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背中が痛い!背部痛があなたに教える身体の不調

 更新日:2023/03/27

背中の内側にはヒトの生命活動において重要な役割を果たす器官がたくさん配置されています。

その主な器官として、身体全体を支える脊椎・五臓六腑(ごぞうろっぷ)と呼ばれる内臓や、血液のメインストリートとなる大動脈や大静脈などがあります。

そしてそのような器官を胸郭と呼ばれる骨格が保護し活動を助けています。

これらの各器官に何かトラブルが発生した場合には、さまざまな合図を出してその不調を知らせてくれます。その合図のひとつとして「背中の痛み」があります。

ここでは、背部痛があなたに教える身体の不調についてその原因や対処方法をご説明します。

この記事の監修医師
高橋 通 (東京国際クリニック 医科 院長)

背中の痛みの場所で隠れたトラブルを発見!

痛みには患部から直接発生する痛みと、患部と同じ神経領域にある器官が関連して痛みが出るケース(放散痛)があります。痛みが広範囲に及ぶ場合や、患部より少し離れた場所などが同時に痛い場合などがこのケースです。

そのため、背中に痛みを感じたときには放散痛のことも念頭においておく必要があります。

このことも踏まえて、背部痛の起きている場所から隠れたトラブルを発見してみましょう。

真ん中の痛み

背中の真ん中、いわゆる脊椎付近に痛みを感じる場合です。首から腰までの背骨のいずれかに背部痛がある場合は脊椎のトラブル、脊椎の中心部辺りでは動脈のトラブルが考えられます。

肩甲骨・左側肩甲骨の下の痛み

肩関節や筋肉のトラブルが最も一般的ですが、心臓のトラブルによる放散痛も懸念されます。他には、肺に穴が空いて潰れてしまう、気胸による痛みのこともあります。また風邪でも痛くなります。

背中下部(腰部周辺含む)

お腹の中の内臓はヒトの身体を横から見た場合、大きく分けて「腹膜」と「後腹膜」という2つのエリアに分かれています。

おへそのある前面に位置する腹膜エリアには胃・大腸・肝臓などが入っており、腹膜エリアの後ろにある後腹膜エリアには腎臓・膵臓・十二指腸などが入っています。

後腹膜エリアは背骨側下部となるため、背中下部から腰部にかけて痛みを感じる場合はこのエリアに入っている内臓のトラブルが考えられます。

右側の痛み

脊椎から右側の肩から腰部にかけて痛みを感じる場合には、肝臓のトラブルによる放散痛などが考えられます。

沈黙の臓器と呼ばれる肝臓は前述のように腹膜エリアに位置していますが、内臓のなかでも最も大きく右寄りにありますので、トラブルの際には背中に影響が出てくることがあります。

侮れない背中の痛み!背部痛を伴う病気のまとめ

前述でご紹介したとおり、背中に痛みを感じたときにはさまざまな器官のトラブルが考えられます。なかには緊急に対応が必要な病気などもありますので、ちょっとした痛みといえども背中の痛みは侮れません。

ここでは背部痛を伴う病気についてまとめてみました。

風邪

体内に風邪ウイルスが侵入してくるとウイルスをやっつけようと身体の免疫機能が活動を始めます。

そのひとつとしてサイトカインという物質が分泌されるのですが、この物質が勢いよく分泌されてしまうと正常な細胞までやっつけてしまう恐れがあります。そのため、PGE2というサイトカイン抑制物質も同時に分泌されます。

PGE2には発熱や関節痛を引き起こす作用も伴いますので、この作用により身体のふしぶしに痛みを感じることがあります。

左右にある肩関節に症状がでると背中の上部全体にこわばったような痛みが現れます。

内臓・がん

背中に痛みを感じたときに、特に注意が必要な場合が2つあります。

それがこの項でご説明する「内臓・がん」と後述する「血管」の病気が想定される場合です。日ごろからそれぞれの特徴を把握しておくととっさのときに役立つことでしょう。

【狭心症・心筋梗塞】

酸素や栄養がたっぷり含まれた血液を全身へと送り出している心臓。

その心臓が機能するためにもまた酸素や栄養が必要となりますが、その役目を担っているのが冠動脈です。

この冠動脈が狭くなって血液の流れが悪くなった状態を狭心症といいます。そして、冠動脈の一部に完全に詰まりが発生した状態を心筋梗塞といいます。

痛みの主な特徴として、狭心症の場合は突然胸部または左肩甲骨奥をキューっと締め付けられるような痛みが発生することがあります。ただし、狭心症の場合には持続性はあまりなく数分~15分程度でおさまってしまうことがあり、注意が必要です。

