痔の治療術式には”地域差”がある!? どんな種類があるの?

公開日:2021/01/16  更新日:2021/07/17

痔の治療方法というと、手術かお薬のどちらかをイメージすると思います。しかし、実際にはどのような手術をしているのか知らない方も多いのではないでしょうか。「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」の白畑先生によると、「痔の手術方法は様々で、医院によって異なる」とのこと。なぜ、痔の手術方法が異なるのか、気になる手術方法の中身について、取材しました。

白畑 敦

監修医師
白畑 敦(しらはた胃腸肛門クリニック横浜 院長)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院や山王台病院、横浜旭中央総合病院などの勤務を経た2017年、横浜市内に「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」を開院。消化器に関することならなんでも相談できる、話しやすいクリニックを心がけている。医学博士。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医、日本大腸肛門病学会専門医ほか資格多数。

痔の手術には「ご当地色」がある

痔の手術には「ご当地色」がある

編集部編集部

「痔」を治すには、手術という方法しかないのでしょうか?

白畑 敦白畑先生

いいえ。お薬で治るケースがほぼ9割を占めています。残りの1割に手術を適応するのですが、痔の種類で分けると、「いぼ痔」が8割「切れ痔」が1割お尻にできものを伴う「痔瘻(じろう)」が1割といった割合です。

編集部編集部

今回は、多数派である「いぼ痔」に絞りたいと思います。手術の中身を教えてください。

白畑 敦白畑先生

肝心の手術方法なのですが、じつは痔の手術を受ける地域によって、その進め方が違っているのです。各医師の学んだ大学の手法が大きく反映され、標準化や統一化は、それほど進んでいません。おおまかですが、北海道式、東京式、横浜式、大阪式に分かれます。

編集部編集部

意外です。手術の質や結果に違いがあったりするのでしょうか?

白畑 敦白畑先生

「治るか治らないか」で言えば、顕著な違いはありません。手術の手法が異なるだけです。肛門科を標ぼうする専門医は少ないので、それだけに、地域性が反映されやすいようです。例えるなら「ご当地グルメ」のようなもので、全国への標準化が難しいのです。そして、先生がそれぞれの治療に誇りを持っており、自分の地域の手術の仕方が、それぞれ「1番」だと考えています。

編集部編集部

ほかの方法があるにも関わらず、多くの患者は「1つの方法しかない」と思っているのでは?

白畑 敦白畑先生

その通りです。なので、「どのような手術の方法があるのか」を知ることは、とても大切なことでしょう。また、当院のように、それぞれの術式の中から「もっともふさわしい方法を組み合わせて施術する」医療機関も、ごく一部にあります。患者さんにも理論武装が求められますよね。

師匠から弟子に受け継がれた、数々の得意技

師匠から弟子に受け継がれた、数々の得意技

編集部編集部

業界の事情がわかったところで、いよいよ、その中身について教えてください。

白畑 敦白畑先生

いぼ痔は、肛門の外で発症する「外痔核(がいじかく)」と、肛門の内側に生ずる「内痔核(ないじかく)」に分かれます。このうち「外痔核」は、いずれの地域でも、メスによる切除が主流となるでしょう。体の外側ですから、手術跡の予後管理が容易におこなえます。

編集部編集部

手術の差異が顕著なのは、肛門の内側にできた内痔核だと?

白畑 敦白畑先生

そういうことです。現在のスタンダード治療は、メスを入れての切除する結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)という方法です。一方、ジオン注射という特殊なお薬を内痔核に注射するだけの手術もあります。お薬の成分で痔を“干からびさせる”ようなイメージでしょうか。

編集部編集部

続けて、内痔核手術の種類を棚卸ししてください。

白畑 敦白畑先生

分離結紮術(ぶんりけっさつじゅつ)という関西エリアで最も行われている術式があります。内痔核の根本を糸で縛り、血流を止めて内痔核を取り除く治療法になります。糸のほかに、輪ゴムで結紮する術式もあります。また、「PPH」という術式は、脱肛(だっこう)のように、直腸の粘膜がはみ出してくる症例に有効な方法です。簡単に言うと、専用の機器で、大腸そのものを一定幅だけカットしてつなげます。すると、はみ出していた直腸粘膜が内部につり上げられますので、いぼ痔は出なくなります。

編集部編集部

様々な手術方法がありますが、どのように選択しているのですか?

