~実録・闘病体験記~ 「卵巣がんへの向き合い方を決めた3人の女性」

公開日:2021/06/14
~実録・闘病体験記~ 「卵巣がんへの向き合い方を決めた3人の女性」

中学生のころに悪性卵巣胚細胞腫瘍(あくせいらんそうはいさいぼうしゅよう)という、卵巣がんが見つかった浜崎さん。胚細胞とは、再生医療で注目されている、「いろいろな部位に分化可能な組織」のことです。摘出したがんの中には、髪の毛のようなモノに育っていた胚もあったそう。はたしてその後、どのような人生を送り、なにを希望として暮らしてきたのでしょう。20代の女性が、少女から母親へと成長した過去を振りかえります。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年4月取材。

浜崎さん

体験者プロフィール
浜崎さん(仮称)

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東京都在住、1993年生まれ。現在は結婚し一児の母。中学校の卒業を控えた学生時代に卵巣がんを発症。すぐに摘出手術を受け、抗がん剤の投与期間もあったが、まもなく定期検診で要観察を続けるだけの状態まで復帰できた。そのときの体験から医療へ従事することを決め、さらに今ではフリーライターとして、医療側と患者側、双方の目線に立った情報発信を続けている。

三輪先生

監修医師プロフィール:
三輪 綾子先生(医師・予防医療普及協会)

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2010年、札幌医科大学卒業。順天堂大学産婦人科学講座に入局。産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医。2017年より順天堂大学に非常勤助手として勤務。また、「予防医療普及協会」の理事として、女性特有の健康問題や疾患についての情報発信をおこなっている。

※三輪先生は監修医師であり、浜崎さんの担当医ではありません。

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編集部編集部

今回の症例である「悪性卵巣胚細胞腫瘍」とは、どのような病気なのでしょうか?

浜崎さん浜崎さん

当時、担当医師から受けた説明によると、「生殖器の一部が異常をきたした」とのことでした。私がまだ15歳だったので、詳細な説明は省いたのでしょう。後に「胚細胞性腫瘍の好発年齢は10代から30代」であることを知るのですが、そのときは「こんなに若い子が」と驚かれたようです。

編集部編集部

痛みや異変の自覚はあったのですか?

浜崎さん浜崎さん

痛みは全くなかったものの、下腹部の膨れが顕著でしたね。体重計に乗ったとき、おなかのぽっこりでメーターが見えないほどでした。私としては「太ったのかな」と思っていましたが、背中側から見る限り、体形に変化はないんです。衣服で隠せていたので、家族も気付きませんでした。ただ、脂肪によるおなかの出方とは違って、「明らかになにかが入っている感」がありました。

編集部編集部

受診のきっかけになったのは?

浜崎さん浜崎さん

テニス部の友だちに打ち明けたとき、「お腹にガスがたまってるんじゃない? 薬買ってみたら?」と言われ、お薬代をもらおうと親に話したことがきっかけになりました。幸いなことに「見せてみて」と言われ、私の膨らんだお腹を見た親が異常に気付き、病院受診に繋がったという経緯です。もし、母親が普通にお金を渡してくれただけだったら、さらに受診機会は遠のいていたでしょう。

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編集部編集部

最終的な診断はすぐに出ましたか?

浜崎さん浜崎さん

最初に、最寄りの内科へ行きました。結果は、「おなかに水がたまっているだけだ」とのことでした。しかし、一緒に診ていた看護師さんが、同じ女性である私のことを心配してくれたのか、後でこっそり、「婦人科を受けたほうがいい」と諭してくれたのです。そこで、私の生まれた産婦人科で診てもらったところ、「すぐに大学病院へ行ってください、おそらくすぐに入院・手術になると思います」と言われ、初めて事の重大さに気付きました。

編集部編集部

その後、どのような治療を受けることになったのですか?

浜崎さん浜崎さん

大学病院ですぐに、入院と左側の卵巣を摘出する手術が決まりました。がんかどうかは、摘出した組織を調べてみてから確定するそうで、それまで約2週間の入院です。ただ、私は直接、知らされていないんですよね。医師は母にだけ説明していました。そして、肝心の母は私の気持ちを考えてか何も言ってくれなかったので、むしろ「がんじゃなかったのかも」と思っていました。

編集部編集部

その一方、がん治療の準備は進んでいたわけですよね?

浜崎さん浜崎さん

そうなんです。心の準備なしに、いきなり「抗がん剤」でしたから、さすがに泣きました。病気も心配でしたが、なにも言ってくれない親への気持ちが複雑でしたね。また、最初の投薬時にアナフィラキシーショックが生じて、呼吸困難になったことを覚えています。ただし、お薬の種類を変えたらなんともなくて、気になっていた抜け毛も、そんなに起きませんでした。

編集部編集部

その後もずっと、入院が続いたのですか?

浜崎さん浜崎さん

いいえ。1週間くらい点滴を打ちながら入院して、その後の3週間は自宅療養でしたね。そんな生活が3カ月続いたのですが、夏休みと前後していたので、学校の単位の心配はありませんでした。ベッドで受験勉強をしていたのが懐かしいです。

編集部編集部

さすがに、抗がん剤の説明はあったのですよね?

