痛みのない血尿のほうが危険!? これってホント?

公開日:2021/06/10  更新日:2021/06/11

痛みと出血は体の危険を知らせるサインといえるでしょう。それが体内であっても、意味するところは変わりません。では、「サインが1つしか出てない」場合、それだけ軽度と受け取っていいのでしょうか。この問いに、「神楽坂泌尿器科クリニック」の室宮先生が回答します。

室宮 泰人

監修医師
室宮 泰人(神楽坂泌尿器科クリニック 院長)

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帝京大学医学部卒業。東京女子医科大学病院での研修後、同病院や一般医院にて泌尿器科を中心に臨床を重ねる。2020年、父親が営んでいた銭湯を建て替える形で、東京都新宿区に「神楽坂泌尿器科クリニック」開院。対話を大切にした相談しやすいクリニックをめざしている。日本泌尿器科学会専門医。日本泌尿器内視鏡学会、日本抗加齢医学会、日本性感染症学会、日本臨床腎移植学会、日本透析医学会の各会員。

がんの頻発箇所には神経が通っていない

男性医師

編集部編集部

尿に血が混ざるって、どうしてなんでしょう?

室宮先生室宮先生

血尿の原因は主に4つあり、①膀胱や尿道、尿管の炎症、②悪性腫瘍、③結石、④腎臓の炎症です。いずれも、泌尿器からの出血を伴います。ところが、②悪性腫瘍と④腎臓の炎症に関しては、必ずしも痛みを伴いません。とりわけ、悪性腫瘍のがんが怖いですね。

編集部編集部

「がん」なのに痛くないのですか?

室宮先生室宮先生

初期がんの多くは、痛みのセンサーがない“粘膜”に生じるため、痛くないのです。がん組織が周辺に広がってくると、そのときに痛みを感じることがあります。しかし、それだけ進行を許しているということですから、「痛みのない段階での発見」が問われるでしょう。

編集部編集部

つまり、痛みがないのに血尿が出たらがんが進行している可能性があると?

室宮先生室宮先生

そういうことになります。ただし、上記のようながんによる出血は、出たり出なかったりするのです。血尿が収まり、痛みもないから「治った」とは、考えないでいただきたいですね。一度でも血尿があったら、きちんと調べましょう。

編集部編集部

血尿なのか、単に尿が濃いのか、素人にはわかりません。

室宮先生室宮先生

がんの場合の血尿は、一目瞭然です。仮に見分けがつかなかったとしても、やはり「疑わしかったら調べる」に尽きるのではないでしょうか。がんなどの重大な病気は、発見するのと同様、「病気ではなかった」と確認する除外診断も重要です。「気のせいだったら迷惑かな」とは思わず、どちらであれ、結論を出すことに意味があります。

泌尿器系のがんについて知っておく

ホワイトリボン

編集部編集部

泌尿器系のがんについて、簡単に説明してください。

室宮先生室宮先生

わかりました。膀胱がんは、尿をためる袋の内部にできたがんです。血尿のほか、頻尿や、おしっこをするときに痛みを感じることがあります。膀胱がんの罹患(りかん)者数は国立がん研究センターによると1年あたりおおむね2万人で、40歳を超えると顕著になり、高齢になるほどリスクも高まります。

編集部編集部

膀胱がんの原因は?

室宮先生室宮先生

さまざまにありますが、「喫煙との有意な関連性」が明らかになっています。喫煙歴のある40歳以上の方は、男女問わず、定期的な検査を受けたほうがいいかもしれません。血尿が一度でも出ていたら、なおさらのことです。なお、膀胱がん検診は、健康診断や特定健診のメニューに含まれないことが多いので、人間ドックのオプションを活用してはいかがでしょう。

編集部編集部

前立腺がんも、よく耳にするがんです。

室宮先生室宮先生

こちらは男性のみが発症するがんですね。前立腺肥大症と混同しがちなのですが、前立腺肥大症は尿道に向けて進行するため、残尿感や頻尿を自覚しやすくなります。他方の前立腺がんは、尿道から外へ向かって進行します。したがって、初期の自覚をほぼ伴いません。この段階で発見するとしたら、「PSA検査」という血液検査しかないでしょう。50歳を超えたら、自主的に検査してみてください。

編集部編集部

前立腺がんの原因は?

室宮先生室宮先生

危険因子としては食生活の欧米化で、ことに肉食との関係が疑われているものの、いまだ研究段階です。有効な予防方法は見つかっていないので、PSA検査でスクリーニングしていくしかないでしょう。

「あのときからはじまっていたのか」とならないために

頭を抱えた男性

編集部編集部

とにかく、血尿が出たら病気を疑えということですね?

室宮先生室宮先生

なにかしらの病気があるはずなのですが、その約4割以上は「原因不明」と位置づけられます。原因不明といっても、そのほとんどは腎炎で、「わざわざ腎臓に針を刺して検査する必要が感じられず、経過観察で十分」と判断されたようなケースですね。もちろん、採血検査などで、腎機能がしっかりしているとわかっていればの話です。

編集部編集部

健康診断の尿検査って、なにを調べているのでしょう?

室宮先生室宮先生

血尿、たんぱく尿、白血球の量、尿の比重などです。なお、膀胱がんのチェック機能としては有効ですが、前立腺がんのスクリーニングにはなっていません。

編集部編集部

尿の色の濃さは、なにかの病気の指標になりますか?

室宮先生室宮先生

「本当に、単純な色の変化なのか」ということに尽きると思います。濃い黄色というより、茶褐色に近かったら、より血尿が疑われます。尿の色はご本人以外の指摘を受けにくいので、自分で動くしかありません。疑わしかったら、遠慮なくご相談ください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

室宮先生室宮先生

がんが発見された患者さんの中で、「血尿が出なくなったため、とくに気にしていなかった」という方は、相当数いらっしゃいます。気にしていなかった期間が長ければ長いほど、それだけ進行を許しているかもしれません。一度でも赤い尿が出たら必ず受診してください。

編集部まとめ

粘膜に発症した泌尿器系のがんは、必ずしも痛みを伴わず、静かに進行していくとのこと。そして、過去に1回でも血尿が出た場合、その時点で「がんの発症」を疑うべきです。加えて前立腺がんに至っては、「PSA検査」という特殊な血液検査でしか、基本的に早期の発見ができません。体内のがんは外傷と異なり、「血が止まった」=「治った」ではないのです。心当たりのある方は、早々に調べておいたほうがいいでしょう。

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神楽坂泌尿器科クリニック

神楽坂泌尿器科クリニック
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