花粉症を完全に治したい!そんな方法あるの?

公開日:2021/06/04  更新日:2021/07/18
花粉症を完全に治したい!そんな方法あるの?

春先に発症しやすい「花粉症」。軽症やなりかけの花粉症予備軍も含めると、相当数の人が花粉に悩まされているはずです。そこで問われるのが、花粉によるアレルギーの克服方法でしょう。はたして、一生にわたって続く効果的な治療方法は存在するのか。「おくクリニック」の奥先生を取材しました。

奥先生

監修医師
奥 雄介(おくクリニック 院長)

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大阪医科大学医学部卒業。大学病院や国立病院などの耳鼻咽喉科・頭頸部外科で研修を積んだ後、各病院の医院や医長を勤める。2018年、培ってきた経験を地域医療に反映すべく、埼玉県さいたま市に「おくクリニック」開院。日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医、厚生労働省補聴器適合判定医師、日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴担当医、日本めまい平衡医学会認定めまい相談医、日本東洋医学会認定漢方専門医。

医療で抑えるにしても、一長一短の選択肢

医療で抑えるにしても、一長一短の選択肢

編集部編集部

そもそも花粉症って、完全に治るものなんですか?

奥先生奥先生

結論からすると、全員が治る治療はありません。比較的「治る」イメージに近い治療方法として「舌下免疫療法」や「皮下免疫療法」が挙げられます。舌下免疫療法は内服による治療ですが、スギとダニアレルギーに対応薬があり、皮下免疫療法は注射が必要となります。さらに、効き目の個人差や、症状がぶり返すケースもあります。

編集部編集部

舌下免疫療法って、アレルゲンのトローチを舐めるんでしたっけ?

奥先生奥先生

錠剤を舌の下に置いて溶かしていきます。免疫が反応しないよう、アレルゲンの成分を含んだ錠剤を使って、徐々に慣らしていくようなイメージでしょうか。アレルギー症状を治したり、長期にわたり症状を抑えたりする効果が期待でき、症状が完全に抑えられない場合でもアレルギー症状を和らげる効果が期待できます。3年以上の治療継続が推奨されており、8割弱の人が治療の効果を感じると言われています。5歳以上から適応可能ですし、患者さんの体への負担や長期的な視点でみると、お子様も含めていい治療方法のひとつです。

編集部編集部

ほかに治療法はありますか?

奥先生奥先生

下甲介粘膜焼灼術(かこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ)」といって、レーザーで鼻の粘膜表面を焼くことでアレルギーの症状を抑える方法があります。ほかに鼻水を分泌する神経を切断する方法などもあります。しかし、どちらも鼻だけに限定された効果なので、目や皮膚などには関係ありません。また、レーザーで焼かれた患部は、自然治癒力によっていずれ元に戻るため、効果が永遠に続くわけではありません。

編集部編集部

完治が望めないなら、手軽な市販薬で済ませたいのが本音です。

奥先生奥先生

たしかに、そう言いたい気持ちも理解できます。ただスプレータイプの市販薬の多くは、「薬剤性鼻炎」を起こす可能性があるため、長期の使用は推奨できません。1週間程度の短期使用ならまだしも、常用するようになると問題ですね。やはり専門の医療機関で、その人に合った治療方法を、「ご一緒に考えていく」のがよいかと思います。

生活で抑える工夫も必要

生活で抑える工夫も必要

編集部編集部

新型コロナウイルスの影響で、マスク着用が常用化しましたよね? 花粉症対策にもなっていますか?

奥先生奥先生

そうですね。マスクは花粉の曝露(ばくろ)防止にも一役買っています。マスク以外の花粉対策としては、空気清浄機の活用といった「アレルゲンを取りこまない」工夫も重要でしょう。ただし、「何に対してのアレルギー」なのかを知ったうえで工夫しないと、無為に終わることがあります。

編集部編集部

花粉症とばかり思い込んでいたら、じつはダニアレルギーだったとか?

奥先生奥先生

そうです。大抵は自覚があるので間違いにくいかもしれませんが、花粉症だけでなく、ほかのアレルギーを持っていることも多くあります。これは血液検査を受けていただければ、はっきりします。自身のアレルギーがわかっていれば、事前の対策が可能になりますよね。

編集部編集部

花粉症といえば、大抵はスギですよね?

奥先生奥先生

春はスギが代表格であるものの、ほかの季節も含めて花粉にもいろいろあります。なお、アレルギー症状の起きにくいスギが開発、育成されているようです。どこまで普及していくのかはわかりません、このような社会的な取り組みも、「花粉症知らず」に向けた動きといえるでしょう。

編集部編集部

同じくコロナで、衣服をはらってから入室するなど、いろいろと勉強させられました。

奥先生奥先生

生活習慣を見直すことも、花粉症対策の一環ですね。まだ花粉症へ至っていない人も同様に、アレルゲンの持ちこみを避ける必要があるでしょう。アレルゲンへの曝露が一定量を超えると、そのタイミングから花粉症になると考えられています。

1つの方法に固執する必要はない

1つの方法に固執する必要はない

編集部編集部

根治が難しいとしたら、問われるのは予防ですよね?

奥先生奥先生

花粉症シーズン前の対策、専門的には「初期療法」と言います。諸症状の上昇カーブを、早い段階から“なだらか”にしていくことが目的です。予防という言葉には「症状ゼロ」というイメージがありますから、少し違ったニュアンスかもしれません。具体的には、点鼻薬や内服薬を花粉が飛び始める2週間前くらいから使用していきます。

編集部編集部

ピークの判断は、報道や天気予報などを参考にするのでしょうか?

奥先生奥先生

よくメディアで報じられるのは「スギ」ですよね。ところが、人によってアレルゲンは異なりますし、花粉量も年ごとに変わります。ですから、「今年はどうしましょうか」といったご相談を毎年、医師と重ねていってもいいと思います。画一的に「コレが効く」と決めつけるのではなく、「今年はコレで乗り切ろう」という柔軟な対応です。

編集部編集部

あるときから、アレルゲンが変わるかもしれないですしね?

奥先生奥先生

そのとおりです。逆に、何もしないで花粉症が治まることは少ないのです。医師と相談せず、毎年、決まり事のようにお薬を使い続けると、前述した市販薬などはお薬の副作用が心配されます。なお、医院で処方するお薬は、眠気など副作用のリスクが低いものも使用できますのでご安心ください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

奥先生奥先生

「完治」のみに期待せず、「毎日をどう快適に過ごすのか」という観点で、花粉症に向き合ってみてはいかがでしょうか。なお、アレルギー性鼻炎の有病率はもはや50%程度にまで上昇しています。「自分はかからない」と思いこむのではなく、「いつか通る道」くらいの意識が必要かもしれません。どのような治療方法が自分に合っているのか、かかってしまった人もこれからの人も、検討してみてください。

編集部まとめ

医療にはもともと「完全」という言葉がなじみません。どんな結果に終わるのか、人によって違うからです。ただし、一番根治に近く、なおかつ、スギとダニアレルギーに限るなら、舌下免疫療法が最有力候補とのこと。逆に非推奨な戦い方は、市販の点鼻薬を常用することでした。まずはこうした正しい知識を、最寄りの医院で入手してみてはいかがでしょうか。クリニックの目的は、治療に限りません。

 

花粉症、鼻づまり、くしゃみが止まらない症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

医院情報

おくクリニック

おくクリニック
所在地 〒331-0064 埼玉県さいたま市西区佐知川228-6
アクセス JR「大宮駅」 バスで20分
診療科目 耳鼻咽喉科、漢方内科