「ホリエモン×峰宗太郎医師」オンライン対談(前編) 新型コロナ治療薬の最新動向と感染拡大の理由 2020/05/13

「ホリエモン×峰宗太郎医師」オンライン対談(前編) 治療薬の最新動向と感染拡大の理由

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令からおよそ1か月。5月に入り新規感染者の数は減少傾向にあるものの、いまだ終息への道筋は見えず、外出自粛や営業自粛が求められるなど、多くの人が厳しい生活を強いられています。

このような状況が続くなか、4月末に実業家の堀江貴文氏とウイルス学を専門にされている米国研究機関の峰宗太郎氏によるオンライン対談が実現し、治療薬の効果や終息のタイミング、取るべき政策などについて議論が交わされました。

堀江 貴文

実業家
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)

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1972年福岡県生まれ。作家活動のほか、ロケットエンジン開発やスマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」などのプロデュースも手掛ける。2016年、「予防医療普及協会」の発起人となり、現在は理事として活動。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」にも深く関わる。同協会監修の著作に、『120歳まで生きたいので、最先端医療を取材してみた』(祥伝社新書)『健康の結論』(KADOKAWA)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)など多数。

峰宗太郎

米国研究機関 博士研究員
峰 宗太郎(みね・そうたろう)

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京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。予防医療普及協会顧問。

新型コロナウイルス 治療薬の最新動向を知ろう

堀江堀江 貴文

新型コロナウイルスの特徴が、少しずつわかるようになってきました。治療薬について最新の動向について教えて下さい。

峰宗太郎

まずはレムデシビルですね。米国の製薬会社、ギリアド・サイエンシズ社が、もともとはエボラ病(出血熱)用の治療薬として開発したものです。ウイルスが増えることを防ぐ薬で、臨床試験も進んでいますが、まだ効能についてしっかりとした結果は出ていません(2020年4月25日時点)。また日本で効果があると期待されているアビガン(ファビピラビル)も、レムデシビルと同じように仮説を立てながら、検査している状況です。

堀江堀江 貴文

重症化している患者さんのなかにも、薬を投与している方といない方がいらっしゃるのでしょうか? またそうだとしたら、倫理的な問題はクリアできているのですか?

峰宗太郎

重症化している患者さんの中にも、これらの薬を投与しているケースといないケースがありますが、臨床試験するという建前があるので、倫理面ではクリア出来ていると思います。ただ、現実的には、効くと言われていた薬を処方し、悪くなってしまったケースもあるんです。

例えば、米国のトランプ大統領が一時期推薦していたクロロキン(リン酸クロロキン)ヒドロキシクロロキン(硫酸ヒドロキシクロロキン)と言った薬がありましたが、ブラジルでは、投与した患者さんのほうが致死率が高かったので、臨床試験が中止になりました。そのようなリスクもあります。

堀江堀江 貴文

レムデシビルとアビガンの違いは何ですか?

峰宗太郎

いずれも、(遺伝情報が転写されてできる、ウイルスの遺伝情報を書き込んだ核酸の)RNAの増加を阻害する薬ですが、レムデシビルは、酵素がはまり込んで核酸が増幅するのを阻害します。アビガンはチェーンターミネーターと呼ばれ、取り込まれた部位でRNAが伸長するのを阻害する薬です。

堀江堀江 貴文

レムデシビルやアビガンはいずれもRNAの複製をブロックする薬だけど、多少ポイントが違うということなんですね。それ以外に役に立ちそうな薬はありますか? 肺の細胞表面の炎症や静脈が詰まることによって、酸素が取り込みにくくなるという話を聞きますが、そのあたりにアプローチする薬はありますか?