心筋梗塞の場合には、冷や汗を伴ってさらに激しい痛みが発生し長時間痛みが持続します。心筋梗塞は緊急の対応が必要ですので、すぐに医療機関を受診しましょう。

【腎結石、尿管結石・腎孟腎炎(じんうじんえん)】

血液が回収してきた体内の老廃物をろ過し尿として体外へ排出する機能を持つ腎臓。この尿のなかにあるカルシウムや尿酸などが結晶化し石のような塊が尿の排出経路をふさいでしまうことがあります。

この結石が腎臓内にできた場合は「腎結石」と呼ばれており、背中に鈍い痛みを感じることがあります。そして、その結石が尿管に落ちていった場合を「尿管結石」といい、背中からわき腹まわりに激痛が走ることがあります。

また、腎臓の中には一時的に尿をためておく腎盂(じんう)という場所があり、この腎盂に細菌が侵入し炎症を起こした状態が腎孟腎炎(じんうじんえん)です。

急激に腎孟腎炎が起きたときは発熱を伴い、炎症のある腎臓の位置(腰背部)を叩くと、もともと感じていた痛みよりさらにひどい激痛が走るという特徴があります。

【急性膵炎・慢性膵炎・膵臓癌】

食物の消化活動に必要な消化酵素を分泌する膵臓において、何らかの原因で誤作動が起き膵臓自体が自ら作り出した消化酵素で自分を消化しはじめて炎症を起こしてしまうことがあります。

この現象を膵炎といい、突発的に発症した場合を急性膵炎・慢性的なものを慢性膵炎といいます。

上腹部に激痛が起きることが多いのですが、人によっては左わき腹から背中にかけて放散痛が発生する人もいます。

そしてこの膵臓に癌が発症したときにも背中に痛みが出ることがあります。膵臓癌による背部痛は炎症の痛みとともに、膵臓で生成された膵液が流れる道が腫瘍によってふさがれたり周りの神経を圧迫することが原因ともいわれています。

この場合、慢性的に鈍い背部痛を感じたり痛みのような変な違和感を感じたりすることがあります。

【肝臓癌】

右の肋骨の下方に位置し、食物から取り込んだ栄養素を分解する代謝活動をおこなったり有害物質の解毒などをおこなっている肝臓。この肝臓に癌が発生したときにも背中に痛みを感じます。

実は肝臓は無痛器官ですのでこの痛みは肝臓自体から発生している痛みではなく、肝臓の腫瘍がもたらす他の臓器への影響による痛みや放散痛だといわれています。

背部の痛みは、右腹部の違和感とともに右側の肩甲骨などにも現れます。

血管

背中側を通る血管のトラブルによっても背部痛が発症する場合があります。

下記の病気は命の危険も伴いますので、突然これまでにない激しい痛みを背中に感じたときには早急に医療機関への受診が必要です。

【急性大動脈解離】

心臓に直結しており酸素を運ぶ血液のメインストリートとなる大動脈は、「外層・中層・内層」という3つの層でできています。

この一番内側にある内層に亀裂が入り中層に血液が流れ込むことによって中層のなかに新たな血液の流れが発生します。この状態を急性大動脈解離といいます。

急性大動脈解離は突発的に発症し、胸部や背部に耐えがたい激痛が走ります。

筋肉痛・骨

背中の痛みの最もポピュラーな原因が筋肉痛や骨のトラブルです。主な病気には下記のようなものがあります。

【頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)】

むずかしい病名のように感じますが一般的によくある肩こりや背中のこりなど、背中の上部から腕にかけての筋肉のこわばり等の症状を総称して頸肩腕症候群といいます。

長時間同じ姿勢でデスクワークをおこなっていたり、左右どちらかいつも同じ手で荷物を持ったりするなど、日常の悪い生活習慣により筋肉がこわばって痛みが現れることがあります。

