妊活のための葉酸って、いつから飲んだほうがいいの?

公開日:2020/12/01

妊娠とセットで語られるようになってきた「葉酸」。その存在は知っているものの、正しい用法・用量となると、一抹の不安を覚えます。加えて、葉酸の正体も謎のままです。人工的な化合物ということはないのでしょうか。さまざまに湧く疑問を、「小塙医院」理事の小塙先生に答えていただきました。

小塙 理人

監修医師
小塙 理人(小塙医院 理事)

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千葉大学医学部卒業。東京都立大塚病院にて初期研修、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室入局。大学病院の産婦人科勤務後、独立行政法人国立病院機構埼玉病院、済生会宇都宮病院にて後期研修を受け、2019年から「医療法人小塙医院」の理事に就任。不妊症や人工受精、体外受精の最新情報や手技を常に追求し診療をおこなう。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本女性医学学会、日本性感染症学会の各会員。

時期的な目安となる厚労省通知の中身

時期的な目安となる厚労省通知の中身

編集部編集部

妊娠に関連して、「葉酸」摂取の大切さをよく耳にします。

小塙先生小塙先生

そうですね。厚生労働省は2000年、妊娠の可能性がある女性に対して、葉酸摂取勧奨の通知を出しました。それによると、おおむね「妊娠する1カ月前から妊娠3カ月までの合計4カ月間」が、摂取に適したタイミングです。

編集部編集部

比較的、最近の話ですね? 同通知に裏付けはあるのですか?

小塙先生小塙先生

有名な研究としては1992年にハンガリーでおこなわれたもので、約4700人の女性に妊娠1カ月前から葉酸のサプリメント摂取させたところ、先天性奇形の確率が低下したそうです。胎児の脳や脊髄の元となる「神経管」の成形は、妊娠6週ごろに完成します。神経管がうまく育たないと、先天性異常を生じさせる場合があります。

編集部編集部

摂取期間についての裏付けは?

小塙先生小塙先生

こちらは、2010年から2015年の間の約150万人を対象とした、中国の大規模疫学研究が有名です。「先天異常や早産、流産、死産の発症リスク」を、妊娠3カ月前から葉酸を摂取した群、妊娠前から摂取を開始した群、葉酸非摂取群のそれぞれで比較しました。すると、妊娠3カ月前から葉酸を摂取した群に、最も有意な低下傾向が見られました。

編集部編集部

厚生労働省の推奨より2カ月早いですね?

小塙先生小塙先生

先天異常などのリスク低減には、「葉酸の赤血球中濃度」が問われるのです。世界的な医学誌『The Lancet』によると、有効とされる葉酸濃度に達するには、1日0.4mgの葉酸を摂取し続けても6週間、0.8mgなら4週間必要とのこと。やはり、妊娠前2カ月ないし3カ月前から、摂取を開始しておきたいですね。

編集部編集部

そうなると、「できちゃってから」では遅いのですか?

小塙先生小塙先生

けっして遅いわけではないので、妊娠中の摂取を続けてください。葉酸が不足すると血液中の「ホモシステイン」のレベルが上昇します。このホモシステインは、妊娠高血圧症候群、胎盤早期剥離、自然流産などの発症リスクにつながる可能性が報告されているため、妊娠合併症の予防のために妊娠中も摂取継続を推奨します。

一生のハンディキャップを抱えさせないためにも

一生のハンディキャップを抱えさせないためにも

編集部編集部

なぜ、葉酸摂取の必要性が謳われだしてきたのでしょう?

小塙先生小塙先生

欧米ではもともと、神経管の未熟な「神経管閉鎖障がい」を抱えた胎児が多かったのです。疫学研究が盛んにおこなわれた結果、米国疾病予防管理センター(CDC)は1992年、妊娠可能な全女性に対し、1日0.4mgの葉酸摂取を勧告しました。もっとも、神経管閉鎖障がいの原因は多彩にあり、葉酸摂取不足だけにとどまりません。

編集部編集部

神経管閉鎖障がいをもって生まれると、どうなるんですか?