峰宗太郎

これまでは、レムデシビルやアビガンといった「ウイルスそのものをブロックする薬」、いわゆる抗ウイルス薬を中心に臨床試験が行われてきましたが、最近では「ウイルスによって引き起こされる炎症や血栓を抑える薬」の研究が進められていまして、重症の患者さんの予後が改善するということで、炎症性サイトカインという炎症を起こす分子の一つであるインターロイキン6を抑える薬などが注目されています。

堀江堀江 貴文

今のところ、新型コロナウイルスに効く薬の決定版はないということですか?

峰宗太郎

そうですね。まだ特効薬は報告されておらず、治療が厳しい現状に変化はありません。

    

新型コロナウイルスが感染拡大するワケ

堀江堀江 貴文

現在日本でも新型コロナウイルスの感染者が増えていますが、スペイン、イタリア、米国のニューヨークなどよりも死者が少ないと言われていますね。これはなぜでしょうか?

峰宗太郎

これも色々議論がありますけど、明確にはわかっていません。「白人や黄色人種などの遺伝子の違いによる影響」、「コロナウイルスの変異や流行ウイルス自体の違い」、「アジア人は旧型のコロナウイルスの免疫を持っているため」、「BCGワクチン接種しているため」、「生活習慣による違い」、「対策の違い」など、さまざまなことが言われていますが、どれも仮説の話です。

堀江堀江 貴文

同じ米国でもニューヨークでは死者が多いのに対し、初期段階で患者が多かったカリフォルニアでは、感染がそこまで広がりませんでした。その違いは何でしょう?

峰宗太郎

ウイルスをいかに早く封じ込めたかクラスター(集団感染)が起きた場所の違いなどが挙げられますね。高齢者の多い介護施設や、絶対に休めない仕事をしているエッシェンシャルワーカーのいる場所で感染が起きてしまうと、どうしても感染が拡大しやすい傾向はあるようです。

堀江堀江 貴文

医療施設内での集団感染が話題になりましたが、対策の施しようはないのですか?

峰宗太郎

集団感染が起きる理由の一つは、新型コロナウイルスの特徴でもある無症状感染者の多さです。およそ40%はいると言われていて、結果的に感染を拡大させてしまっています。医療現場でも、別の病気で運ばれてきた方が新型コロナウイルスの無症状感染者で、看護師が感染してしまい、集団感染を引き起こしてしまうというケースが報告されています。

堀江堀江 貴文

そのような性質が新型コロナウイルスの感染力の強さを象徴していると言えそうですね。

峰宗太郎

感染力自体はインフルエンザよりやや強い程度なのですが、症状が出ない人もいるというステルス的な特性があり、この二つが組み合わさっていることが、感染を拡大させてしまっている大きな要因であることは間違いありません。

堀江堀江 貴文

コロナウイルスというのはもともとそのような特徴を持っていたのですか?

峰宗太郎

かつて流行したSARSは、感染者の多くが重症化・死亡してしまったので封じ込めができました。風邪のウイルスに侵された患者さんの中には、症状がダラダラと長引く方もいらっしゃいます。新型コロナウイルスは、どちらかというと風邪に近い症状ですが、重症化する患者さんが半端に多いので、対策に苦戦してしまう厄介なウイルスですね。

堀江堀江 貴文

新型コロナウイルスに感染して、肺が酸素を取り込めていない状態なのに、自覚症状がなく、結果的に炎症が進んだ患者さんがいらしたという話も聞きましたが、本当だとしたら厄介ですよね。

峰宗太郎

あり得るケースだと思います。最近では埼玉で、自覚症状が少ない患者さんが突然重症化し、亡くなってしまうという事例がありました。おそらく自覚症状は弱かったとしても、検査値が悪かったなどの状況があったのではないかと思います。

堀江堀江 貴文

現場の感染症の医師に、ウイルスの情報は引き継がれているのですか?

峰宗太郎

世界各国で研究は進みつつあり、インターネットなどで盛んに情報発信は行われています。論文の出るペースも早くなっていますので、比較的情報を共有し、アップデートできる状況は整っているのではないかと思いますね。

後編>>新型コロナ収束へ進むべき道