浜崎さん浜崎さん

ケガが治りにくかったり感染症に弱くなったりするので、「今までのような生活は、難しいだろう」と言われました。医師によると、投薬中、体の免疫力が下がるそうです。なお、説明にはなかったことですが、全身がかゆくなってかいていたら、跡になって残ってしまいました。先生に相談したら、氷を当ててかゆみを抑えましょうとのことで、ずっと寒がっていた思い出があります。

編集部編集部

将来的な妊娠の可否についての説明はありましたか?

浜崎さん浜崎さん

とくに問題ないとのことでした。気になったのは、摘出した左の卵巣の中に、髪の毛や歯のようなものが散見されたことでしょうか。私は直接、見ていないものの、「悪性卵巣胚細胞腫瘍の未熟奇形腫」というそうです。なお、結婚した後のことになりますが、希望したタイミングで妊娠できましたし、子どもも健全に育っています。

編集部編集部

その後、現在までの経緯を教えてください。

浜崎さん浜崎さん

約3カ月の抗がん剤投与で治療は終了です。ただし、定期検診には通っています。私は高校卒業後に医科歯科大学へ進むことになるのですが、学内で検診が受けられるようにしてもらいました。その後に就職した大学病院や、離職後の近所の病院なども、次々と紹介してもらえました。今では、通院期間が1年に1回ほどになっています。

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編集部編集部

どうやって心の整理ができたのですか?

浜崎さん浜崎さん

泣くだけ泣いたら、前を向けました。病院では治療の準備がどんどん進んでいくので、受けいれざるをえないですよね。むしろ、親のほうが不安定だったような印象です。また、メインで付いてくださった女医さんは信頼できるベテランで、私がこの道を目指すきっかけになった方です。カッコ良さに憧れましたね。治療中の心の支えになってくれました。

編集部編集部

治療の転機はどこにあったと思いますか?

浜崎さん浜崎さん

私の場合、友だちに打ち明けたのが大きかったようです。やはり、自分だけで抱えていると、なにごとも進まないのではないでしょうか。一方、他人に対するアクションを起こすと、目の前に道が開けてきます。必ずしも近道ではなかったかもしれませんが、早めに第一歩を踏み出せたことが大きかったです。

編集部編集部

インターネットでの情報収集についてどう考えますか?

浜崎さん浜崎さん

今、私がこの年でがんになったら、たぶんインターネットで調べると思います。しかし、第一声を、まずは身近な誰かに投げかけてほしいですね。私の場合、友人に“相談”というより、ネタ的な軽いノリで話したのですが、それでも運命が動きだしました。

編集部編集部

当時を振り返って、現在の心境は?

浜崎さん浜崎さん

投薬治療を終えてから今まで、とくになにかが起きたわけではないんです。ですが、がんを患っても普通に生活できることが伝えたくて、このインタビュー企画に応募しました。卵巣が片方なくても子どもは産めます。また、こういう経験をすると、「がん検診の必要性」が身に染みますよね。これも、伝えたいメッセージのひとつです。

編集部編集部

がん検診は若くても受けるべきですか?

浜崎さん浜崎さん

正規に就職していないと、40歳過ぎの特定健診まで費用負担が得られません。それでも自費でもいいから、なにかの機会にがん検診を受けていただきたいですね。がんは誰でもかかる病気になってきましたし、「40歳以上」という好発年齢の実態も変わってきているのではないでしょうか。妊娠時期と重なる“若い女性”が安心して暮らせる仕組みを期待します。

編集部編集部

保護者は子どもの病気について、目を光らせるべきでしょうか?

浜崎さん浜崎さん

自分にも子どもがいますが、難しい問題ですね。子どもの年代によっては、反発を招きかねないと思います。親から詮索するより、なんでも話しやすい環境を整え、子どもから自発的に相談できるような家庭にしてあげることが、大切なのではないでしょうか。たった1回のサインでは拾いきれないかもしれませんが、たびたびサインが出れば、それだけ気付きやすいでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

浜崎さん浜崎さん

重篤な病気の診断結果を受けると、誰でも落ち込むと思います。そんなとき、自分で調べると先入観をもってしまいますので、まずは、視野を広くしたままで、リアルな人に接してみてはいかがでしょう。きっと、誰かが支えになってくれるはずです。

三輪先生

監修医師からのコメント:
三輪 綾子先生(医師・予防医療普及協会)

卵巣の腫瘍はある程度大きくなってから自覚症状を認める方が多いのが特徴です。
大きくなるスピートが早いものも、遅いのものもあります。「太ったのかな?」と思って受診の機会を逃してしまう方も少なくありません。おかしいと思ったら婦人科を受診してみてください。婦人科の病気は若くして発症する方もいらっしゃいます。
万が一若くしてがんがみつかった場合、将来出産したいのかによっても治療法を選択できる場合があります。
浜崎さんやご家族が乗り越えてきた経験を共有してくださり、この体験談によって励まされる方もきっといらっしゃると思います。ありがとうございました。

編集部まとめ

出会いが人生を動かす。信頼できる人に相談し、前を向いていけるような支えがあったことが、浜崎さんにとってとても大きかったようですね。卵巣がんの場合、検診での早期発見も難しいと言われますが、なにかおかしいな、と思った場合は過信せず、医療機関の受診を考慮しましょう。