臨床検査技師と病理医は何が違うの?

公開日:2021/04/05  更新日:2021/10/13
臨床検査技師と病理医は何が違うの?

私たちが体に不安を持った時にお世話になっている病院では、様々な職業の方が働いており、チームとなって医療を提供しています。診察室で医師や看護師の方と会うことはありますが、それ以外の医療従事者の方もたくさんいると聞きます。また、小説やドラマで「病理医」という名前を耳にする機会もありますが、どのような仕事をされているのでしょうか。「臨床検査技師」の内田さんにお話を伺いました。

内田さん

監修臨床検査技師
内田 佑介(臨床検査技師)

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昭和医療技術専門学校卒業。医療機器の営業、医療法人での渉外を経て新薬開発業務に進む。データマネージャーとして勤務をした後、国の指定難病である重症筋無力症を発症。その経験から医療情報のあり方に考えを至らせ、早期発見、早期治療の重要性をコラムとして執筆している。現在は、臨床検査技師、フリーランスのコラムニストとして活動中。

臨床検査技師がおこなう「検体検査」と「生理機能検査」とは

臨床検査技師がおこなう「検体検査」と「生理機能検査」とは

編集部編集部

はじめに、臨床検査技師について教えてください。

内田さん内田さん

臨床検査技師は、看護師や薬剤師と同じく、国家資格となります。3年制の専門学校もしくは4年制の大学などに通って国家試験の受験資格を得ます。国家試験に合格した人は臨床検査技師と名乗ることができるようになります。

編集部編集部

具体的に、どのような仕事をおこなっているのですか?

内田さん内田さん

大きく分けると、「検体検査」と「生理機能検査」の2つです。検体とは、患者さんから採取したさまざまな物、たとえば血液や喀痰(かくたん)、尿、便、細胞などのことですね。それらを化学的に分析したり顕微鏡下で観察したりして、患者さんの体中で起こっている変化を見ていきます。血液検査や尿検査はもちろん、血液型を調べたり、アレルギーの有無を調べたりします。

編集部編集部

生理機能検査についてはどうでしょう?

内田さん内田さん

生理機能検査とは、心電図や脳波、超音波検査など、患者さんの体に触れておこなう検査をいいます。測定機器を用いて検査をし、看護師が心電図検査をしたり医師が超音波検査をおこなったりすることもありますが、生理機能検査の多くは一部を臨床検査技師が担当します。

編集部編集部

ほかに、どのような仕事がありますか?

内田さん内田さん

検査を目的とした採血をおこなうことができます。ただし、体の表面にある静脈からのみ採血が可能です。また、喉や鼻の奥から検体を採取することもあります。

編集部編集部

名前の通り“検査”をおこなう職業なのですね。

内田さん内田さん

そうですね。しかし、放射線を使ったX線撮影、CT撮影を使った画像診断や、患者さんの負担が大きい内視鏡検査などはおこなうことができません。また、骨髄や臓器などから検体を取ることはできません。臨床検査技師は、おこなえる検査には法律で制限があります。

病理医は臓器や細胞のエキスパート

病理医は臓器や細胞のエキスパート

編集部編集部

では、病理医とはどんな職業なのですか?

内田さん内田さん

病気の原因を解明する医師になります。医師の国家資格を持っており、組織診断、細胞診断など体の内部の異変を診断する専門家です。病理解剖をおこなうので、解剖学のエキスパートといえるでしょう。

編集部編集部

解剖学のエキスパートですか!

内田さん内田さん

臓器といった肉眼で見える物から、細胞といったミクロ下の物まで、その変化を見ます。顕微鏡を使って病気を見抜く眼を持つ医師と言えるでしょう。顕微鏡で細胞などを見る際には染色が必要ですので、さまざまな染色に精通しています。染色のための化学技術にも卓越した知識を持ちます。

編集部編集部

医師ですが、診察はおこなわないのですか?

内田さん内田さん

一般的には病理医として勤務している医師が、外来や病棟などで診察をする事はないと思います。しかし、病理検査の責任を持つ立場なので、臨床検査技師や看護師などに検査補助業務の指示を出します。

編集部編集部

病理検査とは何でしょうか?

内田さん内田さん

がんなどの病気になると体の細胞や臓器に変化が生じることがあります。そうした変化を観察することで、病気の有無を確認する検査が病理検査です。針で臓器を採取したり喀痰を採取したりして、がん細胞があるかを判断する検査などがあります。

病理医と臨床検査技師のチーム体制で検査をおこなう

病理医と臨床検査技師のチーム体制で検査をおこなう

編集部編集部

臨床検査技師も病理医も、検査が主な業務なのですね。

内田さん内田さん

そうですね。確かに検査をおこなっているのですが、病理医は検査の結果を主治医にフィードバックするという責任があります。たとえば、臨床検査技師には認定試験に合格した認定病理検査技師や細胞検査士という「がん細胞」を見分ける能力と知識をもった検査技師もいます。しかし、病気の判断や診断に繋げるためには病理医が必要となります。また、検体を処理したり、組織標本を作ったりするのは検査技師の役割です。そうした意味で病理検査をおこなう臨床検査技師は、病理医の業務を補助する事で、病理医にしか出来ない仕事へ専念していただく為の業務をしているとも言えます。

編集部編集部

臨床検査技師の検査は、医師にはできないのでしょうか? 生理機能検査などは医師がおこなっているようなイメージです。

内田さん内田さん

医師は全ての医療行為をおこなうことができます。それは診察や検査、投薬を含めた全ての医療行為について言えることです。たとえば、看護師や臨床検査技師ではできないX線撮影でも、医師はおこなうことができます。また、骨髄から検体を採取する行為など、医師にしか認められていない検体採取や検査もあります。医師がおこなう検査のうち、侵襲性の低い(安全性の高い)検査のみを、臨床検査技師がおこなっていると考えるとわかりやすいかと思います。

編集部編集部

臨床検査技師と病理医が一緒におこなう検査はありますか?

内田さん内田さん

病理医と臨床検査技師がともに同じ顕微鏡画像をチェックする事もあります。顕微鏡を覗き込むレンズが複数付いている特殊な顕微鏡で、4人以上が同時に見ることの出来る顕微鏡もあります。また、病気によって亡くなってしまった方の原因を探り、今後の医学に繋げるための病理解剖(剖検)という業務があります。この業務は病理医が主におこない、その補助を臨床検査技師がおこないます。

編集部編集部

最後に読者へメッセージがあれば。

内田さん内田さん

現代の医学は非常に速いスピードで進化を続けています。10年前に最前線だった検査が、現在では時代遅れという事も少なくありません。血液検査だけを挙げても、現在では6000種類以上の検査項目があると言われます。そうした多くの検査を一人が網羅する事は出来ません。医師を中心に、医療従事者がチームを組んで検査をおこなうことで、患者さんにとって最も適切な治療へと繋げることが大切だと思います。皆様が検査を受けるときに、どんな小さなことでも疑問に思う事や不安に思う事があったならば、しっかりと担当者に聞いてみてくださいね。

編集部まとめ

患者として病院を受診しても、あまり会うことのない医療従事者のお仕事を紹介していただきました。さまざまな職業の方たちとの連携によって医療体制が構築されていることは、私たちの安心にも繋がりますね。病理検査では、がんの発見や診断に重要な役割を担っているのですね。早期発見や早期治療のためにも、役割分担によるチーム医療の重要性を知ることができたと思います。