「納豆が不妊症に効果的」これって本当? 食生活と妊娠に因果関係はあるの?

公開日:2020/12/10

ときにスーパーフード的な扱いを受ける「納豆」。この手の情報にはデマや自己賛美が含まれるものの、なぜか納豆となると、信心のような感情を抱きます。はたして、生命の育みと納豆に、科学的な結びつきはあるのでしょうか。「小塙医院」理事の小塙先生を取材しました。

小塙 理人

監修医師
小塙 理人(小塙医院 理事)

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千葉大学医学部卒業。東京都立大塚病院にて初期研修、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室入局。大学病院の産婦人科勤務後、独立行政法人国立病院機構埼玉病院、済生会宇都宮病院にて後期研修を受け、2019年から「医療法人小塙医院」の理事に就任。不妊症や人工受精、体外受精の最新情報や手技を常に追求し診療をおこなう。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本女性医学学会、日本性感染症学会の各会員。

効能を示唆する文献はあるものの、摂りすぎに注意

効能を示唆する文献はあるものの、摂りすぎに注意

編集部編集部

実際、妊娠確率を上げるような食べ物ってあるのでしょうか?

小塙先生小塙先生

納豆に含まれるビタミン、イソフラボン、葉酸、亜鉛、セレンなどの成分は、妊娠を考えている女性にとって有益な効果をもたらす可能性があります。

編集部編集部

それは朗報ですね、効用をひとつひとつ教えてください。

小塙先生小塙先生

ビタミンCやEには、子宮内膜の血流を増やし、妊娠に適した子宮内膜にする効果が期待できます。次に、大豆に多く含まれるイソフラボンですが、アメリカのハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、追跡調査の結果、「大豆摂取量と妊娠率との間に正の関連性があった」と結論づけました。具体的には、ホルモンバランスを整える効果があるとされています。

編集部編集部

納豆に含まれるほかの成分についてもお願いします。

小塙先生小塙先生

葉酸は胎児の先天性障がいの予防に効果的で、厚生労働省も摂取を推奨しています。加えて、配偶子形成や受精にもいい影響を与えるとされています。また、亜鉛は多くのタンパク質の構造維持作用や抗酸化作用をもちます。亜鉛摂取で妊娠までの時間短縮や、体外受精での着床能改善を示唆する文献があります。最後はセレンですが、抗酸化作用により、細胞の酸化や老化を防ぐ役割が期待できます。

編集部編集部

相反する研究などはないのでしょうか?

小塙先生小塙先生

もちろんあります。一例としては、「イソフラボン摂取と妊娠率には相関がない」という文献ですね。また、男性の場合、「イソフラボン摂取により精子の濃度が低下する」という報告があったり、「精子には影響がない」という文献が出されたりで、明確なことは言えません。ただし、女性の不妊治療に限ると、「イソフラボンによる大きなデメリットはない」と考えられます。

編集部編集部

イソフラボンについては、未知数なところがあると?

小塙先生小塙先生

問題なのは「摂りすぎ」でしょう。内閣府の「食品安全委員会」は、大豆イソフラボンの摂取目安量を公表しています。それによると、大豆イソフラボンを摂取できるのは、70mgから75mgが「1日の上限値」です。日本人は他国居住者と比べ、もともとイソフラボンを多く摂取していますので、「1日納豆1パック」摂れば十分でしょう。ちなみに、納豆1パックに含まれている大豆イソフラボンは、30mgから35mgです。

世界から学ぶ食生活の知恵

世界から学ぶ食生活の知恵

編集部編集部

納豆以外はどうでしょう、重要な食べ物はありますか?

小塙先生小塙先生

地中海食」というキーワードをご存知でしょうか。「野菜や果物、ナッツ類、豆類など、抗酸化作用の期待できる未精製穀物が豊富」、「動物性脂肪は少なく、オリーブ油を多用」、「オメガ3脂肪酸を含む魚類の料理がメイン」、「乳製品や肉類は控えめ」といった特徴が挙げられます。地中海食は、いろいろな病気の死亡率をはじめ、循環器疾患やがん、認知症、糖尿病などの発症リスクも低下させることがわかってきました。もちろん、不妊症にも期待できます。

編集部編集部

参考になりますが、日本人は米が主食ですよね?

小塙先生小塙先生

炭水化物については、前述した、ハーバード公衆衛生大学院の研究が有名で、25歳から42歳の“妊娠を望む”女性看護師10万人以上のコホート調査をおこないました。それによると、炭水化物消費量と排卵障害による不妊症のリスク増加には、有意な関連性があったそうです。また、肉食による血糖負荷増加も関係しているようです。

編集部編集部

困りました、納豆とお米はセットですよね?

小塙先生小塙先生

ですから、なおのこと、「毎食納豆」のような偏食は避けるべきでしょう。野菜や果物、魚料理にも目を向けてください。また、納豆に限定する必要もなく、豆腐などの大豆からつくられた食材からもイソフラボンは摂取できます。

編集部編集部

「ばっかり食べ」がゴールではないわけですね?

小塙先生小塙先生

結局のところ、食事に関しては、「さまざまな種類をバランスよく」という点に落ち着くのでしょう。個人的には、着床と関係している「ビタミンD」の摂取を推奨しているものの、「ばっかり」という意図ではなく、不足を補う「プラスオン」が本意です。とくに女性の場合、美肌意識からか日光を浴びないため、ビタミンD不足が懸念されます。

受診の目的は、治療や検査に限らない

受診の目的は、治療や検査に限らない

編集部編集部

食生活は、不妊症でなくても相談したいところです。

小塙先生小塙先生

ご相談は大歓迎です。各医療機関によりますが、敷居の高さを感じる方は、無料でのオンライン相談でアプローチしていただく方法もあります。ほか、公式サイトのQ&Aコーナーや、公式LINEアカウントもご活用ください。

編集部編集部

食事以外のアドバイスもいただけますしね?

小塙先生小塙先生

食事、運動、睡眠などのライフスタイル全般も、遠慮なくご相談ください。一般的に「好ましい」とされている習慣などに加え、「妊娠できる体づくり」といった重要なアドバイスも可能です。当院では、さまざまな患者さんからいただいたご質問をベースに作成した「WEBセミナー」も定期的に開催しています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

小塙先生小塙先生

食生活の見直しが「妊活にプラスの効果をもたらす」ことは間違いありません。好きなものだけを摂取していると、知らず知らずのうちにマイナス効果が蓄積されてしまうでしょう。一般論ではなく、みなさまのバックグラウンドも加味してご助言いたしますので、専門家をご活用ください。

編集部まとめ

納豆が不妊対策に効果をもたらす可能性があるということがわかりました。ただし、摂りすぎによる弊害など、検証が十分におこなわれていないファクターも存在しています。あえて偏食に走るより、「1日納豆1パック」程度の“プラスオン”が理想的なのでしょう。栄養素は、胎児や母体を形成する「日々の要」です。素人判断せず、専門家の知見を取り入れてください。

医院情報

小塙医院

小塙医院
所在地 〒311-3435 茨城県小美玉市田木谷169-3
アクセス JR常磐線「石岡駅」 車で15分
JR常磐線「高浜駅」 車で15分

診療科目 婦人科、内科、泌尿器科