矯正歯科医に聞く! 「先生が矯正するとしたら、どの器具をえらびますか?」 2020/07/15

歯の矯正治療で用いる器具には、さまざまな種類がある。一般的な歯の表側につけるワイヤータイプ、歯の裏側に付けるタイプ、マウスピースタイプなどだ。その選択には患者側の好みが大きく反映されるものの、歯科医師の観点で選ぶとしたら、どれになるのだろう。そんな疑問を、「ミライズ矯正歯科南青山」の院長である富田先生に投げかけてみた。

監修医師
富田 大介(ミライズ矯正南青山 院長)

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昭和大学歯学部卒業、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野専攻課程修了。東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正歯科外来医長補佐、横浜市立大学附属市民総合医療センター歯科・口腔外科・矯正歯科常勤特別職診療医などに就任後の2018年、東京都港区に「ミライズ矯正歯科南青山」開院。以来、見た目だけの安易な治療ではなく、「咬合機能の向上」に最重点を置いた矯正治療を提供している。日本矯正歯科学会認定医。日本舌側矯正歯科学会、日本口蓋裂学会、日本顎変形症学会、日本顎関節症学会、日本口腔病学会、日本予防医学会ほか各学会所属

編集部編集部

先生にとって、ベストと思える矯正器具はどれでしょう?

富田先生

もし自分の歯を矯正するなら、表側のワイヤー式を選択しますね。その歴史は100年以上、さまざまな症例への臨床的・学術的な積み重ねがもっともなされている治療方法です。歯科矯正学自体が、表側のワイヤー式を前提にした学術体系だともいえるでしょう。手探りや勘によらない、医学的根拠を元にした治療が受けられます。

編集部編集部

一部の歯科医師から「ワイヤー式だと、奥歯を奥へ動かせない」という声を聞きます。

富田先生

そんなことはないですよ。以前はヘッドギアなどの固定源を用いて臼歯を後方へ動かしていましたし、日進月歩で進んでいる現在の矯正治療においては、方法としてはたくさんあります。歯槽骨や口蓋骨などに歯科矯正用アンカースクリューという固定装置を打ったり、様々な器具を応用したりすることで、以前は不可能とされていた歯の動きが可能になってきています。

編集部編集部

どのような症例でも、表側のワイヤー矯正で対応できますか?

富田先生

基本的には可能ですが、もちろん表側のワイヤー矯正にも不得意な症例はあります。例えば過蓋咬合といって、かみ合わせが深く、上の前歯と下の歯の重なりが強い方などですね。こうした方は、下の歯の唇側面などに装置を付けられる面積が少なく、装置自体の装着が難しかったり、付けれるようになるまでに時間がかかったり、あえて噛めない様にする患者さんに負担がかかるような装置が必要なこともあります。それぞれの矯正装置の特徴と患者さん個人のお口の状態をしっかりと把握して、装置を選択する必要があります。

編集部編集部

それぞれの装置によって得意・不得意の症例があるわけですね?

富田先生

そういうことです。ただし、大人の方で注意が必要なのは、虫歯や成人の8割以上が罹患すると言われる歯周病です。虫歯や歯周病は矯正治療にとって要となる歯槽骨や歯茎などの歯周組織を崩壊させる原因になるため、どの装置を選択するにせよ、矯正治療を始める前に虫歯や歯周病を治し口腔環境を改善する必要があります。

マウスピース型矯正装置の落とし穴について

編集部編集部

先生は、マウスピースタイプの矯正装置を使わないのでしょうか?

富田先生

そんなことはありませんよ。俳優業などの芸能関係の方や営業職のように人前に出ることの多い職業など装置の見た目を気になさる方、食事や歯磨きの際に取り外しができるため虫歯や歯肉炎、口内炎ができやすい方や金属アレルギーをお持ちの方など、患者さんの環境や事情により使用しています。軽微な歯列不正や先述の過蓋咬合などを治療する場合に効果的なこともありますね。矯正治療の一つのツールとして用いることもあります。また、技術の進歩により、以前では治せないような症例も治せるようになってきて、適応ケースも増えてきています。

※マウスピース型矯正装置は完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

編集部編集部

しかし、第一選択肢としては、やはり表側のワイヤー式ですか?

