アトピー予防は赤ちゃんから! “生まれてすぐ”のスキンケアが発症率を劇的に下げる!?

2014年、アトピー性皮膚炎に関する斬新な発表がなされた。その趣旨は、「生後7日以内からスキンケアを継続していくと、アトピー性皮膚炎を大幅に防げる」という、驚くべき内容だった。どうやら、アトピーやアレルギー疾患は、乳児の時期をどう過ごしてきたかで左右されるようだ。詳しい解説を、予防医療普及協会が運営するオンラインサロン『YOBO-LABO』の会員である続木康伸先生にお願いした。
※正しくは「アトピー性皮膚炎」ですが、本記事では一般的に認識している「アトピー」と記載している箇所があります。
目次 -INDEX-
アトピー発症率を劇的に下げる、シンプルな予防法とは?
編集部
きょうは、先生の専門である子どものアトピーとアレルギーについて、お話を伺いたいと思います。
続木先生
よろしくお願いいたします。じつは、私も妻もアレルギーを持っていて、3人いる子どものうち2人にも、乾燥肌やアレルギー性鼻炎が発症しています。
編集部
実は私も主人もアレルギー持ちなんです。もう1人のお子さんはどうなのでしょう?
続木先生
今回お伝えしたいのはそこなんです。生後6ヶ月になる末の娘に、出生直後からスキンケアをしたところ、アレルギーが発症しませんでした。少し肌が荒れた時期もあったのですが、すぐに治まったんです。研究があと10年早ければ、長男や長女も乾燥肌に悩んでいなかったと思います。
編集部
どういうことなのでしょう? 私も二児の母なので、大いに興味があります。
続木先生
じつは、「生後7日以内からの継続したスキンケアにより、アトピー性皮膚炎を“かなり”予防できる」ことが、成育医療研究センターの研究によりわかってきたのです。
編集部
アトピーって、あのアトピーですよね。生まれてすぐの赤ちゃんに肌ケアが必要なんて、考えてもいなかったです。ちなみに、この方法だと、どのくらいの割合でアトピーが防げるのでしょう?
続木先生
スキンケアを実施したグループのアトピー発症率は、しなかったグループに比べ、約3分の1から半分といったところでした。この差は、複数の施設で臨床研究をおこない、その結果がそれぞれ違っていたからです。
編集部
スキンケアするだけで、そんなにアトピーを減らせるんですか!? 凄い!
続木先生
加えて、アトピーをしっかりガードできれば、その他のアレルギー疾患も“顕著に”抑えられるのではないかという研究が進んでいます。例えば、食物アレルギーなどを防げると考えられているのです。
編集部
すごい・・・。この事実を知った“これからのお母さんたち”には朗報だと思います。ぜひ、詳しく教えてください。
続木先生
では、その仕組みから、簡単にご説明します。
アレルギーの原因物質は、赤ちゃんの肌からも取り込まれていた
編集部
乳児期のスキンケアが重要ということでした。どうしてなのでしょう?
続木先生
健康な肌にはバリアー機能が備わっていて、外部の刺激から身を守ってくれています。ところが、肌荒れなどによってバリアー機能が低下すると、アトピーなどの原因物質の侵入を許してしまうのです。
編集部
アトピーは原因がよくわからない病気というイメージを持っていました。実は、きちんとしたメカニズムがあったのですね?
続木先生
そのとおりです。さらに、一度アトピーにかかると、次々と別のアレルギーを引き起こしかねないのです。このことを「アレルギー・マーチ」と呼んでいます。
編集部
それぞれ、別のきっかけで発症するのではないんですか!
続木先生
はい。アトピーを発症したお子さんは、ぜんそくの疾患リスクが2倍から3倍高かったり、食物アレルギーに約6倍かかりやすかったりするのです。
編集部
だから、生後すぐにでもスキンケアを開始したほうがいいわけですね。
続木先生
わかってきましたね。アトピー性皮膚炎の「発症時期が早い人」「重症度が高い人」「罹患期間が長い人」ほど、他のアレルギーを発症する確率も「高い」と報告されています。
編集部
「アレルギー・マーチ」のスタートは、必ずアトピーなのでしょうか?
続木先生
もちろん、ほかのアレルギーなどを契機とする場合もあります。ただ、「初発のアレルギーの72.4%はアトピー性皮膚炎」という報告がなされているので、おおむね、「アトピーから始まる」と考えていいでしょう。
「1日2~3回」を目安に保湿剤を塗るだけの簡単ケア
編集部
続いて、詳しいスキンケアの方法を教えてください。ママ友にも教えてあげなくちゃ。
続木先生
わかりました。さきほど、開始時期の目安を「生後7日以内」と言いましたが、それは、出産直後のお母さんの状態を考慮しての話です。スキンケアができるのであれば、生後翌日からでも構いません。
編集部
「なる早」ということですね。使う保湿剤は?