【肋間神経痛】

内臓を守る胸郭は胸側にある胸骨と背中側にある脊椎をつなぐ弓状になった12本の肋骨によって形成されています。そして肋骨に沿うように神経が通っており、この神経に痛みが発症した場合を総称して肋間神経痛といいます。

肋骨は通称あばら骨ともいわれていますが、身体を動かしたときや深呼吸をしたときなどに「あばらが痛い!」と感じるときに肋間神経痛が疑われることがあります。

【骨粗しょう症・脊椎圧迫骨折】

ヒトの背中の中心にあり身体全体を支えている脊椎。一般的に背骨と呼ばれる脊椎は、椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨がつながって形成されています。

骨密度が低くなり骨がスカスカになってもろくなってしまう骨粗しょう症にかかると、椎骨ももろくなります。特に頭部を支え二足歩行をおこなっているヒトの椎骨は、骨がもろくなると上からの重みでつぶれてしまいます。この椎骨のつぶれを脊椎圧迫骨折といいます。

脊椎圧迫骨折の背中の痛みは安静にしているときにはあまり感じることがありませんが、起き上がったりかがんだり日常の動作のなかで感じることがあります。背骨を上から順番に下に向かってげんこつでポンポンポンと叩いていくと、つぶれた椎骨部分に鈍い痛みを感じます。

椎間板ヘルニア

前項において脊椎(背骨)は椎骨という骨がつながって形成されているとご説明しましたが、その椎骨をつなぐクッションのような役割りをしているのが椎間板と呼ばれるものです。この椎間板がズレて外に出てしまった状態を椎間板ヘルニアといいます。

椎間板ヘルニアが胸の高さ(胸椎)で起きた場合を「胸椎椎間板ヘルニア」、腰の部分(腰椎)で起きた場合を「腰椎椎間板ヘルニア」といいます。

椎間板ヘルニアでは、背中の痛みとともに足のしびれなどを感じます。

ぎっくり背中・ぎっくり腰・寝違え

伸縮することでヒトの身体を自在に動かしている筋肉は、筋繊維(きんせんい)と呼ばれる細いゴムのようなものが束になってできています。

運動不足や過度のストレス・気温の低下・加齢などによって筋肉が固くなっている状態のときに衝撃が加わると、この筋繊維がダメージを受けることがあります。

ダメージの受け方は状況により大まかに3段階に分かれます。軽度では筋繊維に微細な断裂傷ができた状態、中等度では筋繊維が部分的にちぎれていわゆる肉離れを起こしている状態、重度になると筋繊維が完全に断裂した状態です。

この状態が首に起きると「寝違え」、背中に起きると「ぎっくり背中」、腰に起きると「ぎっくり腰」といわれる状態になります。

重い荷物を膝を曲げずに一気に持ち上げたとき・くしゃみや咳をしたとき・高い棚に置いてあるモノを無理に手を伸ばして取ろうとしたときなど、日常のよくある動作のなかで、グキッとした衝撃が走り激痛を感じたときに疑われます。

背中の痛みの症状について

前項において背中が痛いときに想定されるトラブルをピックアップしてご紹介しましたが、ご覧いただいたとおりさまざまな病気が考えられますのでその痛み方も多様です。

ここでは、その特徴的な痛みについてご紹介します。

息苦しい・咳

風邪の場合によくみられる症状ですが、心臓や血液のトラブルのときにもみられますので要注意です。

狭心症・心筋梗塞では左肩甲骨の奥の痛みとともに胸部に圧迫感があり呼吸がしづらいことがあります。また、のどがしめつけられるような感じで思わず咳こむこともあります。

急性大動脈解離では、呼吸が苦しいほどの激痛が背中に走り立っていられない状況になることもあります。

熱・吐き気

内臓の炎症による背中の痛みの場合には、熱や吐き気が伴うことも多くあります。膵臓・腎臓の急性の炎症では特に吐き気や嘔吐・発熱や発汗などが一緒に現れることがあります。

