるかが今後の課題ですね。

峰宗太郎

実は、風邪のような症状が出る「旧型の」コロナウイルスで、抗体を持っている期間を測る実験が1990年代に実施されたことがあるのですが、その結果は、7〜8ヶ月でした。

これはインフルエンザのように、毎年感染を予防するために予防接種をしないといけない状態。旧型コロナウイルスの実験結果を見ると、自然感染だけで集団免疫を獲得できるかどうかについては、疑問が生じますね。

堀江堀江 貴文

そうなると、毎年ワクチンを開発することが必要になるのでしょうか? それまでは収束が難しい?

峰宗太郎

そうですね。ワクチンも集団免疫と同様に、感染を抑えるための方法ですね。集団免疫の6〜7割という数値だけではなく、持続可能な対策かどうかということも含めて、検討していくことが必要になります。

堀江堀江 貴文

つまり、当面は先行きが不透明な状況が続くということですか?

峰宗太郎

そのとおりです。「サイエンス」という雑誌にもハーバード大学の研究チームの見解が掲載されましたが、ワクチンが開発されないと、2022年頃までは、今推し進めている「ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)」のような、人同士が距離を保つ社会が続くと予想されています。

堀江堀江 貴文

そんなに長い期間、このままの社会を維持するのは難しいですよね。「2年間誰とも会うな」と言うのは、刑務所に入るのと似たようなものですし、一般の人には辛いと思います。

峰宗太郎

おっしゃるとおりですね。現在のような強度の対策を続けていくのは難しいです。結局のところ、どのくらい感染爆発を抑えるか。現在のような強度の政策で爆発的な感染を抑えた後に、何をしていくか。今後の方針をきちんと考えないといけないと思います。

もし今後、医療崩壊が起こった場合、一番困るのはCOVID-19以外の病気にかかっている患者さんです。現在、COVID-19の拡大により、手術が延期になっている患者さんもいらっしゃいますからね。集団感染やクラスターを抑えていくことがまずは大切ですが、感染患者をいきなりゼロにすることは難しいと思います。ワクチンが開発されるまでは、根拠を示しながら、医療現場、社会・経済の舵取りをし、感染対策をしていく。それが大事だと思います。

堀江堀江 貴文

今の日本には、「新型コロナウイルスに感染したら『村八分』にされるから、絶対感染できない」とお話されている方もいます。でも、社会生活を送る以上、どうやっても感染リスクをゼロには出来ないと思います。どう情報を伝えればいいと思いますか?

峰宗太郎

病気の怖さを伝えすぎても、過剰反応によって社会が持たないと思います。なので、多くの人に正しく病気を理解していただいて、病気を抑えることが大切かなと思います。

堀江堀江 貴文

いまの日本のマスメディアの現状だと、「今日は感染者が何人です」とか、「残念ながら有名人がお亡くなりになりました」といったような、パニックになるニュースばかりが放送されています。この状況を見ていると、社会が落ち着くのにはまだまだ時間かかるかなと思うんですが。

峰宗太郎

現段階では、感染してしまった後に重症化、もしくは死亡する可能性については、「」のような要素があります。高齢者が比較的重症化しやすいと言われていますが、年齢が若くても重症化してしまう人もいる。まずは重症化を防ぐ方法を見つけられるかどうか。あとは開発途上の薬や予防ワクチンの開発です。こればかりは、実験結果や開発を待ちつつ、現時点で出来る感染対策を考える必要がありますね。

堀江堀江 貴文

日本でも緊急事態宣言が出されています。社会が動かない状況は、5月以降も続く必要があるのですか?

峰宗太郎

そうですね。やっと感染患者数がフラットになりつつある米国も、少なくともあと1ヶ月間はシャットダウンが続く状況ですし、感染者の減少傾向が見えていない日本でも、当分は社会が閉じている状況が続くという認識を持っていただく必要はありますよね。

堀江堀江 貴文

アルバイトやフリーランスの方など、来月の生活が想像できていないような状況にいらっしゃる方も多いですし、問題ですよね?

峰宗太郎

相手が人ではなくてウイルスとの戦いなので、政府が主導となって、社会が出来ることをやるということしかないと思います。

堀江堀江 貴文

わかりました。先生、今回も貴重なお話ありがとうございます。皆さんの役に立っていると思いますので、引き続き宜しくお願いします。

峰宗太郎

ありがとうございました。

    

編集後記

今回の取材で最も印象的だったのは、堀江氏の社会に対する洞察力。日頃TwitterなどのSNSを駆使したコメントが度々話題になっている堀江氏だが、その言葉の裏にある社会全体を鋭く冷静に見つめる視線が垣間見えました。

新型コロナウイルス感染症対策と経済政策。今後も相反する2つの要素をふまえた難しい舵取りが、日本には求められることになるでしょう。特効薬やワクチン開発にも期待を寄せつつも、正しい知識を持ちながら新しい社会のあり方を模索していかなければならない時期に来ているのかもしれません。

前編>>治療薬の最新動向と感染拡大の理由

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2016年3月、経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションを様々な企業や団体と連携し、推進している。

これまでに胃がんの主な原因である「ピロリ菌」の検査・除菌啓発を目的とした“「ピ」プロジェクト”、大腸がん予防のための検査の重要性を伝える“「プ」プロジェクト”、子宮頸がん検査、HPVワクチンに関する正しい情報の発信、啓発を目的とした”「パ」プロジェクト”を実施。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」はオープンから一年半で会員数270名を突破。 現在、「パ」、「ピ」、「プ」プロジェクトに引き続き、歯周病予防の「ペ」プロジェクト、糖尿病予防の「ポ」プロジェクトが進行中。

各診療科の専門医、歯科医などが集い、それぞれの専門領域を超え、活動をサポートしている。

一般社団法人 予防医療普及協会

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予防医療普及協会の理事・顧問も交え、非公開のFacebookグループでの交流、月一度のオフ会が活動の主体となっています。
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