「心の診断」はどうやって行うの? 精神科医に聞いてみた

外傷や内臓疾患の多くは、その異常が何らかの形で見てとれる。例え体の内部であっても、X線撮影やエコー検査、内視鏡などを用いた検査・診断が可能だ。しかし、いわゆる「心の病」は、どうやって“診る”のだろう。そんな純粋な疑問を、精神科・心療内科を標ぼうする、うらわメンタルクリニックの野賀正史医師に伺った。

野賀 正史

監修医師
野賀 正史(うらわメンタルクリニック 院長)

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東京慈恵会医科大学卒業、同大学大学院博士課程修了。東京慈恵会医科大学精神医学講座助手、一般精神科医院勤務をへた2008年、さいたま市南区にうらわメンタルクリニック開院。日々の診察にあたっては、気軽に受診できる環境を整備しつつ、不安や緊張の原因をいかに取り除くかという点に留意している。医学博士号(甲種)、日本精神神経学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

「心の診断」は人にしかできない

編集部編集部

先生の医院では、「心の問題」をどのように診断しているのですか?

野賀 正史野賀先生

基本的には、「ICD10」という、1990年の第43回世界保健総会で採択された疾病分類に添って診断していきます。「このような傾向が見られたら、この病気ではないか」というガイドラインがあるのです。ただし、この分類だけで判断するのは危険といえるでしょう。同じ行動や傾向に対し、解釈の仕方が異なる場合もあるからです。

編集部編集部

一定の基準はあるけど、最終的には医師が判断するわけですね

野賀 正史野賀先生

そういうことです。実際の聞き取りは、「主訴」「生活歴」「家族歴」の3点から始めていきます。主訴とは「何に対して悩んでいるのか」。生活歴は「仕事も含めた普段の様子」。家族歴は「同じような症状の方が親族にいるかどうか」を伺います。

編集部編集部

その後は、どのような項目をヒアリングするのですか?

野賀 正史野賀先生

次は「病前性格」ですね。几帳面さや責任感の強さなど、そのこと自体は「病気」といえない性格のことです。必要な場合は「病歴」も伺います。脳梗塞などを患ったことがある方は後遺症もあり得ますので。最後に、今の「心の症状」が過去と比べて重くなっているか、軽くなっているかを伺います。

編集部編集部

患者さんと、たくさんコミュニケーションをとるのですね。少し話して薬を処方されるイメージだったのでびっくりしました! 患者さんの話を聞いていくなかで、理解を深めていかれるのでしょうか?

野賀 正史野賀先生

そうですね。患者さんのお話をお伺いしていると、同じ内容のストレスに対しても、鈍感な方と敏感な方がいらっしゃるな、ということに気付きます。また、原因が自分で思いつけない方には、医師のほうから質問を水向けをして、患者さん自身に気付いてもらう必要もあります。まさにオーダーメイドの対応が求められますので、画一的なアプローチでは難しいですね。

重要なのは、決めつけた診断をしないこと

重要なのは、決めつけた診断をしないこと

編集部編集部

医師の先生とはいえ、人が行う判断にミスはないのですか?

野賀 正史野賀先生

人の判断ですから「絶対」はありません。ですから、他院での診断と異なる結果になることもあるでしょう。そのような初診で確定的な判断ができない場合に用いるのが、「診断的治療」と呼ばれる方法です。お薬への反応などを見ながら、正解へたどり着いていく進め方になります。

編集部編集部

最初に決めてしまわないで、徐々に絞り込んでいくのですね。それ以外に、誤診をしないよう心がけていることはありますか?

野賀 正史野賀先生

初診時のカルテをできるだけ正確に付けておくことです。投薬を開始すると、患者さんには変化が起きます。この、薬による変化が長期間にわたると、そもそもの立ち位置を見失いがちなんですね。ですから、いつでも原点へ戻れるよう、初診の状態を細かくメモしておきます。

編集部編集部

一般的には、投薬による治療がメインなのでしょうか?

野賀 正史野賀先生

投薬療法のほか、認知行動療法などがあります。認知行動療法を行うには臨床心理士と患者さんとの相性が、主治医と患者さんとの関係以上に重要になるため、臨床心理士が立ち上げたクリニックを選択された方が適切かと思われます。投薬療法で注意したいのは、原因にアプローチするお薬と、目の前の症状を抑えるお薬があることです。例えばうつ病で幻覚が見える場合、うつ病の薬よりも、幻覚を防ぐための抗精神病薬を優先する場合があります。その辺も、患者さんによってまちまちですね。やはり、人の判断が入ります。

編集部編集部

認知行動療法についてもお願いします

野賀 正史野賀先生

認知行動療法とは、「患者さんの気持ち」と「現実」との折り合いを上手に付けていく発想トレーニングの手法です。否定したり思い込みだと決めつけたりせず、気持ちが楽になるような面接を繰り返していきます。

受診する科目で迷ったら、まず心療内科の扉をたたこう

受診する科目で迷ったら、まず心療内科の扉をたたこう

編集部編集部

ちなみに、「心の問題」で悩んだ時は、精神科と心療内科のどちらに行けばいいのでしょうか?

野賀 正史野賀先生

受診先がわからなかったら、心療内科を受診されてはいかがでしょうか。「精神科」という名称に、ある種のハードルを感じる方もいらっしゃると思います。もちろん、必要に応じて、心療内科から精神科や神経科をご紹介することも可能です。

編集部まとめ

精神科や心療内科では、専門のガイドラインが用いられているのですね。そして、「心の問題」は目に見えにくいため、ヒアリングを重視しているようです。これほど、様々な質問を通して個別に判断しているとは思いませんでした。悩んだ場合はできるだけ早期に専門の医師に相談して、納得できる治療法を選択してください。

医院情報

うらわメンタルクリニック

うらわメンタルクリニック
所在地 〒336-0017 埼玉県さいたま市南区南浦和2-38-7富士見ビル2F
アクセス JR「南浦和駅」東口より徒歩1分
診療科目 心療内科、メンタルヘルス科、精神科