「胃ろう」のメリットやデメリットは? 利用する必要性はあるの?

公開日:2021/07/17  更新日:2021/07/16
「胃ろう」のメリットやデメリットは? 利用する必要性はあるの?

胃ろう」の利用目的が、延命なことについて疑問視されることがあります。ただし、胃ろうは口から栄養を摂取できない人にとっては、安心して栄養補給できる方法の1つです。今回は、胃ろうの基礎知識やメリット・デメリットについて、介護現場でのご経験を長く持ち、現在は講師として活躍されている「天晴れ介護サービス総合教育研究所」の榊原さんに解説していただきました。

榊原宏昌

監修介護福祉士
榊原 宏昌(天晴れ介護サービス総合教育研究所 介護福祉士・介護支援専門員)

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京都大学経済学部卒業後、特別養護老人ホームに介護職として勤務。社会福祉法人、医療法人にて15年間、介護現場での仕事を経験した後、2015年年4月、「介護現場をよくする研究・活動」を目的として「天晴れ介護サービス総合研究所」を設立。執筆、研修講師、コンサルティング活動に加え、ブログやfacebook、YouTubeなどでの情報発信も積極的におこなっている。

腹部に穴を開けて直に栄養を届ける

腹部に穴を開けて直に栄養を届ける

編集部編集部

まず、胃ろうについて教えてください。

榊原宏昌榊原さん

胃ろうとは、チューブで直接、胃に栄養を送るための穴のことです。腹部に小さな穴を開けて、そこに胃ろうカテーテルというチューブを通し、栄養剤を注入します。口から食べるとむせてしまって、食べ物と一緒に細菌が肺に入って炎症を起こす誤嚥性肺炎のリスクが高い人などにおこなわれます。

編集部編集部

お腹に穴を開けるということは、手術が必要なのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

そのとおりです。胃ろうを作るためには手術が必要で、内視鏡を使っておこなわれます。PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)」とも言います。入院期間も短期間で済み、手術も順調なら15~30分程度で終わります。

編集部編集部

一度胃ろうを作ると、経口摂取はできなくなるのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

いいえ。本人の状態にもよりますが、胃ろうを作ったとしても口からの食事を続けていただきたいです。理由としては、口から食べることで、食事の楽しみが保たれるからです。食事は、栄養補給だけが目的ではありませんからね。

胃ろうのメリット・デメリットを理解する

胃ろうのメリット・デメリットを理解する

編集部編集部

胃ろうを作るメリットは何ですか?

榊原宏昌榊原さん

まずは先ほど述べた誤嚥性肺炎のリスクが少なくなることでしょうか。高齢者にとって肺炎は、命に関わりますからね。なお、胃に直接ではなく、鼻からチューブを入れて栄養補給する方法もありますが、これは本人にとって違和感が強くストレスを感じることも多いため、胃ろうの方がよいのではないか、という意見もあります。

編集部編集部

他方、デメリットもあるのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

デメリットとしては、小さいながらも手術を要するという点でしょうか。自分の体に穴を開けることに抵抗を感じる人もいらっしゃいます。また、メリットで誤嚥性肺炎のリスクが少なくなると説明しましたが、睡眠時などに唾液を誤嚥して誤嚥性肺炎になることも考えられることに加え、注入した栄養剤が逆流して、それを誤嚥してしまうこともあります。さらに、口から食べないからといって口腔ケアをしていないと、かえって口の中の雑菌が増えてしまうこともあります。

編集部編集部

胃ろうを利用したからといって、100%安全というわけではないのですね。

榊原宏昌榊原さん

そうですね。そのほかにも気をつける点として、「胃ろうの周辺の皮膚がただれる」、「認知症があるとチューブを抜いてしまうことがある」、「自宅で介護する場合、家族が取り扱いを覚える必要がある」などが挙げられます。なお、一度チューブを抜くと腹部の穴が塞がってしまい、再手術を受けなければならなくなることもあります。いずれにしても、口腔ケアや栄養剤が逆流しないような姿勢の保持、胃ろう周辺の皮膚の観察、胃ろうで使う物品の衛生管理など、注意点は数多くあります。

編集部編集部

胃ろうを作ると、一部の施設が利用できなくなると聞きました。

榊原宏昌榊原さん

看護スタッフの配置などによっては、胃ろうがあると利用を断られてしまう施設も中にはあります。また、胃ろうの管理だけではなく、痰を自分で吐き出せない場合の吸引が必要になることも多いため、受け入れが難しいとされています。さらに、もともと入所していた施設に戻れなくなってしまうことや、新しい施設を探す時にも選択肢が少なくなる、ということもあり得ます。

どんな目的で胃ろうを利用するかがカギ

どんな目的で胃ろうを利用するかがカギ

編集部編集部

胃ろうについて、延命目的での利用を疑問視する声がありますよね?

榊原宏昌榊原さん

そうですね。胃ろうについては、「延命治療の一種とみなされて、おこなうべきではない」といった意見もあります。この問題の難しい点は、必ずしも本人の意向で決められるわけではない、ということですね。

編集部編集部

それは、どういうことでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

胃ろうを選択する際には、本人の判断が難しい場合が多いからです。ただし、意識を失っていて、一旦胃ろうを作ったけれど、後に回復して口から食べることができるようになったという事例もあります。つまり、胃ろうが一時的な「つなぎ」としておこなわれることもあり、「この場合は延命治療とはいえない」という意見もあります。実際、胃ろうは口から栄養をとることができない人にとって、栄養補給の方法の1つでもありますね。

編集部編集部

どんな目的で胃ろうを利用するかが大切というわけですね。

榊原宏昌榊原さん

まさにそうです。そのためにも、本人が意思表示をできるうちに、胃ろうを作ることを望むかどうかを確認しておくことも重要ですね。また、人生の最期を迎える時には、一般的に食事が段々とできなくなるということがあります。脱水にもなり、意識も失いかけてくると言われますが、これが様々な苦痛の軽減にもつながるともされています。胃ろうから栄養補給がされることで、徐々に衰えていく自然な最期を迎えにくくなる、ということも指摘されています。こうしたことからも、とりわけ終末期の胃ろうについては、本人の尊厳を損なうのではないか、といった意見もあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

榊原宏昌榊原さん

胃ろうの利用については、慎重な判断が求められます。本人と家族を中心に、ここまで見てきた内容について医療・介護関係者にもよく理解していただいて、何が最善の選択か、一緒に話し合って考えることができるとよいですね。

編集部まとめ

今回は、胃ろうの基礎知識からメリット・デメリット、そして、延命治療につながるのではないかといった論点についてのお話を伺うことができました。本人やその家族はじめ、関係者で話し合って、治療の方向性を決めていくことが大切だということがよく分かりました。