続木先生
食べ物の成分や香料が含まれているものは絶対にダメ。加えて、セラミドという成分が含まれていればベストです。「セラミド入り」という表記に注意してみてください。ちなみに、和光堂というメーカーからいい保湿剤が出ています。
編集部
食べ物由来って、いかにも自然派志向のお店で扱っていそうです。本当はダメだったのかぁ。
続木先生
そういうことです。頻度の目安としては「1日に2~3回」。お風呂上がりとオムツ替えのほか、必要に応じてケアしてください。オムツによるかぶれも、ある程度は防げます。
編集部
うーん、お風呂上がりくらいしか意識していなかったな。3回以上でもいいんですか?
続木先生
回数を多くすることの弊害は考えられませんので、たくさん塗っても大丈夫です。1日2~3回はあくまでも目安です。
編集部
わかりました。スキンケアは、何歳くらいまで続ければいいのでしょうか?
続木先生
生後1歳くらいが目安となるものの、「そこで終わり」ではないので、できれば続けていただきたいです。ただ、小さい頃から保湿していると、1歳以降に頻度が減っても、悪化しにくい印象です。乾燥したり、赤みが出るといった症状が特にないようなら、スキンケアの回数を落としてみてもいいでしょう。
編集部
保湿剤の量についてもお願いします。
続木先生
量については、あまり神経質にならず、「迷ったら多めに」を心がけてください。
編集部
保湿剤が口に入ることはないのでしょうか、体の中で悪影響を及ぼす可能性は?
続木先生
気にする必要はありません。赤ちゃんの口に入れてダメなものは、赤ちゃん用のローションとして販売できないはずです。
編集部
赤ちゃんの肌がベタベタしている時でも保湿剤を塗っていいのでしょうか?
続木先生
ベタベタしている時は、入浴後に清潔にしてから、保湿剤を塗ってください。
編集部
アトピーやアレルギー対策として、「やっていいコト」や「やっちゃいけないコト」がインターネット上にはたくさん出回っているのですが、スキンケア以外にも取り組んだ方がいいことはありますか?
続木先生
インターネット上には色々と書かれてますよね。全てを否定するわけではないですが、しっかりとデータで実証されているという点では、「1日2~3回の保湿」で十分だと考えています。これだけなら、どなたでもできるのではないでしょうか。やるべきことが沢山ありすぎると、ご両親も大変でしょうから。
最新研究が広まっていないという事実
編集部
それにしても、私自身が出産をしたときに、「スキンケアが欠かせない」みたいな説明は受けていませんでした。看護師さんから「乾燥肌が続くと悪化しやすいからローションを塗っといてね」くらいは言われていましたけど。
続木先生
スキンケアの必要性を説く医療機関は、まだまだ少ないのが現状です。
編集部
私の友だちで、医師から「保湿剤を塗っちゃいけない」と言われたお母さんがいます。生まれ持った皮脂があるから要らないって。
続木先生
昔は、その考え方が主流だったと聞いています。今回の研究成果が広く知られていない一因です。私自身、10年前まではそうでしたから。
編集部
「アトピーは自然に治る」と言われたママ友もいるんですよ。その結果、全然治らなくて困っています。
続木先生
いまでは「放置していてもアトピーは良くならない」ことがわかっています。2歳までにアトピーを発症したお子さんのうち、約3人に2人は、大人になっても治っていないとの報告もあります。
編集部
なるほど。ますます生後のスキンケアをしっかりやらないと。肝に銘じます。
続木先生
スキンケアの必要性が、世代を超えて伝わっていけば、“親から子供”の「アレルギー・マーチ」も断ち切れると思うんですよ。遺伝要因に打ち勝てるかもしれない。
編集部
私の子どもは卵アレルギーなのでわかります。もし、孫まで引きずっていったらどうしようって。
続木先生
スキンケアをすることで、お子さんやお孫さんが快適に生活できるようになるといいですよね。
編集部
きょうは、とても勉強になりました。ありがとうございます。さっそく、先生が推奨していた保湿剤を買って帰ります。
予防医療普及協会とは
2016年3月、経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションをさまざまな企業や団体と連携し、推進している。
これまでに胃がんの主な原因である「ピロリ菌」の検査・除菌啓発を目的とした“「ピ」プロジェクト”や、大腸がん予防のための検査の重要性を伝える“「プ」プロジェクト”を実施したほか、病気予防のための自己管理サービス「YOBO(ヨボウ)」をリリース。各診療科の専門医、歯科医など診療科や研究の専門領域を横断した医師団が集い、活動をサポートしている。
今後、「ピ」、「プ」プロジェクトに引き続き、子宮頸がん検査、HPVワクチンに関する正しい情報の発信、普及啓発を目的とした「パ」プロジェクトを実施予定。
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