「予防できる病気を予防しない日本社会を変えるには」ホリエモンと医師がディスカッション

公開日:2020/04/09  更新日:2020/04/08
ホリエモンが間部医師・篠原医師とディスカッション -予防できる病気があるのに予防しない日本社会を変えるには-

2月26日から28日までの3日間、国際展示場「インテックス大阪」にて、リードエグジビションジャパン(本社・東京都新宿区)主催による「第6回 医療と介護の総合展(メディカルジャパン)」が開催された。
合計160セミナーに及ぶ医療・介護分野の講演のうち、27日におこなわれたのが、「治療から予防へ ~予防医療が実現する未来社会~」と題するパネルディスカッション。日本人間ドック学会理事長の篠原幸人氏、予防医療普及協会の顧問医師を務める間部克裕氏、そして、同協会理事を務める堀江貴文氏を交えた三者対談の様子を、ご覧いただきたい。

堀江 貴文

実業家
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)

プロフィールをもっと見る
1972年福岡県生まれ。作家活動のほか、ロケットエンジン開発やスマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」などのプロデュースも手掛ける。2016年、「予防医療普及協会」の発起人となり、現在は理事として活動。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」にも深く関わる。同協会監修の著作に、『120歳まで生きたいので、最先端医療を取材してみた』(祥伝社新書)『健康の結論』(KADOKAWA)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)など多数。

間部克裕

予防医療普及協会 顧問医師
間部 克裕(まべ・かつひろ)

プロフィールをもっと見る
山形大学医学部卒業、山形大学大学院卒業医学博士課程修了。山形県立中央病院内科医長、KKR札幌医療センター消化器科医長、北海道大学大学院がん予防内科特任講師などを歴任後、現在では、医療法人「淳風会健康管理センター倉敷」のセンター長に就任。消化管疾患の診療とがん予防に関する活動・研究を続けている。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化器病学会専門医、日本消化管学会・専門医・指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本ヘリコバクター学会Hp感染症認定医。

篠原幸人

日本人間ドック学会理事長
篠原 幸人(しのはら・ゆきと)

プロフィールをもっと見る
慶応義塾大学医学部卒業。聖路加国際病院インターン後、慶応義塾大学医学部大学院修了。米国留学を経て、慶応義塾大学内科医長、東海大学医学部神経内科教授・科長、同大付属東京病院院長・脳卒中神経センター長などを歴任。日本脳卒中学会理事長、東海大学名誉教授などのポストを務めて現在は立川病院の名誉院長として診療業務を続けている。日本人間ドック学会理事長。日本内科学会認定内科医・指導医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本人間ドック認定指定医。

「できるのにやらない」予防のジレンマ

「できるのにやらない」予防のジレンマ

間部克裕間部

まず始めに、「高齢者社会における予防医療の役割と可能性」を考えたとき、有限な医療資源を守るという視点が欠かせません。予防医療で患者数そのものを減らし、医療は重篤な患者さんへ集中させるということですね。堀江さん、何かご意見ございますか。

堀江堀江 貴文

まさに、新型コロナウイルスでも問われている視点ですよね。しかし、今日のイベントって、よく実施できましたよね。新型コロナウイルスが流行してるから、身近な人から、「行くのをやめときなよ」って言われると思うんですよ。むしろ、正確な情報を知ることができる機会なのに。

こうしたイベントで、せっかく著名なドクターが有益な話をしてくださるのに、人間って、最も身近な人の言うことを信じてしまうのです。一般の人が誰から医療情報を得ているかというと、医療関係者以外だったり噂だったりするんですよね。

間部克裕間部

医師が学会でなにを言っても、その中身は世の中に伝わらないですよね。

堀江堀江 貴文

声を大きくして言いたいのは、「予防できる病気があるのに予防しない、なのに、先行きの見えない新型コロナウイルスは怖がる。それっておかしくないですか?」ということです。多くの人は、ワクチン接種など簡単に予防できることをしないんです。

間部克裕間部

食道がんも胃がんも大腸がんも、内視鏡検診や除菌、ポリープ切除など予防する方法があるのに、毎年多くの方が亡くなってしまっています。やはり、もっと予防する方法を周知していくことが大切なんですよね。