白畑 敦白畑先生

大きさや形、いぼ痔の個数で術式を判断します。いぼ痔は複数箇所に出ることが多く、時計に例えるなら、概ね「3時、7時、11時」の3方向によくできます。また、そのそれぞれが内痔核だったり、外痔核だったり、双方だったりします。ですから、個人的には、複数の治療方法を組み合わせることが重要だと考えています。

編集部編集部

治療の痛みについても教えてください。

白畑 敦白畑先生

治療法というより、どの種類の痔であるかによって変わってきます。内痔核ができる領域は痛みの神経が通っていないので、どんな方法でも痛みがありません。一方、外痔核の場合は、痛みの神経が通っているため、痛みを感じます。

問われるのは、患者の負担と再発防止のバランス

問われるのは、患者の負担と再発防止のバランス

編集部編集部

各術式をそれなりに理解しましたが、患者が手術方法を選べないですよね? 適切かどうかもわからないのでは?

白畑 敦白畑先生

まずは、きちんとした説明のできる医師を選ぶことです。その際、この記事などでおおまかにでも手術内容を知っておけば、納得の度合いが違ってくるのではないでしょうか。また、患者さんからも質問ができますよね。「注射だけで治ると聞いたのに、どうして切開するのですか」と。手術を受けるのは、その回答に納得ができてからです。

編集部編集部

名医であればあるほど、「適切な組み合わせ」を検討するはずだと?

白畑 敦白畑先生

わからないですよ。「分離結紮術」の名医で、なんでも「分離結紮術」で済ませようとするドクターもいるはずです。冒頭でご説明した“地域性・閉鎖性”が関わってきます。おそらくですが、その地域で「名門」とうたわれる痔の専門医院ほど、1つの手術方法に特化しているのではないでしょうか。

編集部編集部

気になるのは再発の可能性です。手術方法によって違ってくるのでしょうか?

白畑 敦白畑先生

違ってきますが、これも、考え方1つだと思います。再発防止が主眼なら、入院させて、患部を大きく切り取っておけばいい。他方、患者さんの負担軽減が主眼なら、簡単な注射による日帰り手術をファーストチョイスにするでしょう。再発したらしたで、また注射を打てばいい。根治性と低侵襲性は「てんびん」のようなもので、両立が難しいのです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

白畑 敦白畑先生

なにを最善とするかは、患者さんの考え方にもよります。「注射1本で済むなら、再発しても構わない」なのか、「どうせ手術するなら、徹底的に」なのか。自分が考える最善のゴールをしっかり医師に伝えて、オーダーメイドの治療をしてくれる医師を探してみてはいかがでしょうか

編集部まとめ

痔の治療に地域性があるとは驚きました。しかし、我々の慣れ親しんでいる食卓にも、他地域の人からしたら「驚き」の食材が並んでいるかもしれません。「井の中の蛙、大海を知らず」。必要なのは、外側から見た視点でしょう。少なくとも、痔の治療方法が1通りに限らないことだけは、知っておきたいものです。

痔に関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

医院情報

しらはた胃腸肛門クリニック横浜

しらはた胃腸肛門クリニック横浜
所在地 〒226-0027 神奈川県横浜市緑区長津田5丁目6−32
アクセス 東急田園都市線・JR横浜線「長津田駅」南口より徒歩3分
診療科目 内視鏡内科・肛門外科・胃腸内科・漢方内科