FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 骨折したとき、筋肉が衰えないためにはどうしたらいい?

骨折したとき、筋肉が衰えないためにはどうしたらいい?

 更新日:2023/03/27
骨折したとき、筋肉が衰えないためにはどうしたらいい?

骨折すると筋肉が衰えると聞きますが、はたして本当にそうなのでしょうか。また、骨折が原因で筋肉が衰えるのだとすれば、対策する術はあるのでしょうか。筋肉が落ちるメカニズムや食事や運動などによる予防方法について、「理学療法士」の平井さんに教えていただきました。

平井一真

監修理学療法士
平井 一真(理学療法士)

プロフィールをもっと見る

理学療法士として総合病院や訪問看護ステーションでリハビリテーション業務に携わった後、資格を活かした医療や介護系のWebライターとして活動。根拠に基づいた記事執筆を得意としており、様々なWebコンテンツにて執筆実績多数。理学療法士。福祉住環境コーディネーター2級、食生活アドバイザー3級。

骨折して動かなくなると筋力が衰える

骨折して動かなくなると筋力が衰える

編集部編集部

骨折すると筋力が衰えると聞きましたが、本当ですか?

平井一真平井さん

骨折したからといってすぐに筋力が衰えるということはありません。しかし、骨折を治療する際にギプスで固定したり、負荷がかからないよう安静にしたりします。治療によって動かさなくなることで筋力が衰えてしまうわけですね。

編集部編集部

衰える筋力は骨折した部分だけですか?

平井一真平井さん

骨折した部位を固定していれば、その部位の筋力はもちろん衰えていきます。しかし、足を骨折して歩けなくなったり、背骨を骨折して寝たきりになったりすると、全身の筋力が衰えていく可能性も考えられるでしょう。

編集部編集部

なぜ、骨折した部位以外の筋力も衰えるのでしょうか?

平井一真平井さん

人の身体は地球上で生活している限り、常に重力がかかっています。そのため、立ったり歩いたりしている時、普段から重力に抗うため、自然と筋力を使っているのです。つまり、骨折して活動量が低下したり、寝たきりになったりすると、重力に抗う筋肉を使わなくなって、骨折した部位以外の筋肉が衰えてしまいます。

骨折した箇所に負担がかからないように運動を

骨折した箇所に負担がかからないように運動を

編集部編集部

骨折しても筋肉が衰えないよう予防するには、どうすればいいのでしょうか?

平井一真平井さん

筋肉が衰えないようにするためには、骨折した部位以外を使う運動を積極的におこなうといいでしょう。必要以上に安静にせず、身体に負荷をかけて筋力を維持します。ただし、骨折の部位によっては全身の運動を制限している場合もあるため、医師に確認してからおこなってください。

編集部編集部

骨折している部位の運動をすることはできませんか?

平井一真平井さん

骨折した部位に負担をかけないようにすれば運動可能なケースもありますが、手術や治療の条件に左右されます。例えば、脛(すね)を骨折した後に手術して膝(ひざ)を固定している場合、膝の曲げ伸ばしができないので運動することは難しいでしょう。

編集部編集部

骨折してからどれくらい経てば、運動をしてもいいですか?

平井一真平井さん

医師に確認して問題がなければ、なるべく早く運動を始めた方がいいでしょう。完全に寝たきりの状態になると、1日で全身の筋力の1〜3%、1週間で10〜15%の筋力低下が生じるといわれています。一度、筋肉が衰えると、新たに筋肉をつけるのは大変です。そのため、なるべく衰えてしまわないように可能であれば、早期から運動をおこないましょう。

運動だけではなく食事にも気をつけて

運動だけではなく食事にも気をつけて

編集部編集部

運動以外に気をつけた方がいいことはありますか?

平井一真平井さん

運動以外に気をつけてほしいことは食事です。とくに、筋肉の主成分である「タンパク質」を、意識的に摂取するよう心がけましょう。いくら運動をしても、筋肉をつくる材料がなければ効果はありません。それどころかタンパク質が乏しい状態での運動は、筋肉を分解してしまいかねません。そのため食事面では、積極的に筋肉の材料となるタンパク質を摂取する意識をもちましょう。

編集部編集部

1日にどれくらいのタンパク質を摂取すればいいのでしょうか?

平井一真平井さん

厚生労働省が推奨しているタンパク質量は、「体重1kgあたり0.66g/日」です。少なくともこの量を下回らないようにした方がいいでしょう。しかし、実際には運動習慣や元々の筋肉量によって、筋肉を維持するために必要なタンパク質量は異なります。アスリートやボディビルダーは、体重1kgあたり1.2〜1.7gを摂取した方がいいとされる報告があります。

編集部編集部

タンパク質以外に摂取した方がいいものはありますか?

平井一真平井さん

タンパク質以外には、「ビタミンD」が骨折の回復と筋肉の維持に効果的という研究があります。ビタミンDは太陽を浴びることによって体内で生成されるビタミンですが、室内で過ごす時間が長い人や、日照時間が短い地域に住んでいる人は不足しがちです。その場合は、食事やサプリメントで摂取するといいでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

平井一真平井さん

骨折しているのに運動なんかしたくないと思うかもしれません。ですが、一度、筋肉が衰えてしまうと、元の筋肉量まで戻すのは大変です。医師に活動量を確認して、可能な範囲で積極的に運動をして、筋肉が衰えないようにしましょう。

編集部まとめ

骨折によって二次的に筋肉が衰えてしまうことがあるようです。完全に寝たきりで安静にしてしまうと、筋肉は刻々と衰えてしまいます。もし骨折してしまったら、安静にするだけではなく、運動や食事に気をつけて筋肉が衰えないように工夫しましょう。

この記事の監修理学療法士