小塙先生小塙先生

症状はさまざまですね。無脳症といわれる症状の場合、生後数時間で死亡するため、90%以上の症例で人工妊娠中絶手術を受けています。ほか大多数では、水頭症、尿失禁、便失禁、歩行障がい、脊椎が曲がる症状などを発症し、終生にわたるリハビリテーションとフォローアップが必要となるでしょう。これらの異常は、超音波検査などで、出生前から診断が付くこともあります。

編集部編集部

摂取の大切さが身にしみますが、そもそも葉酸ってなんなのでしょう?

小塙先生小塙先生

元々はホウレンソウから抽出された水溶性ビタミンで、このため、日本では「葉酸」という名前が付けられました。ビタミンB9」と呼ばれていたこともあったようです。このビタミンは体内で生合成されないため、食事やサプリメントで摂取する必要があります。

編集部編集部

葉酸は、ビタミンの一種だったんですね。

小塙先生小塙先生

そうなのですが、葉酸は、ホモシステインという悪者が、別のメチオニンというアミノ酸に変わる手助けをしてくれます。この機構の葉酸代謝が滞るとホモシステインが蓄積し、妊娠中に悪影響を及ぼします。

摂取量のコントロールはサプリメントが容易

摂取量のコントロールはサプリメントが容易

編集部編集部

摂取量の目安についても教えてください。

小塙先生小塙先生

厚生労働省の推奨は、18歳以上の女性で1日「0.24mg」妊活中はさらにプラスして「0.64mg」です。他方、米国科学アカデミー医学研究所の見解は、通常で「0.4mg」、受胎前後期は「0.6mg」です。総じて、1日「0.4mgから0.8mg」までの摂取を推奨する文献が多いですね。

編集部編集部

葉酸を多く摂りすぎると危ないのですか?

小塙先生小塙先生

1日「1.0mg」以上摂取した場合、神経性疾患や、将来的な認知発達機能の低下が懸念されています。過不足を考えると、食物経由ではなく、サプリメントで取るほうがコントロールしやすいかもしれないですね。毎日ホウレンソウを2束食べれば、0.8mgの葉酸が摂取できる計算ですが、現実的ではありません。

編集部編集部

ホウレンソウ以外でも葉酸は取れますよね?

小塙先生小塙先生

はい。野菜や果物、ナッツ類、豆、魚介類、卵、乳製品、肉、穀物など、さまざまな食品から摂取することができます。ホウレンソウ以外で葉酸レベルが高い食品としては、アスパラガスや芽キャベツでしょうか。最近では、「葉酸入り食品」も散見されるようになってきました。

編集部編集部

食品で摂取するのが難しければ、市販の葉酸サプリメントでも問題なさそうですか?

小塙先生小塙先生

市販品でも構わないのですが、成分量や吸収効率といった点では、クリニックで処方するサプリメントに分があります。当院で取り扱う「エレビット(バイエル薬品)」には0.8mgの葉酸ほか、葉酸の働きを助けるマルチビタミンが含まれています。普通の食生活で「プラス0.2mg」の摂取は難しいため、上限をオーバーすることもないでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

小塙先生小塙先生

妊婦さんは情報へ敏感なだけに、情報の取捨選択が難しいかもしれません。医学的知識やデータに基づいた観点で「妊活のための体づくり」をしていただくためにも、ぜひ一度、ご相談ください。対面診察でもオンライン相談でも、正しい情報提供が可能です。

編集部まとめ

葉酸の摂取時期について、国の推奨は「妊娠の1カ月以上前から妊娠3カ月までの合計4カ月間」ですが、小塙先生は「妊娠の3カ月前から出産までの合計13カ月」を勧めています。摂取量については、上限値「1.0mg」を超えない限り、シビアにならなくてもよさそうです。「意識して取る」ことを重視した場合、サプリメントが簡便そうですね。

医院情報

小塙医院

小塙医院
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診療科目 婦人科、内科、泌尿器科