堀江堀江 貴文

ボクは本を出したりメルマガを発信したりしていますが、読者になかなか行動してもらえないんですよね。情報発信するだけではなく、「行動させる」ということが大切なんです。しかし、それがとても難しい。

間部克裕間部

そうですよね。例えば韓国では、胃がん検診の制度を国で定めました。その結果、受診率が急増したわけですけど、こうした強制力も必要ですよね。

堀江堀江 貴文

日本でも、「がん検診を受けなかったら、保険診療が使えない」とか、法律で決めることってできないんですか? 医師会から行政に働きかけてみるとか。篠原先生、どうですか?

篠原幸人篠原

予防医学に関心をもっている政治家はおられますが現在でも少数で、所属している党を動かしきれているとは言い難いですね。政党は「より関心の高い、すぐに票へ結び付く」施策を先に取りあげたがりますしね。また、政治家が予防に関心を持たないのは、国民だけの問題ではなく、医療人にも多少は非があると考えています。早期発見だけが予防医学とは言えません。早期発見は、もう発症してしまったあとの発見ですから。

情報発信だけでは不十分、いかに動かすか

情報発信だけでは不十分、いかに動かすか

間部克裕間部

韓国の話に戻りますけど、日本との大きな違いは、データベースがしっかりしていて、定期的に施策の評価をし、公表もしているところです。どういう施策がどのような効果を出しているのか、きっちり評価できるんですね。ですから、公表もしやすい。

篠原幸人篠原

たしかに、現在の日本の予防医療は、マラソンで言う「周回遅れ」のようなところが多少あります。一方で人間ドック健診は日本で生まれ、日本で育ったシステムですが、世界標準は、別の意味でもっと先を走っている部分がありますね。それでも、日本の平均寿命や健康寿命は、男女共に世界でトップクラスですよね。すなわち、高齢化社会としては世界のトップランナーなのですから、その動きに世界も注目しています。しかし、人間ドック健診も今までのようなやり方を続けているわけにはいきません。これからの人間ドック健診は、従来のやり方の一部を改めるべきで、例えば年代別の対応も求められるでしょう。ベルトコンベアのように「40代の方と80代の方で一律の検査」という今の方式は好ましくないですね。さらに、今は新しく検査に痛みを伴わない、がんの早期検出方法も出てきました。皆さんは人間ドックを受けて異常がないといわれて喜ぶだけでなく、この良好な状態を続けるのにはどうしたら良いかを、健診施設の指導から学んでほしいですね。

堀江堀江 貴文

ビル・ゲイツ氏がポリオの絶滅に動きだしていますが、彼のすごいところって、単に出資するだけじゃないんですよね。手書きの図程度しか存在していないナイジェリアの地図をつくるところから始めている。なぜなら、境界付近に感染者が多いから。ボクのやりたいことは、そこなんです。既存の方法が通じないものを、どうハックしていくか。具体的には、今は糖尿病へまっしぐらな人を、どう行動変容させるか、に注力しています。

間部克裕間部

情報発信は、堀江さんに頼るところが大きいので、期待しています。

堀江堀江 貴文

現在、糖尿病が進んだ結果、「脚を切断」することになった患者さんがいて、その模様をドキュメンタリー映画で追っているところです。「怖さ」で視聴者の行動変容を起こせないかなって。真面目な正論ではなにも変わらなくて、あの手この手で知恵を絞らないといけません。

間部克裕間部

そうですね。まとめると、①予防の大切さが周知できていない、②アプローチの手法に工夫がない、③検証するためのデータが整備されていない、④法のような強制力がない。いずれにしても、予防できるとわかっている病気なのに、予防が完全にできていないということですよね。