また、各内臓の癌では、単発ではなく持続性のある背中の痛みに加え吐き気や微熱・体重減少などがみられます。

こり・手の疲れ

頸肩腕症候群などでは、首から肩にかけて血流障害が起きていることが多く、肩や背中が張ったようなひどいこりがみられたり手の疲れやしびれを感じることもあります。

背中の痛みの対処法について

つらい背中の痛みは少しでも早く緩和させたいものです。どのような対処方法があるかみてみましょう。

ストレッチやツボ押しで背中の痛みを緩和

関節痛や筋肉痛の場合などはストレッチやツボ押しで背中の痛みを緩和してみましょう。

以下に効果的な方法をご紹介します。

背中のストレッチをやってみよう

  1. 1.立ったまま(椅子に真っすぐ腰かけてもできます)胸を張り、両手を後ろに伸ばします。
  2. 2.次に両手を頭上にもっていき、ゆっくり前屈します。
  3. 3.数秒停止し、またゆっくり状態を起こします。

肩甲骨の簡単なほぐし方

  1. 1.膝を軽く開いて真っすぐ立ちます。
  2. 2.両手を胸の前に突き出し、ゆっくりと力を抜いて放物線を描くような形で両腕を後ろに振り下ろします。
  3. 3.後ろの臀部辺りで両手をくっつけ肩甲骨をギュッと寄せるようにします。
  4. 4.1~3を3分程度繰り返します。(できれば1日3セットおこなうとよい)

ツボ押し・肩こり【肩井(けんせい)】

首と肩のちょうど中間地点にある肩井(けんせい)というツボです。中指を中心に3本の指でグッと肩井を押します。

ツボ押し・肩の背面痛【後渓(こうけい)】

手をグーに握ったときに現れる小指の外側の出っ張り部分を後渓(こうけい)といいます。痛い肩の側の指の後渓(こうけい)を数秒間押します。

薬でつらい背中の痛みを抑える

市販の消炎鎮痛成分を含む内服薬や外用薬の使用により、痛みの緩和が望めることがあります。内服薬は、メジャーなもので、「ロキソニン」「イブ」「バファリン」などの商品名で発売されています。外用薬では「フェイタスZαジクサス」「バンテリンコーワパップS」「パテックス」などがあります。

内科や整骨院で背中の痛みを根本から探る

やはり背中に痛みがある場合は医療機関を受診し、その痛みの原因を解明することが最も的確な対処となることでしょう。

痛みと聞くと整形外科の受診を思いがちですが、今回ご説明したように背部痛には内臓や血管によるものも十分考えられます。明らかに関節痛や筋肉痛以外が疑われる場合は、まずは内科受診をおすすめします。
また、内臓からだけではなく、最初はピリピリしていて後からブツブツが出てくる帯状疱疹という、水疱瘡ウイルスによるものもありますので、ピリピリした痛みの時には皮膚の状態をよく観察して皮膚科に相談することも重要です。

まとめ

いかがでしたか?

一口に「背中の痛み」といっても、その背後にはさまざまなトラブルが隠れていることがお分かりいただけたと思います。

是非この記事を参考にして、背中に痛みがあるときには早期に適切な対応をして大きなトラブルを防ぎましょう!

監修ドクターコメント

高橋先生

背部の痛みでやはり命に関わる疾患として一番気をつけなくてはならないのは、急性大動脈解離という、太い動脈の内側が裂けていく病気でしょう。東京都監察医務院における報告によりますと、病院に到着する前に死亡する率は61.4%で、発症してから93%が24時間以内に死亡しています。大動脈解離の合併症として、動脈の破裂や、心臓の周りに血液が溜まってショック状態になることがあるためです。背中の痛みの位置が移動していくことがあり、それは裂けている場所が広がっていることを意味しています。そのような痛みの場合には躊躇せず救急車を呼んでください。高血圧がある方は特に注意が必要です。

背中の痛みでおすすめの内科 関東編

東京国際クリニック

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Pickup 【所属学会・資格】
・医学博士、日本医師会認定産業医
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・日本循環器学会専門医
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・医師+(いしぷらす)所属
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