脳梗塞は夏に多くなる!? 原因と対策は?

脳の血管が突然詰まってしまう脳梗塞。突然発症する病気とイメージする方も多いでしょう。しかし、仙川脳神経外科クリニック院長の山口竜一先生は、脳梗塞は夏に多くなるといいます。なぜ夏に多くなるのか冬は気にしないで大丈夫なのか、脳梗塞の原因や生活の注意点について、解説いただきました。

監修医師
山口 竜一(仙川脳神経外科クリニック 院長)

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平成11年杏林大学医学部卒業。同大学医学部脳神経外科学教室入局。公立阿伎留医療センター、都立墨東病院、医療法人社団恵周会白河病院で勤務し研鑽を重ねる。平成18年杏林大学医学部脳神経外科学教室助教、平成20年杏林大学医学部脳神経外科教室医局長を経て、平成28年仙川脳神経外科クリニックを開院。MRIやCTなどの機器を導入した高いレベルの脳神経外科検査と診断を提供している。

編集部編集部

脳梗塞は夏に多いというのは本当ですか?

山口先生

2倍増える、というような圧倒的に増えることはないのですが、夏は脱水になりやすいこともあり、夏のほうが多い傾向はあります。体内の水分が少なくなると、血液がドロドロになりますからね。

編集部編集部

そもそも脳梗塞とはどんな病気なのでしょうか?

山口先生

脳梗塞とは一言でいえば、脳の血管が詰まってしまう病気です。血流が途絶え、脳の神経細胞が死んでしまい、後遺症が残るケースが多いのが特徴です。

編集部編集部

脳梗塞はなぜ起きるのでしょう?

山口先生

原因は二つあります。一つは動脈硬化です。動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどがたまり、血管が狭くなって血液が流れにくくなってしまう状態です。動脈硬化になると、血圧のちょっとした変化などによって、血の塊ができて血管をふさいでしまいます。

編集部編集部

もう一つの原因について教えてください。

山口先生

もう一つは心臓や頸動脈から血栓が流れてきて、脳の血管に詰まる場合です。よくある病気の一つが心房細動です。心房細動があると心臓に血栓ができやすい状態になり、心臓の血栓が血液の流れに乗って脳の血管に運ばれてきて、血流をふさいでしまうのです。この二つが脳梗塞を引き起こします。

編集部編集部

脱水が原因の夏の脳梗塞は前者ということになりますね。

山口先生

そうですね。動脈硬化の人は血液がドロドロしてくると流れが悪くなって詰まりやすくなりますから。夏は特に水分補給に気をつけなければいけません。

編集部編集部

では、冬に気をつけることはあるのですか?

山口先生

冬も気づかないうちに脱水になっていることがあります。冬は意識して水分をとることがおろそかになりがちなため、脱水になることがあります。ただ、冬になると脳梗塞より脳出血に注意が必要です。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などを合わせて「脳卒中」といいます。これらは突然、血管が詰まったり切れたりする病気ですが、脳卒中全体では冬の方が多いのです。なかでも脳出血は冬に発症するケースが多いので注意しましょう。

編集部編集部

冬に脳出血が多い原因はなんでしょう?

山口先生

一つは、冬のほうが血圧が上がりやすいこと。これは気温が低くなると血管が収縮するためです。もう一つは、ヒートショックという、急激な温度変化により、血圧が上下する現象です。お風呂場で倒れた、外に出た瞬間に手足の麻痺が出たなどということを聞いたことがあると思います。これがヒートショック。急激な血圧の変動は、脳出血を引き起こす原因になります。

編集部編集部

この場合も動脈硬化がベースにあるのですか?

山口先生

その通り。動脈硬化は血管の老化ですが、外からは見えないため放置されがちです。でも突然、脳卒中を引き起こすことがありますから、油断できません。

夏場は1日に1~2リットル程度の水を補給するようにする

編集部編集部

脳梗塞にならないために日ごろから注意することはありますか?

山口先生

動脈硬化にならないようにするためには、まず生活習慣病といわれる高血圧や脂質異常症、糖尿病などにならないようにすることが大事です。喫煙や肥満も危険因子になりますよ。

編集部編集部

生活習慣病の予防といえば、食事と運動ですね。

山口先生

その通り。バランスのよい食生活と適度な運動が大事です。したがって、脳梗塞だけを予防するために気を付けることはあまりないかもしれません。あるとしたら、先ほどもいいましたが、脱水にならないように水分を摂取するということくらいでしょう。脳梗塞を起こさないためには小まめな水分摂取が一番大事です。

編集部編集部

どのくらい水を飲むとか、目安は何かありますか?

山口先生

1回の食事量には大体500ccぐらいの水分が含まれているといわれています。ご飯、みそ汁、おかず、お茶を飲んで500ccぐらい。それ以外に夏場であれば、汗をかく量にもよるのですが、1日に1リットルから2リットルぐらいは飲んでもいいでしょう。不要な水分は排泄されますから、この程度なら飲みすぎということにはなりません。

一時的な手足のしびれや運動障害に注意

編集部編集部

脳梗塞を発症すると、どんな症状が出ますか?

山口先生

急に手足の麻痺が出たり、モノが二重に見えたりします。血液が詰まった箇所が特殊な場所だと、急に物忘れがひどくなったとか、言動がおかしいとか、認知症のような症状が出る人もいます。

編集部編集部

突然症状が出てくるものなのですか?

山口先生

大半は突然発症しますね。ただし、前兆症状が表れる場合もあります。一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)といって、手足のしびれや運動障害などの症状が出て、1時間もしないうちに消えてしまいます。すぐに回復するので、放置してしまう人も多いのですが、一過性脳虚血発作を起こすとその後48時間以内に大きな発作を起こすことが多いといわれています。

編集部編集部

症状が一時的だったとしても、安心できないですね。

山口先生

脳卒中などにならないようにするには、とにかく生活習慣病に気を付けることです。脳出血も脳梗塞も、高血圧を放っておくのが一番悪いといわれています。

編集部編集部

血圧が高くなりすぎないように管理するのが大切なのですね。

山口先生

そうですね。高血圧をはじめ、多くの病気は「日本ではこういう場合はこうした治療をしよう」というガイドラインが出ていて、日本全国どの病院でも同じ治療ができるようになっています。もし高血圧だとわかれば、早めにきちんと管理していただきたいですね。それが自分の命を守ることにつながります。

編集部まとめ

高血圧、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病が動脈硬化を招き、動脈硬化が脳梗塞をはじめとする脳卒中を引き起こす。この流れを知ると、まず大切なのは生活習慣病にならないようにすることが一番だとわかりました。2017年に発表された厚生労働省からのデータでは死亡原因の第3位は”脳血管疾患”と出ています。山口先生がいうように、重篤な後遺症が出る点でも、脳卒中にならないために、まずは生活習慣の見直しから始めましょう。

医院情報

仙川脳神経外科クリニック

仙川脳神経外科クリニック
所在地 〒182-0002 東京都調布市仙川町3-9-15 モンヴィラージュ仙川1階
アクセス 京王線「仙川」駅 徒歩2分
診療科目 脳神経外科・内科