富田先生

はい。マウスピース型矯正装置を否定するわけではないものの、症例やエビデンスの積み重ねが、ワイヤー式に比べるとまだまだ少ないんですよね。「理屈からすると、たぶん、うまくいくだろう」という予測の元におこない、都度方向修正しながら治療を進める場合もあるでしょう。しかしながら、今後は多くのエビデンスデータが出てくると考えられますので、マウスピース型矯正装置を用いた治療も更に進歩していくことでしょう。

編集部編集部

とはいえ、マウスピースタイプを希望する患者は多そうです。

富田先生

取り外しのできるマウスピース型矯正装置は、歯科医師の指導を100%守って、初めて効果がある方法なんです。手を抜いた分だけゴールは遠ざかります。「付けないと治らない」というリスクをどこまで理解していただけるか。説明が尽くせなければ、治療へは進みません。また、噛み合わせに問題が出た場合や、予測通りにはが動かなかった場合に代替治療方法で対応できる経験と知識を持ち合わせた矯正歯科医師や歯科医院を選ぶことが重要です。マウスピース型矯正装置専門の医院は対応が不十分になりがちなようです。

編集部編集部

やはり効果の意味では、自分で外せないワイヤー式に分がありそうですね?

富田先生

自己管理の苦手な方は、ワイヤー式のほうが“楽”だと思います。取り外しなどは出来ない分、24時間365日矯正力をかけること可能なため、歯科医師もコントロールしやすく、歯磨きなどの自己管理部分以外は任せっきりにできますから。もし見た目が気になるようなら、歯に近い色や目立たない素材のワイヤーや装置などもあります。

器具に限らず、医院選びも重要な観点

編集部編集部

器具の誤選択が起きるのは、どのような場合でしょうか?

富田先生

例えば、患者さんから「この方法じゃないと嫌だ」と言われた場合です。歯科医師からしたら、100点の効果を目指せませんよね。今は患者さん優位の時代、とはいえ安易に迎合して最初から60点を目指すと、かえって不満足に終わるでしょう。ただ単純に見た目を治すのではなく、噛み合わせや機能を重視した治療を提供する事を第一とした、先を見据える事ができる判断能力が高いドクターに出会える事を祈願しております。

編集部編集部

ズバっときましたね、必ずしも患者のせいではないと?

富田先生

患者さんに気をつけていただきたいのは、誤選択が起きないような医院を選ぶこと。一つの目安としては、矯正治療に関して一定水準以上の知識と経験を有している日本矯正歯科学会の認定医以上の歯科医師がいる医院を受診していただきたいです。矯正治療は何度も通う必要があるからといって、「家から近い」という理由や「値段」だけで決めるのが、もっとも危ない選び方といえるのではないでしょうか。

編集部編集部

医院選びを誤ると、どのようなことが起こりそうですか?

富田先生

なんとなく並んで入るけど、上手く噛めない、前よりも口元が出てしまい口が閉じにくくなったなど機能的な弊害が出てしまうことや、歯根や歯肉などに悪影響が出てしまった、再治療が必要となり、時間と費用を浪費するようなケースでしょうか。矯正治療には職人的な気質があり、知識と技術はもちろん、センスや性格も問われます。私たちが目指す精度は0.1mmから0.5mm、0.5度といったところ。普段、道を歩いていても、ミリ単位のズレが気になりますしね。ポスターの傾きとか、舗装のつなぎ目とか。

編集部編集部

医院選びのポイントは?

富田先生

自分と似た「過去の治療例」を見せてもらうことです。加えて、患者さん個人に合わせたシミュレーションを、治療選択肢ごとに見せてもらえるといいでしょう。当院では、口腔内スキャナーで取り込んだ患者さんのお口の中のデータを用いて、その場で矯正前後のシミュレーションをお見せしています。また、CTや3Dプリンター、3Dソフトなどを駆使して研究も進めています。患者さんのためにできる事、やれることがあったら、やりきりたいですからね。

いずれにせよ、患者さんにわかりやすく、とにかく良く説明をしてくれて、コミニュケーションがしっかりとれる歯科医院や歯科医師を選ぶことが第一条件だと思います。その上で、長い付き合いになる治療でもあるので、ご自身のフィーリングに合うことも重要です。

編集部まとめ

歯科矯正治療に何を求めるのか。まず、そこから考え直してみましょう。「歯列の乱れを徹底して治したい」のであれば、エビデンス的にはやはりワイヤー式に分がありそうです。一方、「それでも、目立たないのがいい」とするなら、日進月歩で様々な矯正装置や治療方法も開発されているため、他にも選択肢はあるでしょう。ただし、矯正器具や歯科医院の選び方によっては、理想とするゴールから離れていってしまうことも。その点を経験と知識を持ち合わせた矯正歯科医師と十分すりあわせてから、治療に進んでください。

医院情報

ミライズ矯正歯科南青山

ミライズ矯正歯科南青山
所在地 〒107-0062 東京都港区南青山6丁目13-5 ポルトポヌール1階
アクセス 表参道駅b1出口より徒歩7分
・渋谷駅51番乗り場より都01系、RH01系バス1駅目「青山学院中等部前」より徒歩3分
・バス停「南青山6丁目」停留所より徒歩1分
診療科目 一般歯科・矯正歯科・ホワイトニング