予防をボトムアップする近道は「市民の訴え」

予防をボトムアップする近道は「市民の訴え」

間部克裕間部

それでは時間も迫ってきましたので、まとめに入らせていただきます。まずは堀江さんからお願いします。

堀江堀江 貴文

大事なことは“行動”です。話を聞いて終わりではなく、皆さんひとりひとりが行動に移す。政治家は、陳情する人がいるからこそ動きます。国会議員に限らず、より「1票の重さ」を知っている市会議員でもいいと思いますよ。皆さんの声が通りやすいのは市会議員。それでいて、衆議院議員ともつながっています。皆さんが予防医療を普及させるために一番簡単なことは、政治家に予防医療の必要性を訴えること、これに尽きます。そうすれば、「がん検診を受けなければ保険が適用されない」といった法案が通ります。今日のイベントの成果にしていただきたいですよね。

間部克裕間部

そうですね。皆さんがお帰りになったら、感染症を移すのではなく、行動に移していただきたいと思います。篠原先生、最後に一言お願いします。

篠原幸人篠原

私共も、予防のための人間ドック健診の費用を、納税の時の医療費控除の対象に入れてほしいとか、臨床予防医学対策基準法を新しく作ってくれとか運動はしておりますが、一番大切なのは、国民の一人ひとりの「病気になってからでは遅いのだ」 という予防医学の重要性に対する意識・知識・認識です。また国民ばかりでなく医療従事者にも自分達が行っている予防医療の重要性をもう一度考え直して貰わなければいけないと思っています。

間部克裕間部

予防医療の主人公は“我々”ということですね。医療従事者も含め、「皆さんが行動しないと、なにも変わらない」という結論にしたいと思います。本日は、ありがとうございました。

編集部まとめ

堀江さんの著書、「むだ死にしない技術」をはじめ、世の中には多くの予防医療に関する情報が発信されています。しかし、知識としては理解していても、行動に移している人は少ないとのことでした。今回のディスカッションの中で、“行動”という言葉が多く登場しました。私たちひとりひとりが行動することで、政治家などに予防医療の必要性が伝わっていき、予防医療が普及していく。そんな世の中を実現するために、まずは「防げる病気を予防していく」ことから行動していきましょう。

予防医療普及協会とは

2016年3月、経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションを様々な企業や団体と連携し、推進している。

これまでに胃がんの主な原因である「ピロリ菌」の検査・除菌啓発を目的とした“「ピ」プロジェクト”、大腸がん予防のための検査の重要性を伝える“「プ」プロジェクト”、子宮頸がん検査、HPVワクチンに関する正しい情報の発信、啓発を目的とした”「パ」プロジェクト”を実施。予防医療オンラインサロン「YOBO-LABO」はオープンから一年半で会員数270名を突破。 現在、「パ」、「ピ」、「プ」プロジェクトに引き続き、歯周病予防の「ペ」プロジェクト、糖尿病予防の「ポ」プロジェクトが進行中。

各診療科の専門医、歯科医などが集い、それぞれの専門領域を超え、活動をサポートしている。

一般社団法人 予防医療普及協会

所在地
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-33
プリンス通りビル2階
TEL
03-5226-1086(10:00~17:00)
HP
http://yobolife.jp/
お問い合わせ
office@yobolife.jp

書籍案内

  • 120歳まで生きたいので、最先端医療を取材してみた

    120歳まで生きたいので、最先端医療を取材してみた

    堀江 貴文(著),
    予防医療普及協会(監修)

  • 健康の結論

    健康の結論

    堀江 貴文(著),
    予防医療普及協会(監修)

  • ピロリ菌やばい

    ピロリ菌やばい

    堀江 貴文(著),
    予防医療普及協会(監修)

  • むだ死にしない技術

    むだ死にしない技術

    堀江 貴文(著),
    予防医療普及協会(監修)

予防医療オンラインサロン YOBO-LABOとは

一般社団法人予防医療普及協会によって開設されたオンラインサロンです。参加メンバー数は280名(2020年1月時点)。医師をはじめ、様々な職種のメンバーが集結し、それぞれの専門分野について知識を深めており、予防医療を含めた日本の医療の多くの課題について議論しています。サロン内では有志による予防医療に関するプロジェクトや事業の立ち上げ、予防医療の普及や推進の為の活動を行っています。
予防医療普及協会の理事・顧問も交え、非公開のFacebookグループでの交流、月一度のオフ会が活動の主体となっています。
HP: https://lounge.dmm.com/detail/1025/